嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

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体育の時間を守り抜け

「ちょこまかと逃げやがって」

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 最初に動き出したのはキョーマだ。

「《大火炎グロフラム》!」

 巨大な火球がマジョアンヌに向かっていく。

「きゃあ!」

 突然のことでマジョアンヌは一歩も動けず、火球を真正面から受けてしまう。
 マジョアンヌは思わず尻餅をついた。

「マジョ子さん!」

 レイが心配して叫ぶ。

「あいたた……ってあらぁ? 痛く……ない?」

 魔法アーマーが攻撃を防いでくれたようで、マジョアンヌに怪我はなかった。
──そうだわぁ。マジョ子、魔法アーマーをつけていたんでしたっけ。
 しかし、魔法アーマーの耐久はかなり削られてしまった。
──次に攻撃を受けてしまったら、負けてしまうかも……。
 マジョアンヌはゆっくりと立ち上がった。

「格下共が散々舐めた真似しやがって……。一瞬で丸焦げにして、てめえら全員、二度と逆らえねえようにしてやるよ!」

 キョーマは手のひらに炎を浮かべる。

「とどめだ!」

 キョーマが手を振りかぶる。

「マジョ子さん! 走って!」

 レイが叫んだ。
 マジョアンヌは頷く。

「《身体強化エグゼルシス》!」
「《大火炎グロフラム》!」

 マジョアンヌは横に向かって走り出す。
 先程までマジョアンヌがいた場所に、《大火炎グロフラム》が打ち込まれたのを見て、サッと血の気が引くのを感じた。
──走り出すのが一歩遅かったら、まともに受けていたかもしれません……。

「ちっ! 次は仕留める!《大火炎グロフラム》!」

 次々に放たれる火球は、マジョアンヌを追いかけるように着弾していく。
──凄いわぁ! マジョ子、避けられてる!
 ターゲットくんマークIIとの修行は過酷なものだった。
 向こうの水魔法は当てられ、マジョアンヌの放った魔法は避けられ、魔力不足に悩まされた。
 これでは勝負に勝てない、と何度も思った。
──でも、これなら勝てるかも……!

「クソ、クソ! ちょこまかと逃げやがって! あと一発当てりゃあ、俺の勝ちなのによ!」

 キョーマは地団駄を踏む。

「よーし、今度はマジョ子の番ですわぁ!《稲妻トネール》!」

 マジョアンヌはキョーマに雷魔法を放った。
 稲妻が、キョーマの胸に当たる。

「なっ!」
「わあ! 当たりましたわぁ!」
「まぐれ当たりで喜んでんじゃねえ……!」

 一転攻勢。
 マジョアンヌはキョーマの攻撃をかわしながら、《稲妻トネール》を何回も放った。
 何回か外しつつも、数回はキョーマに当たった。

「はあ……はあ……」

 試合も中盤。
 キョーマは走っていないのに大量の汗をかき、息を切らしていた。

 □

「キョーマくん、魔力切れしてきてますね」

 彼を見ていたレイが冷静に言う。

「あんなバカスカ上級魔法を打ち続けたら、そりゃそうなるやんな。前に先生が言っとったし」
「でも……」

 レイはマジョアンヌを見た。
 マジョアンヌも肩で息をしている。

「マジョ子さんも魔力切れしてきてます。そろそろ決着をつけないと……」

 □

──限界が近いですわぁ……。
 マジョアンヌ自身も、魔力切れを感じていた。
──これからは一発一発を大事にしなくてはなりませんわぁ。そのためには、彼に接近するのが一番……。しかし、それだとあちらの魔法が当たってしまう……。

「──《身体強化エグゼルシス》!」
「えっ?」

 キョーマが試合開始から初めて、火魔法以外の呪文を唱えた。
 慣れない《身体強化エグゼルシス》の加速で足をもつれさせながら、キョーマはマジョアンヌに飛びかかった。
 マジョアンヌは虚を突かれ、接近を許してしまう。
 キョーマはマジョアンヌにとどめを刺すべく、口を開いた。

「《大火グロフ──」

──負ける。
 マジョアンヌはそう直感した。
──それは駄目! マジョ子が……キョーマくんより早く魔法を打てたら良いのにっ……!
 マジョアンヌは懐中時計をぎゅう、と握り締めた。

「《減速タンラン》!」

 マジョアンヌの口からついて出た呪文は、こっそりと練習していた魔法の呪文だった。
 キョーマの動きが緩慢になる。
 彼の発する呪文の声が野太く、ゆっくりになった。
 まるで、キョーマだけ、時間の進みが遅くなったように……。

「《稲妻トネール》!」

 至近距離で放たれた稲妻が、キョーマの魔法アーマーを破った。

「ぐあっ……」

 キョーマの時が正常に進み出し、キョーマが仰向けに倒れる。
 彼は何が起こったのか、理解出来ないような顔をしていた。

 □

「今のって、もしかして、時を遅らせる魔法……?」

 レイが目を瞬かせた。

「でも、時魔法って高度な魔法をやんな? 一週間前に魔法が使えるようになったばかりで使えるようになるもんなん?」
「普通は使えねえです。マジョ子さんには才能があったのかも……」

 □

──放課後、タゲツくんに付き合って貰って、こそこそ練習した甲斐がありましたわぁ。この魔法、使いたかったから……。
 マジョアンヌの祖母は時の流れをゆっくりにさせる魔法を使うことが出来た。
 彼女はたった一人の時間をゆっくりにさせるのではなく、世界全てをゆっくりにさせることが出来た。
 祖母は自分とマジョアンヌ以外の時間をゆっくりにさせることで、マジョアンヌと遊ぶ時間を増やしていた。

「おばあちゃんと遊ぶの、楽しいって言ってくれたでしょう? だから、楽しい時間を増やしたかったの」

 祖母はそう言って、悪戯っ子のように笑っていた。
 楽しい時間を増やす──そんな優しい魔法を、マジョアンヌも使いたかったのだ。
──おばあちゃん、ありがとう。おかげで、マジョ子はみんなの体育の時間を守れましたわぁ。
 アーヒナヒナはキョーマの魔法アーマーの耐久がゼロであることを確認した。

「勝負あり! 勝者、マジョアンヌ・マドレーヌ!」
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