祓い屋としての力がない私は、愛しの妹と旦那様を守るためにゴリラ級の筋力を手に入れることにしました

桜桃-サクランボ-

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あやかし家族と祓い屋長女

第12話 桜景色

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 私は自分がジャージ姿だったのを忘れて羅刹様について行こうとしていると、百々目鬼さんが「御着替えを!!」と、私の手を引っ張り部屋の中へ。

 羅刹様を待たせるわけにもいかないため、すぐに黒い着物へと着替えて合流。
 今は、羅刹様と手を繋いで桜の下を歩いています。

「すごく綺麗」

「あぁ。今しか見られんからな、目に焼き付けておくのだぞ」

 ケラケラと笑いながら羅刹様が言った。
 そんな羅刹様を私は目に焼き付けたい。けど、今は桜だ。

 桜の季節は、ものすごく短い。
 満開は一瞬、すぐに散ってしまう。
 今のうちに羅刹様の自慢の桜を目に焼き付ける。

 焼き付けたい、けど、やっぱり桜に包まれている羅刹様も綺麗で目を離したくない。

「…………」

 まだ、昨日出会ったばかりの方、しかも鬼。
 それなのに、なぜこんなにも私は安心しているのだろう。

 昼の羅刹様だからなのか。
 でも、夜の羅刹様も、怖いとは感じない。

 それは、私があやかしに襲われていたのを助けられたからなのか。
 見た目が好みだからなのか。

 まだ、わからないことが多いけれど、羅刹様が素敵な人なのは体が、脳が感じている。

「さっき視線を感じたのだが、どうした?」

「いえ。羅刹様は後ろから見ても前から見ても。――――全方向から見ても美しくかっこいい方だと再認識しておりましただけですよ」

 ニコッと笑みを浮かべながら伝えると、羅刹様が照れたように顔を赤くした。
 色白だからすぐにわかる。

「まったく。お主には本当に調子を狂わされる」

「事実を伝えているだけですよ!」

「わかったわかった」

 再度歩き始め、桜を楽しむ。
 けれど、すぐに羅刹様が足を止めてしまった。

「わっ、どうしましたか?」

「ここが、我のおすすめ場所だ」

 ここって……わぁ!!

「すごい、桜に包まれてる!!」

 羅刹様に気を取られているうちに、桜に囲まれた場所にたどり着いていた。

 周りは薄紅色の景色。
 風で桜の花びらが舞い上がり、隙間には小鳥が枝に止まり自然の声を奏でていた。

 手を伸ばせば届く桜の花。
 触れてみると、やわらかい。少しでも力を込めるとちぎれてしまいそう。

「すごく綺麗ですね」

「あぁ、ここは我にとってお気に入りの場所だ。桜が散っても、緑が生い茂り心を落ち着かせてくれる」

「そうなんですね」

 確かに、ここはすごく落ち着く場所だ。
 何も考えなくてもいい、素敵な場所。

 景色を楽しんでいると、隣から視線を感じた。
 振り向くと、羅刹様の左右非対称の瞳と目が合った。

「あっ」

「え?」

 すぐに目を逸らされてしまった。
 な、何だろう。なにか、言いたそうにしていたような気が……。

「お、お主は、その」

「はい」

 なにか、言いにくそうにしている羅刹様。
 困っている姿も可愛くてずっと見ていたいけれど、早く聞きたい気持ちもある。

「何度も聞いて悪いが、鬼の我と婚約を交わして、本当に良いのか? 後悔は、しないか?」

 不安そうに瞳が揺れている。
 本当に、不安で、心配しているのが伝わってくる。

 本当に、優しい方だな。

「後悔は絶対にしないですよ。私は、絶対に。逆に羅刹様は後悔しませんか?」

「我が後悔、か?」

「はい。私と羅刹様は出来ることも考え方も、生きる長さも、なにもかもが違います。私の方ができることは圧倒的に少ない。迷惑かけるのは少なからず私かと思います。なので、羅刹様が後悔しないかの方が、私は心配です」

 伝えると、羅刹様は数回瞬きをし、息を吐いた。

「確かに、我とお主とでは生き方も、長さも。なにもかもが違うな。考え方も異なり、お互いに気を遣うことになるだろう」

 やはり、ここまでは考えていなかったのだろうか。
 今、私が言ったことで羅刹様は考え方を改めてしまったのだろうか。

 次の言葉を待っていると、羅刹様が急に笑い出した。

「だが、それはそれで面白いだろう。大変なこともたくさんあるだろうが、新しい発見もある。我は、後悔より発見を楽しむだろう」

「つまり、後悔はしないと。そう思ってよろしいですか?」

「かまわん」

「それなら、婚約しても問題はありませんね。お互い、後悔しないと感じているのだから」

 ふふっと、つい笑ってしまう。
 羅刹様も、安心したのか「そうか」と、笑った。

 あぁ、桜を背景にしている羅刹様が本当に美しい。
 ずっと見ていた。

「おっと、もうそろそろ戻った方がいいな。筋トレとやらがまだ終わっていないんじゃないか?」

「え? 気付いておられたのですか?」

「なんとなくだ」

 手を差し出され、素直に大きな手に添える。
 そのまま歩き出し、桜景色から出て、屋敷へと戻った。
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