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水の退治屋
「やってみようか」
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紅美歌の家を出た弥幸と星桜は、港を歩きながら考え込んでいた。
弥幸は考えることに集中しすぎてしまい、周りの人にぶつかりそうになる。
その度、星桜がしっかりと「あ、すいません。すいません」と謝っていた。
「ちょっと赤鬼君。赤鬼君?」
何度も星桜が名前を呼んでいるのにも関わらず反応せず、周りの人に突っ込むように歩き続ける。そのため、彼女は無理やりにでも止めなければと思い、彼の手首を掴んだ。
「赤鬼君てば!!!」
「────ん? あれ、ここどこ?」
「ここは、水光の港だよ」
「それは知ってるよ。その港のどこに今、僕達はいるのかを聞いてるの。君は、僕がそこまで馬鹿だと思ってるの? 怒るよ?」
「むしろ、怒りたいのこっちなんだけど……」
星桜は、やっと止まった弥幸に対し大きくため息を吐いた。
「ところで、いつまで掴んでるの?」
「────あっ。ごごごごごめんなさい!!!」
自身の手元を確認すると、星桜は無意識とは言え、がっちりと弥幸の手首を掴んでいた。そのことに顔を赤くさせ、慌てて手を離す。
弥幸はそんな彼女の様子など一切気にせず、またしても宙に視線を向けながら思考に没頭してしまう。
そのまま歩き出してしまう為、またしても人とぶつかる。
星桜は「待って!!」と、再度掴む羽目になり、そのままズルズルと引きずり移動した。
※
星桜は周りを見て、一つのお店に弥幸を引きずりながら入る。
咄嗟に入ったお店だったがテーブルと椅子が沢山あり、その全てが木製で暖かい印象を与える、素敵なお店だった。
壁側には、小さな赤い提灯が飾られており、奥の方にはカウンターがある。
そこには、ストリートチックの服を身にまとった男性が立っているため、何かを頼む際はその人に言えばいいとわかる。
とりあえず星桜は弥幸を引きずりカウンターへと向かい、メニューを見て「桃ジュースと────あ、はい。すいません。やっぱりココアとコーヒーを……」と頼み少し隣で待つ。
「あのさ。私、桃ジュース飲みたかったんだけど。何か、特別思い入れがあるの? ココアに何かあるわけ? ねぇ……」
星桜はジトっとした目を弥幸に向け、問い詰めるような口調で問いただす。
弥幸のぺーずに乱されてしまい、星桜はさすがに怒っていた。
それに対して弥幸は「特になし」と腕を組み、待ち続けた。
星桜が深呼吸をして無理やり怒りを抑えていると、ココアとコーヒーが届く。
それを受け取り、人気が少ない壁側のテーブルに置いて椅子に座った。
「まったく、もう……。はい、赤鬼君」
「ありがとう」
「どういたし──え?」
星桜はココアを渡したのだが、なぜか弥幸はコーヒーに手を伸ばし自身に引き寄せた。
「………………赤鬼君なんて嫌い」
「好かれたいと思ってないからいいよ。それより、さっきの話を聞いて、君はどう思った?」
弥幸はマスクを横に置き、コーヒーを一口飲んで星桜に問いかけた。
星桜は渋々と言った感じにココアを一口飲みながら、先程の会話を思い出す。
「なんか、久美江さんと紅美歌さんの意見が一致していないようには感じたかな。どちらかと言うと、久美江さんが自分の意見を通そうとしているように感じた……かな」
「それ、間違えてないよ。久美江の方は紅美歌に自分の仕事を継いで欲しいと思ってる。でも、紅美歌はそうじゃない。多分、継ぎたくないんじゃないかな」
弥幸は、考えながらそう口にし、星桜もそれは思っていたことらしく頷いている。
「でも、それは恨みとかではない気がする」
「なんで?」
「だって、恨みって人を憎むことでしょ? 紅美歌さんの場合は恨みとか以前に、自分の気持ちを閉じ込めてるみたいな感じだと思うの。意見を口にしないで、その場の流れに身を任せてる感じだと思った」
星桜が腕を組みながらそう口にし、弥幸はコーヒーを飲む。
「でも、そうさせているのは明らかにあの母親でしょ? 恨みが母親に向くこともあるんじゃない?」
「そうなんだけど……」
星桜は上手く言葉が見つからないのか、そこで口を閉じてしまった。
弥幸は星桜の様子を見て、思考を巡らせる。
「──君が考える線で、今回はやってみようか」
「え? どういうこと?」
「恨み自体にも色々訳があるってこと」
弥幸の言葉が飲み込めない星桜は目をぱちぱちとさせ、答えを求めるように弥幸を見つめる。
「まとめはここら辺でいいかな。日も落ちてきたし、一度水泉家に戻ろうか」
弥幸はその目線を無視し立ち上がると、コーヒーを一気に飲み干した。冷めていたらしく、美味しくなかったようで苦い顔を浮かべる。
それを星桜は苦笑いしながら見上げ、同じくココアを一気に飲み干す。
