嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

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嘘つきクソ野郎の弟子

「どうせ不合格なんだろ」

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 王都から少し離れた森。
 その森は魔物が棲みつき、毒草の種類も豊富であった。
 おおよそ人間の住む場所ではないそこに、ポツンと建つ一軒家があった。
 そこに住んでいるのは、シャルルルカとレイである。
 ドロップ魔法学園に勤務するならば、王都に居を構えるべきだと思った二人は、何故か王都の外、鬱蒼とした森の中に住むことになった。
 というのも、シャルルルカが自身の銅像のある王都に住みたくないと駄々を捏ねたからである。
 せめて近くに住もうと考えたとき、この森が目に入った。
 シャルルルカの迷惑行為の被害を受ける人間が、絶対にいないであろうこの場所が……。
 幸いにして空き家があり、そこに住むことになった。
 編入試験を終えたレイは住んで間もない我が家に帰ってきた。

「ただいま戻りました……」

 レイは沈んだ表情で家の中に入った。

「おかえり」

 レイに目もくれずシャルルルカは言う。
 彼は出迎えもせず、床に寝そべりながら本を読んでいた。
 暫くしてもその場から動かないレイに、シャルルルカはようやく本を下ろした。

「あたし、絶対落ちました」
「ふーん」
「ピエーロさんにも怒られたし、キョーマくんとも仲良く出来なかったし……」
「へえー」

 レイはムッとする。

「ちゃんと聞いて下さいよ。弟子が落ち込んでるんですから」
「私は弟子を取らない」
「生徒でしたね。はあ……」

 レイは項垂れる。
 シャルルルカはそれを見て、のそのそと起き上がると、レイの前でしゃがみ込んで顔を覗き見る。

「パンケーキ食べる?」

 レイは首を横に振る。

「アイスクリームはどう?」

 レイは再び首を横に振る。

「ショートケーキは?」

 レイは更に首を横に振った。

「やれやれ」

 今度はシャルルルカが首を横に振った。

「良いか、レイ。お前が落ちたら、それはお前の実力を評価しない学園が悪いんだ。お前と合わない人間だって、世界中にごまんといる。お前に合わないそいつが悪い」
「そんな考えじゃいけないと思います」
「人の思考を誰が止められる? 思考は自由だ。誰にも操れない。そうだろう?」
「それ、慰めてるんですか?」

 レイは「ふふ」と笑った。

「慰めるの下手ですね、先生」
「私がいつ慰めようとした?」
「今しようとして、失敗してるじゃないですか?」

 シャルルルカは何も言わずに、顔を逸らした。
 レイは深いため息をついた。

「パンケーキ、作って下さい」
「ん?」
「食べます。アイスクリームも、ショートケーキも! やけ食いしてやりますよ!」

 シャルルルカはニヤリと笑った。

「良いね。今日はスイーツパーティーだ」

 □

 それから数日後の朝。

「おはようございます、シャルル先生!」

 レイはカーテンを開けて、朝が来たことをシャルルルカに知らせる。
 朝日がが瞼に当たり、シャルルルカは顔を顰めた。

「うーん……。まだ寝てて良いだろう。今日は何もないんだから……」
「学園に勤務するなら、今のうちに生活リズムを整えとかないと、出勤日に寝坊しちゃいますよ!」

 レイはシャルルルカから布団を剥ぎ取る。

「うわ。寝汗びっちょりじゃないですか! 朝ご飯の前に、汗流して下さいよね!」

 レイは窓を開ける。
 朝の爽やかな空気の心地よさを感じながら、レイはこれからのことを考えた。
──冒険者ギルドで生活費を稼ぎながら、勉強しよう。筆記試験が駄目駄目だったから、筆記試験の勉強をして。あと遠距離魔法の練習もしないと……。貴族の人との付き合い方も誰かに聞けたら良いな。勿論、シャルルルカ先生以外に!

「ポッポー」

 伝書鳩の鳴き声が聞こえて我に帰る。

「あ、伝書鳩さん! 朝からお疲れ様です。シャルルルカ・シュガー宛ての手紙なら、あたしが代わりに受け取りますよ」
「この手紙はレイ様宛てです、ポッポー」
「レイはあたしです! も、もしかして……編入試験の合否通知……!? 早くねえですか!?」

 レイが手紙を受け取ると、伝書鳩は次の届け先へと旅立った。
 レイは受け取った手紙をじっと見つめる。
──この中に、合格か不合格か書いてあるんだ……。
 そう思って、ごくりと唾を飲んだ。

「見ないのか?」
「おわあ!?」

 レイは飛び退く。

「び、びっくりさせないで下さい! 先生!」
「臆病者め。見る? 見ない?」
「見ます! でも、まだ心の準備が……!」
「くれ」

 シャルルルカが封筒を奪い取り、封をビリビリと破いた。

「ちょっと! まだ開けないで下さいよ!」
「どうせ不合格なんだろう。なら、早く楽になった方が良い」

 シャルルルカは手紙を取り出し、内容をまじまじと見た。
 レイは恐る恐る尋ねた。

「ど、どうでした?」
「残念だったな」
「え」

 シャルルルカは手紙をレイの頭に乗せ、寝室から出た。
──そっか。不合格かあ……。
 わかっていたこととはいえ、やはりショックだった。
 残念に思いつつも手紙を見る。
 目に入ったのは『合格』の文字。

「……あ?」

 レイはぽかんと口を開けたまま固まる。

「え……やった。え? でも、先生、さっき『残念』って」

 そこでレイは思い出した。
 シャルルルカはどうしようもない嘘つきであることを。

「おい! 先生! 合格じゃねえですか! 騙したな!」

 レイは一発殴ってやろうと、シャルルルカのあとを追いかけた。
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