嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

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記念すべき初授業を始めよう

「落ちこぼれで助かったよ」

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 数分後。
 C組の生徒全員が校庭に倒れ伏していた。

「十分もかからなかったな」

 シャルルルカは彼らを見下ろし、フン、と鼻を鳴らした。
 余りにも早い幕切れに、レイ達は驚いた。
 C組の生徒はD組の生徒より優れていると聞いた。
 そんな彼らの魔法が、ターゲットくんにかすりもしなかった。

「……さて、ここで問題だ」

 シャルルルカはD組の生徒に向けて言った。

「何故奴らの魔法は当たらなかったのか?」
「練習不足ですか?」

 レイが答える。

「まあ、そうだな。動かない的に当てる練習しかして来なかった猿が、逃げ回るターゲットくんに魔法を当てられる訳がない」
「口が悪いですよ、シャルル先生」

 レイがシャルルルカを咎める。
 シャルルルカは気にせず続けた。

「では、第二問、奴らは何故直ぐにバテたのか?」

 レイは少し悩んだ後、こう答えた。

「《身体強化エグゼルシス》を使ってないから?」
「半分正解。《身体強化エグゼルシス》は持久力を高める。走って追いかけるなら必須の魔法だ。奴らはそれを怠った」
「もう半分は何ですか?」
「何だと思う?」
「うーん……。何だろう?」

 レイが頭を悩ませていると、シャルルルカはフッと笑った。

「……まあ、お前らは落ちこぼれで助かったよ。教える手間が省けた」
「は? 何急に馬鹿にして──」
「──あ! マジョ子、わかりましたわぁ」

 マジョアンヌが元気よく手を上げた。

「中級・上級魔法を使ってるからですわねぇ?」
「マジョアンヌ、正解」

 シャルルルカは「なかなかやるじゃないか」とマジョアンヌを褒めた。
 マジョアンヌは照れくさそうに笑った。

「確かに、あたし達は初級しか使ってないかも……」

 レイはD組の生徒達がターゲットくんに放っていた魔法を思い返した。
 彼らは落ちこぼれであり、魔力量が少ない。
 必然的に、初級魔法を使うしかないのだ。
──『落ちこぼれで助かった』って、落ちこぼれだから初級魔法しか使わなくて手間が省けたってことか……。相変わらず言い方が悪いな、この人は……。
 レイはシャルルルカに呆れた。
 シャルルルカは解説を始めた。

「中級・上級魔法は魔力を多く使う。直ぐに魔力が枯渇してバテる訳だ。あいつらみたいにな」

 シャルルルカは疲れ果てて倒れているキョーマ達を指差した。

「的に当てるだけなら、初級魔法を使った方が遥かに練習になる。馬鹿の一つ覚えで中級・上級魔法なんか使うからこうなるんだ」

 シャルルルカは彼らを鼻で笑った。

「ぐ、ぐぬぬぬ……!」

 ピエーロは悔しそうに唇を噛んだ。
 それを見て、シャルルルカはへらへらと笑った。

「では、勝負は私達の勝ちということで……」
「──こんな勝負、無効だ!」

 突如、キョーマが叫んだ。
 彼もまた、魔力の枯渇で起き上がれないでいた。

「こんなアンフェアな勝負、無効だ。無効!」
「そんな勝負を受けたのは、他でもないお前達だ」
「良いから無効なんだよ! 勝負をやり直す!」
「へえ。まだターゲットくんのケツを追いかけたいとは随分と物好きだな」
「違う! 今度は的当てなんていう下らねえ勝負じゃねえ! 公平で崇高な勝負……【マジッキング】で勝負だ!」

 キョーマはシャルルルカをビシリ、と指差した。
 
「マジッキング?」

 レイが聞き慣れない単語に首を傾げる。

「魔法スポーツの一種ですわぁ」

 マジョアンヌがレイの疑問に答えた。

「マジッキングは、魔法アーマーという魔法で作られた防具を装備して、魔法アーマーの耐久を削り合う、一対一のスポーツですわぁ」
「一対一……」

 レイは物凄く嫌な予感がした。
 もし、シャルルルカがこの勝負を受けた場合、シャルルルカはD組の生徒の中から、代表者を立てるだろう。
 シャルルルカは戦わない。
 絶対に。
 そして、シャルルルカが選ぶ代表者は、一番弟子である自分に違いない。
──勝負、受けないよね? シャルル先生……。
 レイは話の行く末を見守った。

