人間にトラウマを植え付けられた半妖が陰陽師に恋をする

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
10 / 48
秋晴れ

「我にとっての肉は手に入ります」

「ふあぁぁぁああ」

「最近眠そうだね、大丈夫?」

 学生服を身に纏い、神楽と優輝は通学路を歩いていた。

 優輝は眠たそうに欠伸を零し、涙を拭いている。
 隣を歩く神楽は眠たそうにしている優輝を見て、首を傾げながらスマホ片手に問いかけた。

「大丈夫だよ。最近、人狼について調べているの。それで、寝る時間が遅いだけ」

「え、マジ? 人狼って事は、銀さんについて調べているって事?」

 予想していなかった優輝からの返答に、思わず神楽は手からスマホを落としそうになる。
 慌てて掴み直し、再度彼を見た。

「そう。人狼について少しでも知る事が出来れば、銀籠さんを喜ばせる事が出来るかもしれない。だから、調べているんだよ」

「へ、へぇ……。何か、いい情報は手に入れた?」

「いや、特に。人に化ける事が出来るとか、人を騙すとか、そんな事ばかりだよ。本当に銀籠さん達って人狼なのかな。人を騙したりなんてしないと思うんだけど」

 調べた内容と銀達を照らし合わせるが、一致しているところがない。
 神楽は首を傾げている優輝に、ボソッと言葉をなげかけた。

「騙す前に、人に近付く事すら出来ないもんね、銀籠さん」

「今、銀籠さんを馬鹿にした? いくら姉さんでもそれは許さないよ?」

「えっ、ちょっ! ご、ごめんごめんごめん!! お願いだから怒らないで! あんたが怒ったら誰も止められないんだからさ!!」

 ひぃぃぃいいいと、神楽は一人走り出し学校へと向かった。

 残された優輝は「まったく」と鼻を鳴らし、ポケットに手を入れてゆっくりと歩みを再開する。

 今の季節は秋。肌寒くなり、もう上着が必要だなぁと思いながら青空を見上げ歩く。

 どうすれば今より距離を縮める事が出来るのか、何を話せば心を許してくれるのか。

 そればかり考えていると、すぐ学校にたどり着く。
 優輝の友達が挨拶し、いつもの学校生活が始まった。

 ※

 森の中では、銀籠が食料を捕まえにボーラと呼ばれる武器を手に森の中を歩いていた。

 ボーラとは、複数のロープの先端に球状の重りを取り付けた武器。
 今までは動物を見つけると、ボーラを投げ捕まえ、食材をゲットしていた。

 銀籠は最初、上手く扱うことが出来ず、捕まえる事が出来ていなかった。
 だが、今では百発百中。鳥などと言った難しい動物も難なく捕まえられるようになっていた。

 不安も何も無いはずの銀籠だが、何故か今、纏っている空気は重く暗い。
 隣を歩いている銀もそれに気づき、気にしていた。

「はぁ…………」

「元気がないな、銀籠よ。体調が悪いのか?」

「いや、そうではない」

「なら、優輝か?」

「…………はぁ」

「わかりやすいのぉ」

 狼姿で隣を歩く銀が、銀籠の反応を見てケラケラ笑う。

 秋が近づいて来ており、風は冷たい。
 銀籠は羽織を掴み、体を縮こませる。
 手は冷たくなっており、白い息を吹きかけ温めた。

「寒くなってきたな。銀籠、狼の姿にならんくて良いのか? 毛皮はあったかいぞぉ~」

「それだと狩りをすることができないぞ、父上。今日はお肉が食べたいと言っていたではないか」

「じゃが、寒いのじゃろう? 風邪を引いてはいかん」

「大丈夫、このくらいで風邪を引く程、我はやわではない。それより、早く捕まえよう。それで火も起こし、体を温めるぞ」

 顔をきょろきょろとさ迷わせ、獲物を探す。
 銀も同じく獲物を探していた。

「――――――――っ!」

「どうしたの、父上。獲物いた?」

「…………いや、何でもないぞ。それより、寒くなってきたからか、動物達をすぐに見つける事が出来んなぁ」

 一瞬、銀がなにかの気配を察知し、体を固まらせた。

 銀籠が問いかけるが、何も言わず誤魔化そうとのそのそ歩き、獲物を探し始めてしまった。

「父上、何か隠していないか?」

「何を隠しているんだ?」

「いや、それを我が聞いているのだが…………」

「む? 隠し事なんて……。銀籠が外に出ている間に木のみを盗み食いしたことくらいしか――――あ」

「えっ」

 口が滑り、銀は顔を銀籠から逸らす。
 だらだらと汗を流し、「さーて、獲物獲物」と歩き出した。

「……そんなんで誤魔化せるわけないでしょう父上!!!! いくつ食べたのだぁぁぁああ!!!」

「す、すまん!!!!!」

 銀籠は銀を追いかけ問い詰めようとしたが、銀は狼の姿であっちこっち駆けまわる。
 瞬発力が高いため捕まえることが出来ない。

 なんとか諦めず追いかけ続けたが、最初に体力をなくしたのは、怒っていた銀籠だった。

「ふっふっふ、わしに勝とうなど数十年早い」

「現実的な数字を言うのはどうかと思うぞ父上!!」

 ────このくそ父上が……。

 ケラケラと笑う銀を睨む、銀籠。
 頭にきた銀籠は、手に持っているボーラを強く握り、構え始めた。

「え、ぎ、銀籠? それは、獲物を捕まえる時に使う物だろう?」

「そうだな、父上。今の我にとっての獲物を捕まえるための武器だ。今使う他に使う時はない」

「いや、ある、あるぞ? わしを捕まえたところで、食料は手に入らぬぞ?」

「いえ、我にとっての肉は手に入ります」

「あっ…………」

 銀籠が突如敬語で返答をしたことにより、銀はこの世の終わりを察した。

 今の銀籠の表情と雰囲気は、今は亡き妻と似ている。
 一度怒らせては手に負えない。

「では、そこにお座りください、父上?」

「…………わ、わるかった!!!! もうしないから許してくれ!!!」
感想 2

あなたにおすすめの小説

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―

なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。 ――はずだった。 目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。 時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。 愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。 これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。 「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、 年上αの騎士と本物の愛を掴みます。 全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。