祓い屋としての力がない私は、愛しの妹と旦那様を守るためにゴリラ級の筋力を手に入れることにしました

桜桃-サクランボ-

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あやかし家族と祓い屋長女

第16話 バレッタ

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 鰻は絶品で、ぺろりと食べてしまった。

 鰻には小骨があるイメージだったけど、全然そんなことなくて。
 たれも濃くもなく、薄くもなく。すごく美味しかった。

 今のところ、鰻が私の中で一番好きな食べ物になりました。
 でも、高いからいつも食べられるものではない。

 もっと、安くて美味しいものを見つけたいなぁ。

「美味かったな」

「はい。お腹いっぱいです!」

 今は、定食屋を出てショッピングモールを羅刹様と手を繋いで歩いている。

「それにしても、本当に人が多いですね」

「そうだな。体調は大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。ご心配くださりありがとうございます」

「それならよかった」

 ――あれ?
 なんか、羅刹様の顔色、悪くない?

「あの」

「おっ、水喜よ。あのお店、女性がたくさんいるが、人気のお店なのではないか?」

「へ?」

 羅刹様が指さした先には、確かに女性がたくさん集まる、かわいいお店があった。
 たぶん、雑貨屋さんかな。

「行ってみないか?」

「はい!!」

 雑貨屋さんとか入ったことないから、素直に気になる。
 どんなものがあるのかなぁ。

 中に入ってみると、外から見たよりお店は大きい。
 通路幅がしっかりととれているから、じっくり見られる。

 それでも、人が多い。
 本当に、人気なんだなぁ。有名なお店なのかな?

 私、そこらへんは疎いから本当に分からない。

『今回の新作も可愛いよね!!』

『本当!! さすが、!!』

 香織、様??
 このお店を作った人かな?

「水喜よ。我が中に入ると邪魔になるから、外で待っておるな」

「あっ、わかりました」

 なんか、羅刹様、疲れてない?
 大丈夫かなぁ、顔色が悪い気が……。

「わぁ。これ、かわいい」

 偶然目に入ったのは、ピンクゴールド色の桜柄のバレッタ。

 これが似合う人は、本当に愛らしい人なんだろうなぁ。
 例えば、私の実の妹、水奈みたいな可愛くて美しい凛々しい女性とか。

「かわいいけど、二千円かぁ」

 さすがに高いなぁ。
 まぁ、今の私は無一文ですから、百円でも高く感じますけど。

 棚に戻そうとしたら、後ろからつつかれた。
 振り向くと、羅刹様?

「あ、あれ? 店の外で待っているんじゃ……」

「そのつもりだったのだが、なぜか女に声をかけられることが多くてな」

「え? そうなんですか?」

「ああ。それに、なにか手に持っているのが見えたからな。それが気に入ったのか?」

 羅刹様が、棚に戻そうとした桜のバレッタを見る。

「はい。これを可愛い人がつけたらどれだけ可愛く、それでいて美しく仕上がるのか。頭の中で妄想していました」

「可愛い人、か」

 あ、あれ?
 羅刹様が私からバレッタを取った。

 ――――はっ、そうか。
 隣にいたではありませんか。
 可愛いバレッタが似合う人が! いや、あやかしか。

 でも、流石に女性ものだしなぁ。
 男性用で似たようなデザインのものはないだろうか。

 流石にピンクゴールドは女性すぎる――

「――――え?」

「ふむ、確かに似合うな」

 バレッタを、私に付けた?
 え、どういうこと? 確かに似合うって……??

「ふむ。これは買おうか」

「え、ま、待ってください? なんで私に付けたのですか?」

「ん? お主が言ったのだろう。可愛い奴に付ければどれだけ美しく仕上がるのかと」

「言いましたが……」

 それで、なんで私?
 私はそこまで可愛くもなければ、美しくもないですよ?

 まぁ、中の上くらいかなとは思っていますが……。

「お主も可愛らしい顔をしているだろう。だから、試しただけだ」

「か、かわっ!?」

 そ、そんな真面目な顔と声でそんなことを言わないで!?
 流石に、その、恥ずかしい。

 なんか、小説の推しに可愛いと言われている感じ。
 幸せだけど、死にそう。

「他に何か気になる物はあるか?」

「い、いえ。大丈夫ですよ」

「そうか」

 あ、そのままレジへと向かってしまった。
 本当に、買ってくださるらしい。

 う、嬉しいけれど、これって彼氏からのプレゼントみたいな感じだよね。
 いや、婚約者からの、か。

 レ、レジから戻ってきた時、私はどんな顔をすればいいんだろう。
 笑顔? 笑顔だよね、笑顔でいいんだよね??

 でも、どんな笑顔?
 私、普段どんな笑顔を浮かべていたの!?

「買ってきたぞ」

「ふぁい!!!」

「? ふぁい?」

 袋を持って戻ってきた羅刹様が、私の反応に首を傾げている。
 私が変な声を出したからですよね、す、すいません。

「ほれ、今付けてもいいように値札とかは全て取ったぞ」

「あ、ありがとうございます」

「…………それは、どういった顔なんだ?」

 わからない、自分で自分の顔は見えないから。
 でも、多分中途半端に笑うという情けない顔を浮かべているだろう。

 気を引き締めないと鼻血が出てしまうのと、笑顔で出迎えなければならないというごちゃごちゃな感情が顔に出ているだろう。

「よくわからんが、喜んでいるんだよな?」

「嬉しすぎて死んでもいいくらいです」

「死んでもらっては困るが、嬉しいのなら良かった。今、付けていくか?」

 袋から取り出し、羅刹様が私にバレッタを渡してきた。
 せっかく買っていただいたバレッタだし、今すぐにつけたい。

 すぐに受け取り、髪をハーフアップにしてバレッタを付けてみる。

「ど、どうですか?」

「似合っているぞ」

「ありがとうございます」

 笑みを浮かべているけど、顔色一つ変えないなぁ。

 まぁ、今までは聞きなれない言葉とかで照れていただけで、私に対して照れていたわけじゃないもんなぁ。

 でも、少しは顔を赤くしてほしい。
 あの、照れて困っている羅刹様が本当にかわいくて何度でも見たい。

「では、次行くぞ」

「は、はい!」

 手を繋ぎ、また歩き出す。
 バレッタ、嬉しいなぁ。

 これは、私の大事な大事な、宝物だ!
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