嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

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炎の大精霊の守り人

「バケモンじゃねえか」

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「聞こえなかったのか? ガキ。退けっつったんだ」

 ホムラフラムはレイを睨みつけた。
 マグマのようにぐつぐつと煮え滾る赤い瞳が、レイ達を射抜く。

『やっちゃえー、ホムラー』

 ホムラフラムにしがみつく炎を纏ったトカゲ──火の精霊サラマンダーが言う。
 ホムラフラムは徐に銃口をシャルルルカの脳天へと向けた。

「ま、待って! 待って下さい!」

 そこに、レイが立ち塞がる。
 シャルルルカをかばうように、彼女は両手を広げた。

「何をあったかわかりませんけど、殺すのは勘弁してやって下さい! こう見えて良いところもあるんです!」

 ホムラフラムは舌打ちをする。

「嬢ちゃん、消し炭になりたくなきゃあ下がってな」
「い、嫌です!」

 ぎろりとホムラフラムがレイを睨む。
 レイは負けじと睨み返した。
 膠着状態の中、誰かがレイの肩を掴んだ。
 振り向くと、そこにはシャルルルカが立っていた。

「シャルル先生! 立って大丈夫なんですか!?」

 レイはそう声をかける。
 シャルルルカは何も言わず、レイを追い越して前に出る。

「せ、先生……?」

 すれ違いざまに見たシャルルルカの目。
 レイがあのような目を見たのは、これが初めてではない。
──【神竜の寝床】で、ピエーロ先生を痛ぶった時と同じ目……。

「先生……! 待って!」

 レイはシャルルルカを止めようと手を伸ばした。
 ホムラフラムはシャルルルカを見て笑う。

「まだまだ元気そうだなァ。じゃねえと、殺し甲斐がねえってもんだ!」
幻影アリュシナシオン

 シャルルルカは杖を掲げると、シャルルルカの姿が前触れもなく消えた。
 伸ばしていたレイの手は空を掴む。

「消えた……!?」
「幻影魔法を使って背景と同化したのか。狡いことしやがって」

 ホムラフラムは数メートル先の廊下──何もないところに銃口を向けた。

「……んな子供騙しに引っ掛かる訳ねえだろ! 《炎の弾丸フラムバル》!」

 爆発音と共に、ホムラフラムの銃口から炎の弾が放たれる。
 何もないと思っていた場所で、陽炎のように空気が揺らぐ。
 すると、シャルルルカの姿が現れた。
 シャルルルカは間一髪で炎の弾を避けた。
 廊下の壁に炎の弾が着弾し、周辺を黒く焦がす。

「え!? シャルル先生!?」
「俺ぁ鼻が利くんでな。姿が見えなくても、てめえの居場所がわかんだよ!《炎の弾丸フラムバル》、散弾!」

 ホムラフラムの銃口から複数の炎の弾が発射され、全てシャルルルカに向かっていく。
 シャルルルカは杖を揺らし、もう一度先程と呪文を唱えた。

幻影アリュシナシオン……」

 シャルルルカの杖の先から水が生成され、波となって炎の散弾に向かっていく。

「水魔法の幻影……!」

 勿論その水魔法は幻影だ。
 大波の幻影は複数の《炎の弾丸フラムバル》に正面からぶつかった。
 その拍子に、炎の弾は消火され、湯気がぶわりと広がって周囲を包んだ。

「幻影の水が質量を持ってる訳がねえ! てめえ、何しやがった!?」

 ホムラフラムはシャルルルカに向かって叫んだ。

「魔法は想像力だ。人間の脳は錯覚を起こしやすい。『水によって火が消えて湯気が出る』という幻影を見せただけで、自ら火を消してしまうほどに」

 幻影の湯気が視界を覆う。
 レイ達生徒の姿も、シャルルルカの姿も見えない。

「クソッ……湯気で視界が……」

 ホムラフラムは目を瞑り、全身の神経を耳に集中させる。
 布擦れの音が聞こえて、その方向に銃口を向けた。
 だが、遅かった。
 シャルルルカの右手が上から銃身を掴み、下へ押さえ込んだ。
 そして、彼の左手がホムラフラムの首に伸びた。

「ぐっ……!」
「捕まえた」

 シャルルルカは瞳孔の開き切った目で彼を射止め、口元に弧を描く。
 ゾッとするような恐ろしい笑みに、ホムラフラムはひくりと喉が引きつる。

「ぐ、《大火炎グロフラム》!」

 ホムラフラムは喉から捻り出した声で呪文を叫ぶ。
 炎の柱が勢いよく吹き上がり、シャルルルカの体を包む。

「がぁ……!」

  衣服が焦げ、皮膚が焼けても尚、シャルルルカの手は首を掴んで離さなかった。
──はは……。とんだバケモンじゃねえか。
 ホムラフラムは心の中で嘲笑するしかなかった。

「この、クソ野郎、があ……!」

 炎の勢いが強まる。

「シャルルルカ先生!」

 レイは彼の名前を呼ぶ。
 シャルルルカを止めるべく近づくが、飛び散る火の粉が恐ろしくて、足を止めてしまう。

「熱っ……! そうだ、水魔法なら!」

 レイは杖を取り出して、先端を炎に向ける。

「《流水オー》!」

 二人の頭上にバケツをかけるように水を出す。
 しかし、炎は一向に弱まる気配はない。

「駄目だ! 炎が消えない!」

 ホムラフラムが新しい炎を生み出し続けているのだから、当然だった。
──早くしないと、先生が人殺しになっちゃう! それだけは、絶対駄目!
 レイは頭から水魔法を被って、炎の柱に突っ込もうとする。

「レイちゃん! 危ないですわぁ!」
「そうだよ! 近づいたら死んじゃうって!」

 近くにいたマジョアンヌとジャーナがレイの腕を掴んでそれを止めた。

「お願いです! 離して下さい! 先生を止めないと!」

 レイは二人の手を振り解こうともがく。
 しかし、彼女らも必死にレイを止めていた。

「先生! 駄目です! その手を離して下さい! ホムラ先生が死んじゃいます!」

 声が枯れるほど叫んでも、シャルルルカは彼女に目もくれない。

「先生! 先生──!」

 レイはただ泣き叫んで見守ることしか出来なかった。
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