嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

文字の大きさ
23 / 63
体育の時間を守り抜け

「貴族のガキはものの頼み方を」

しおりを挟む
 人だかりの中心で、マジョアンヌとキョーマは向かい合って立っていた。
 二人はマジッキング用の魔法アーマーを身に纏っている。
 キョーマは腕を組みながらマジョアンヌをじっと睨みつけて、試合が始まるのを待っている。
 一方のマジョアンヌは、キョーマと周りの視線を浴びて、縮こまってしまっていた。
──うう。緊張しますわぁ……。
 マジョアンヌは不安だった。
 気を紛らわそうと、祖母から貰った懐中時計を取り出す。
 カチカチと時を正確に刻む音が心地良くて、マジョアンヌは大好きだった。
 しかし、いくら耳を澄まそうと、周りの話し声にかき消され、音が聞こえない。
 緊張は増していくばかりだった。

「なんだ、マジョアンヌ。怖気付いてるのか?」

 彼女の横にシャルルルカが立った。

「シャルル先生ぇ……」

 マジョアンヌは涙目になりながら、シャルルルカを見た。

「怖いですわよぉ。マジョ子、魔法を使えるようになってまだ一週間ですのよぉ? それなのに、クラス代表なんて。荷が重いですわぁ」
「ターゲットくんマークIIは怖い?」

 シャルルルカは唐突にそう聞いた。

「え? ……いえ、タゲツくんは怖くありませんけどぉ」
「じゃあ、こうしようか。《幻影アリュシナシオン》」

 シャルルルカが呪文を唱えると、キョーマの顔が中央に赤い丸のある、円形の板に変化した。

「うわっ!? キョーマ様、それなんですか!?」

 それに気づいたフードを被った生徒が叫ぶ。

「は? 何?」
「鏡を見てみて下さい!」

 キョーマは差し出された手鏡で自分の顔を見た。

「あっ!? 何だこれ!?」

 キョーマは目を疑い、自分の顔に手をぺたぺたと当てた。
 鏡の中で、キョーマの手が的に当たっている。

「まるで魔法演習のときの的みたいですね」

 フードの生徒はふふっと笑った。

「どうなってんだ!? おい、見るんじゃねえ!」

 キョーマはターゲットくんになってしまった頭を、どうにか隠そうと腕を振り回している。

「……うふふっ」

 マジョアンヌはそれがおかしくて、つい笑ってしまった。

「いけそう?」

 シャルルルカは尋ねた。

「はい。シャルル先生、ありがとうございますわぁ」

 いつの間にか、時計の音がマジョアンヌの耳に届くようになっていた。
──シャルル先生って、もしかして、そんなに嫌な人じゃないのかしらぁ?
 マジョアンヌはシャルルルカの顔を見る。

「何、ターゲットくんマークIIと戯れるようにやれば良いのさ」

 シャルルルカはニヤニヤと笑った。

「おい!」

 キョーマは大股を開いて、シャルルルカに歩み寄る。
 キョーマの表情はターゲットくんの的に隠れて見えないが、かなり怒っているのが、声色でわかる。

「お前がやったんだろ。これ! 今すぐ元に戻せ!」
「さあ。知らないね」

 シャルルルカは肩をすくめる。

「嘘つけ! お前が幻影使いなの知ってんだよ!」
「おいおい。貴族のガキはものの頼み方を知らないのか? 解いて欲しいならそれ相応の態度を見せないとなあ?」

 シャルルルカはへらりと笑う。
 マジョアンヌはシャルルルカの腕を掴んだ。

「シャルル先生、解いてあげて下さいましぃ。マジョ子はもう大丈夫ですからぁ」
「良い例だ、マジョアンヌ。坊や、わかったかい? ものを頼むときはこのように丁寧に──」
「こうなったのはお前のせいだろうが!」

 キョーマは怒り狂う。
 やれやれ、とシャルルルカは首を横に振った。
 シャルルルカがパチンと指を鳴らす。
 キョーマは手鏡で顔が元に戻ったのを確認すると、「最初からそうしろ!」と吐き捨てた。

「お前、いつまで俺を待たせる気だ!? さっさと試合を始めろ!」
「試合開始時間の決定権はこちらにある。この試合を受ける際に決めただろう。私としては、この勝負を無かったことにしても構わないのだが」
「……ちっ!」

 キョーマは大きな舌打ちをして、先程立っていた場所に戻っていった。
 シャルルルカは周囲を見渡した。

「……まあ、そろそろ良いか」

 シャルルルカはマジョアンヌのそばを離れ、アーヒナヒナの元に歩み寄った。

「さて。アーヒナちゃん、審判は頼むよ」
「その呼び方は止めろ」

 アーヒナヒナはシャルルルカをキッと睨みつける。
 何度言っても『アーヒナちゃん』という呼び方を止めない彼に、アーヒナヒナは呆れたようにため息をついた。

「生徒同士の交流試合の審判ならいくらでも引き受ける。……が、これは本当にただの交流試合なのか?」
「勿論」

 シャルルルカは自信を持って頷いた。

「貴様のクラスのマジョアンヌ・マドレーヌは魔法が使えないと聞いたが」
「疑ってる?」
「疑ってないとでも? 貴様が随分喧伝していたし、何か思惑があるとしか思えない」
「思惑があるとするならピエーロ先生の方だよ。ねえ、ピエーロ先生?」

 シャルルルカはアーヒナヒナを挟んで立っていたピエーロに問いかける。

「誤解ですな。我が輩はミスター・キャラメリゼの意思を尊重しただけに過ぎません」

 ピエーロは澄ました顔でそう言った。

「アーヒナヒナ先生、審判をよろしく頼みますよ。特に、シャルルルカ先生が不正を行わないか、しっかりと見張っているのです」
「失礼な。私は不正などしませんよ」
「どうだか!」
「アーヒナちゃん、私からもお願いだ。C組の連中が、マジョアンヌの晴れ舞台に水を差すような真似をしないか、見張っておいてくれ」
「貴様、我が輩を疑っているのか!」
「疑い出したのは貴方の方ですよ。私は疑ってすらいなかった。貴方が不正をするという考えがあるらしいから、心配になったんです」

 ピエーロはシャルルルカを睨みつけた。
 しかし、シャルルルカはへらへらと笑っていて、ピエーロを馬鹿にしているようにしか見えなかった。
 アーヒナヒナはため息をつく。

「言われなくとも、しっかりと見ておく」

 そう言って、一歩、前に出た。

「これより、マジッキングの交流試合を始める。両名、準備は良いか」

 首を左右に振って、マジョアンヌとキョーマにそう聞く。

「はい」

 キョーマは食い気味に頷いた。

「は、はぁい」

 マジョアンヌは慌てて返事をした。
 アーヒナヒナは二人の返答を聞き、頷く。

「良いようだな。では……」

 観客の声が一瞬で消える。
 アーヒナヒナは手を前に出す。

「──はじめ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...