嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

文字の大きさ
14 / 63
これが新任教師の挨拶か?

「落ちこぼれってことだ」

しおりを挟む
 バンッ、と大きな音が教室内に響かせながら教室の扉が開いた。

「おい、D組! 魔法史の教科書忘れたんだ。誰か寄越せ」

──教科書忘れたのは自分自身なのに、なんて横暴な……。
 レイはそう思いながら扉の方を見る。
 そこには、見覚えのある少年が立っていた。
 編入試験で会ったキョーマ・キャラメリゼだ。

「ひっ。キョーマくん……」

 編入試験のとき怒鳴られたことを思い出して、レイは肩を縮こまらせる。
 それを見たマジョアンヌは首を傾げた。

「レイさん、あの方とお知り合いですのぉ?」
「編入試験のときにちょっと……」

 レイはキョーマに顔を見られないように手で隠す。
 しかし、その行動はかえって目立ってしまったようだ。

「お前! あのときの格下……! このクラスだったのかよ!」

 キョーマはズカズカとレイに歩み寄る。
 レイは「こんにちは」と出来る限りの笑顔で言った。

「……丁度良い。お前、魔法史の教科書寄越せ」
「あげることは出来ねえです。あたし、貧乏なので……」
「D組の癖に口答えするな! D組がC組の俺に逆らうんじゃねえ!」
「……D組だとなんで逆らっちゃ駄目なんですか?」
「お前、こんなことも知らねえのかよ! これだからD組は!」

 エイダンが補足するように説明した。

「レイはん、あんな? ドロップ魔法学園は一学年にAからDの四つのクラスに分かれとるんや。入るクラスは試験の点数で決まっとって……」
「そう! D組は点数の低い人達……つまり、ってことだ!」
「落ちこぼれ……」

──やっぱり、編入試験の点数良くなかったんだ。
 レイは三年間の努力が否定されたような感覚に打ちひしがれる。

「ようやく自分の立場がわかったみてえだな!」

 キョーマはレイを鼻で笑った。

「落ちこぼれの格下共は格上の人間に従ってりゃ良いんだよ! わかったか!」

 キョーマがクラス全体に聞こえるような大声で言う。
 教室内は、先程までの騒がしさが嘘のようにしんと静まり返った。

「わかりましたわぁ。少々お待ち下さいましぃ」

 マジョアンヌの呑気な声が静寂を破った。
 マジョアンヌはスクールバックを机の上に置いて、中を探る。

「マジョ子のクラス、二時限目が魔法史ですから、直ぐ返して下さいましねぇ」
「は? なんでD組が俺に命令してんだよ! ……まあ、気が向いたら返してやるよ」
「そ、それは困りますわぁ」
「おら、とっとと出せ!」

 キョーマが机の脚を蹴った。
 マジョアンヌはおずおずと教科書を取り出す。
 クラスメイト達は皆、渋い顔でそれを見守っている。
 落ちこぼれは事実だ。
 C組の子に魔法で攻撃されたら敵わないから、誰も反抗しようとは思わない。

「……マジョアンヌさん、渡さねえで良いですよ」

 しかし、レイだけは違った。

「レイさん……?」

 マジョアンヌは驚いて、レイを見る。
 レイは緊張した面持ちで、キョーマを睨みつけた。

「あんたに渡す教科書はねえです! 落ちこぼれだからこそ、勉学に励まなきゃなんねえんでね!」

 レイはそう言い放つ。
 キョーマは一瞬ぽかんとしていたが、みるみる内に顔が赤くなっていく。

「格下が!」

 キョーマは魔法の杖を取り出す。
 それを見て、レイも魔法の杖を取り出した。

「焼き尽くせ、《大火炎グラフラム》!」
「あわわぁ、上級魔法ですわぁ!」

 マジョアンヌが教科書で頭を庇う。

「《流水オー》!」

 レイはキョーマの放った火魔法に水魔法をぶつけた。
 炎が完全に消える前にレイは駆け出し、キョーマとの距離を詰める。
 キョーマが気づいたときには、襟を掴まれて床に叩きつけられていた。

「痛え!」
「危ないじゃないですか、キョーマくん! 建物内で炎魔法なんて!」
「うるせえ! 俺に説教垂れるな! 格下!」
「その格下に今組み敷かれてるのは誰なんですかねー!?」

 レイは暴れるキョーマと目を合わせた。

「良いですか、キョーマくん! その態度を改めないと、シャルルルカ先生みたいなクソ野郎になっちまいますよ!」
「なんねえよ、馬鹿!」

 キョーマがレイの額に向かって頭を叩き込むが、レイはそれを軽くかわす。
 その隙に、キョーマはレイを引き剥がして立ち上がった。

「お前はいつか絶対に潰す……!」

 そう捨て台詞を吐いて、どたどたと足音を立てながら彼は立ち去った。

「凄いですわぁ。C組の子にギャフンと言わせるなんてぇ!」

 マジョアンヌがパチパチと拍手をした。

「ありがとうございますわぁ、レイさん!」
「お礼を言いたいのはあたしの方です」
「……お礼?」
「クラスで浮いていたあたしに声をかけてくれたじゃねえですか。あれ、凄く嬉しかったんです。あれがきっかけで他の人達とも話せて……」

──貴族の子が少し怖くなくなったんです。
 キョーマは怖かったが、それ以上に、嫌な思いをしているマジョアンヌを放っておけなかった。

「ありがとうございます、マジョアンヌさん」
「レイさん……!」

 マジョアンヌは感動で目を潤ませた。

「でも、さっきはなんで魔法の杖出さなかったんですか? あのままだと痛い思いしてましたよ」
「それは……ええと」
「咄嗟に呪文が出て来なくても、魔法を使うフリをしたら牽制になります! あたしも何度かそうしたら、自然と呪文が口から出るようになりましたし!」
「そうではなくてですねぇ……。マジョ子、魔法使えないのですわぁ」
「へ? 魔法が使えない……?」

 エイダンがため息混じりに言う。

「マジョ子はんは筆記試験は満点やけど、実技試験は零点だからずっとD組なんや」
「そ、それは言わないで下さいましぃ」

 マジョアンヌは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「ま、魔法が使えないのに魔法学園に入れるんですか?」
「お金とやる気さえあれば誰でも入れるんですわぁ。『誰でも魔法を習えるように』というのがアレクシス学園長の教育方針ですからぁ」
「流石、大神官アレクシス様。立派な考えやな!」

 エイダンはうんうんと頷いた。
──アレクシス学園長か……。
 魔王を討った英雄の一人で、シャルルルカの知り合い……おそらく。
 彼女は忙しいらしく、始業式にも現れなかった。
──どんな人なんだろう。あのシャルル先生とパーティー組んでたのなら、かなり器の大きい人なんだろうけど……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...