「やれやれ。負け犬の遠吠えは見苦しいな」

 シャルルルカは呆れたように首を振る。

「私達がその勝負を受けるメリットがない。むしろ、デメリットしかない」
「さっきの勝負は受けただろうが!」
「さっきはね。今はそんな気分じゃない。勝負がしたいなら、私達が勝負を受けたくなるようにして欲しいね」

 キョーマは悔しそうに口を噤んだ。
 少し考え込んだ後、キョーマは口を開いた。

「……俺達のクラスの体育の時間、お前達に校庭を使用させてやる」
「話にならないな」

 シャルルルカは鼻で笑う。

「お前達の欲しいものが私達の欲しいものとは限らない。お前達と違って、体育の授業は足りているしな?」
「クソ、クソ! どうしたら勝負を受けんだよ!?」

 キョーマは怒りに任せて地面を叩く。
 シャルルルカは顎に手を当てて、楽しそうに笑っている。

「先生、本当に性格悪いですね」

 見兼ねたレイが言う。

「意地悪してないで、勝負は受けないってきっぱり言ったら良いじゃないですか」
「だから、言ってるだろ? メリットがあれば受けてやっても良いと」

 レイとしては、ちゃんと断って欲しいところだ。
 シャルルルカは「ふむ。そうだな」と悩むふりをしたあと、こう言った。

「では、勝負の日時と場所は私が決めさせて貰う。それが条件だ」

 キョーマは目を瞬かせる。

「そんだけ?」
「ああ、それだけさ」

 シャルルルカは頷いた。

「勝負は一週間後、昼休みの校庭で。審判は……ああ、アーヒナヒナ先生にでも頼もう。クラス代表各一人、一回きりの勝負だ。どう?」
「おう。それで勝負だ! C組代表は、最強のこのキョーマ様だ。絶対に負けさせてやる!」
「じゃあ、こっちの代表は──」

──あたしだろうな……。
 レイは諦めて天を仰ぐ。
 何しろ、自分はシャルルルカの弟子だ。
 一番信頼しているだろう。
 シャルルルカはくい、と顎を上げて、代表の名を呼んだ。

「──マジョアンヌ、いけるな?」
「へあ!? マジョ子!?」

 マジョアンヌは驚いて、咄嗟に叫んだ。
 レイも驚いた。
 レイはてっきり自分が選ばれるものだと思っていたのだ。
 そして何より、マジョアンヌだけは決して選ばれないとも。

「駄目ですわよぉ。マジョ子、魔法使えるようになりたてのほやほやですのよぉ?」
「それが良いんじゃないか。D組最弱が、C組最強を降す。これ以上ない辱めじゃあないか?」

 シャルルルカはケタケタと笑った。

「ちっ。舐めやがって……!」

 キョーマは怒りで肩を震わせる。

「一週間後、首洗って待ってろ!」

 キョーマがそう言い捨てると、おぼつかない足取りで校舎に向かっていった。
 彼に続いて、ピエーロと他のC組の生徒達もよろよろと校舎に戻って行った。
 彼らの背中を見送ったあと、シャルルルカはため息をついた。

「やれやれ。やっと行ったか」

「あのぉ」とマジュアンヌが彼に声をかける。

「シャルルルカ先生、本気ですのぉ? マジョ子を代表にだなんてぇ……」
「私が本気でないときなど一度もない」

──嘘つけ。
 レイはじとっとした目でシャルルルカを見つめた。

「無理ですわぁ。今からでも遅くありません。レイさんに代表をしましょう?」

 マジョアンヌは涙目になりながらそうお願いをした。
 シャルルルカは首を横に振った。

「レイは駄目だ」
「そんなきっぱり否定しなくても……」

 レイは肩を落とした。

「勝負まで一週間あるんだ。自信はその間につくだろう」
「で、でもぉ……」

 マジョアンヌはもごもごと口を動かす。
 しかし、シャルルルカは聞く耳を持たなかった。

「さて、勝負に向けて特訓を始めよう」

 シャルルルカはとんがり帽子から新たな的を取り出した。

「ターゲットくんのバージョンアップ版を用意した。その名も【ターゲットくんマークII】!」
「……何処が変わったんですか?」

 レイはまじまじとターゲットくんマークIIを見る。
 その顔に、ターゲットくんマークIIは水魔法を噴射した。
 ぽたぽたと、レイの顔から水が滴り落ちる。

『マヌケー』
「ターゲットくんマークIIの新機能、水魔法を放つ機能だ。命中すると煽るおまけ付き」
「余計な機能を!」

 レイは水滴を飛ばしながら叫んだ。

「避けながら当てるんだ。良い練習になるだろう? 一週間後、楽しみだな?」

 シャルルルカは口元に弧の字を描いた。
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