「うっ。冷たい……」
星桜も肩を落とし、そのままコップを片付けお店を出て行った。
弥幸は考えることに集中しすぎてしまい、周りの人にぶつかりそうになる。
その度、星桜がしっかりと「あ、すいません。すいません」と謝っていた。
「ちょっと赤鬼君。赤鬼君?」
何度も星桜が名前を呼んでいるのにも関わらず反応せず、周りの人に突っ込むように歩き続ける。そのため、彼女は無理やりにでも止めなければと思い、彼の手首を掴んだ。
「赤鬼君てば!!!」
「────ん? あれ、ここどこ?」
「ここは、水光の港だよ」
「それは知ってるよ。その港のどこに今、僕達はいるのかを聞いてるの。君は、僕がそこまで馬鹿だと思ってるの? 怒るよ?」
「むしろ、怒りたいのこっちなんだけど……」
星桜は、やっと止まった弥幸に対し大きくため息を吐いた。
「ところで、いつまで掴んでるの?」
「────あっ。ごごごごごめんなさい!!!」
自身の手元を確認すると、星桜は無意識とは言え、がっちりと弥幸の手首を掴んでいた。そのことに顔を赤くさせ、慌てて手を離す。
弥幸はそんな彼女の様子など一切気にせず、またしても宙に視線を向けながら思考に没頭してしまう。
そのまま歩き出してしまう為、またしても人とぶつかる。
星桜は「待って!!」と、再度掴む羽目になり、そのままズルズルと引きずり移動した。
※
星桜は周りを見て、一つのお店に弥幸を引きずりながら入る。
咄嗟に入ったお店だったがテーブルと椅子が沢山あり、その全てが木製で暖かい印象を与える、素敵なお店だった。
壁側には、小さな赤い提灯が飾られており、奥の方にはカウンターがある。
そこには、ストリートチックの服を身にまとった男性が立っているため、何かを頼む際はその人に言えばいいとわかる。
とりあえず星桜は弥幸を引きずりカウンターへと向かい、メニューを見て「桃ジュースと────あ、はい。すいません。やっぱりココアとコーヒーを……」と頼み少し隣で待つ。
「あのさ。私、桃ジュース飲みたかったんだけど。何か、特別思い入れがあるの? ココアに何かあるわけ? ねぇ……」
星桜はジトっとした目を弥幸に向け、問い詰めるような口調で問いただす。
弥幸のぺーずに乱されてしまい、星桜はさすがに怒っていた。
それに対して弥幸は「特になし」と腕を組み、待ち続けた。
星桜が深呼吸をして無理やり怒りを抑えていると、ココアとコーヒーが届く。
それを受け取り、人気が少ない壁側のテーブルに置いて椅子に座った。
「まったく、もう……。はい、赤鬼君」
「ありがとう」
「どういたし──え?」
星桜はココアを渡したのだが、なぜか弥幸はコーヒーに手を伸ばし自身に引き寄せた。
「………………赤鬼君なんて嫌い」
「好かれたいと思ってないからいいよ。それより、さっきの話を聞いて、君はどう思った?」
弥幸はマスクを横に置き、コーヒーを一口飲んで星桜に問いかけた。
星桜は渋々と言った感じにココアを一口飲みながら、先程の会話を思い出す。
「なんか、久美江さんと紅美歌さんの意見が一致していないようには感じたかな。どちらかと言うと、久美江さんが自分の意見を通そうとしているように感じた……かな」
「それ、間違えてないよ。久美江の方は紅美歌に自分の仕事を継いで欲しいと思ってる。でも、紅美歌はそうじゃない。多分、継ぎたくないんじゃないかな」
弥幸は、考えながらそう口にし、星桜もそれは思っていたことらしく頷いている。
「でも、それは恨みとかではない気がする」
「なんで?」
「だって、恨みって人を憎むことでしょ? 紅美歌さんの場合は恨みとか以前に、自分の気持ちを閉じ込めてるみたいな感じだと思うの。意見を口にしないで、その場の流れに身を任せてる感じだと思った」
星桜が腕を組みながらそう口にし、弥幸はコーヒーを飲む。
「でも、そうさせているのは明らかにあの母親でしょ? 恨みが母親に向くこともあるんじゃない?」
「そうなんだけど……」
星桜は上手く言葉が見つからないのか、そこで口を閉じてしまった。
弥幸は星桜の様子を見て、思考を巡らせる。
「──君が考える線で、今回はやってみようか」
「え? どういうこと?」
「恨み自体にも色々訳があるってこと」
弥幸の言葉が飲み込めない星桜は目をぱちぱちとさせ、答えを求めるように弥幸を見つめる。
「まとめはここら辺でいいかな。日も落ちてきたし、一度水泉家に戻ろうか」
弥幸はその目線を無視し立ち上がると、コーヒーを一気に飲み干した。冷めていたらしく、美味しくなかったようで苦い顔を浮かべる。
それを星桜は苦笑いしながら見上げ、同じくココアを一気に飲み干す。
「うっ。冷たい……」
星桜も肩を落とし、そのままコップを片付けお店を出て行った。
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