嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

文字の大きさ
59 / 63
休日の遊び方

「逸話が聞けるなんて」

しおりを挟む
「──シャルルルカ様は二度も救って下さった。それから、我が輩は大魔法使いシャルルルカ様を崇拝しているのだ! わかったかね」

 ピエーロはそう話を綴った。

「きゃー! 生のシャルルルカ様の逸話が聞けるなんて!」

 ブリリアントは大興奮の様子だ。

「大魔法使い様は、シャルル先生とまるで別人なんですね」

 レイは感心したように言った。

「別人に決まってるだろう! 彼奴とシャルルルカ様を同列にするな!」
「でも、最近シャルル先生にへこへこしてますけど?」
「あれはお仕置きが怖いから……ごにょごにょ」

 ごほん、とピエーロはわざとらしく咳払いをして、話を戻した。

「これから大仕事なのでな。シャルルルカ様がモデルの創作物を浴びて、気分を上げていたのだ」
「大仕事?」
「ええ。この後に少し……。言っておくが、ドロップ魔法学園は副業を許可しているからな! ほれ、野蛮人──げふんげふん。ホムラ先生も精霊医をしているだろう!」
「何も疑ってねえですけど」
「ええい! そんな目をしていたんだ!」

 ピエーロは襟を正す。

「では、これから我が輩は仕事なので、失礼! レディ達だけで遊ぶのは構わないですが、あまり帰りが遅くならないようにするのですぞ! 夜になると、けしからん輩が湧いてきますからな!」
「はい。わかりました! ピエーロ先生、お仕事頑張って下さいね!」
「勿論、手は抜きませんとも!」

 レイ達とピエーロはわかれて歩き出した。

 □

 日が落ちる頃、シャルルルカとホムラフラムはコンサートホールの前で出会った。

「遅かったな」

 シャルルルカはあっけらかんと言う。
 ホムラフラムは呆れたように息をつく。

「てめえ、ここにいたのかよ。英雄像前をずっと探してたわ」
「待ち合わせ場所、言ってなかったっけ?」
「王都の中で待ち合わせっつったら、英雄像の前だろうが」
「私、あの像嫌いなんだ。自分の像があると気まずいだろう」
「てめえ、偽物じゃねえか」
「本物なんだけどな」

 シャルルルカは唇を尖らせる。

「嘘つくならもっとバレにくい嘘つけよ、シャーリィ」

 シャルルルカは「行こうか」と歩き出した。
 二人はコンサートホールの中に入る。
 中に張り出されたコンサートのポスターの前で、ホムラフラムは立ち止まった。

「なあ、シャーリィ。このコンサートってよォ……」

 シャルルルカは足を止めることなく、先へ行く。
 しかし、その方向は客席とは別方向だ。

「おい待てよ。客席はそっちじゃねえ」
「目的地はそこじゃないからな」
「ハア? じゃあ、何処だよ」
「控え室」
「てめえのコンサートだったとはな。驚きだ」
「こう見えて、冒険者時代はリュートをブイブイ言わせてたんだぞ?」

 シャルルルカはその場でリョートを弾くふりをした。

「しかし、残念ながら、今回は私のコンサートではない」
「そんで? 控え室、入れんのかよ」
「知り合いがいる」 

 □

「関係者以外は立ち入り禁止です」

 シャルルルカ達は会場のスタッフに門前払いを食らった。

「ほら、言ったじゃねえか」

 ホムラフラムは鼻で笑う。
 シャルルルカはふう、と一つため息をついた。

「では、控え室にいる方にこう伝えて下さい。『帽子の中はお気に召しましたか』と」
「……は?」

 スタッフは意味もわからず、ポカンと口を開ける。
 シャルルルカはヘラヘラと笑って見せた。

「伝えてくれたら、大人しく帰りますよ」
「はあ……わかりました……」

 スタッフは訝しげな顔をしたあと、廊下の奥に消えていった。
 暫くして、慌ただしく一人の男が走ってくる。

「シャルルルカ様! 何故ここに!?」

 その男はピエーロ・ボンボンであった。
 彼は燕尾服を着こなしている。

「ボンボンじゃねえか」
「げっ。野蛮人まで……?」
「あ?」
「いえ。ホムラフラム先生まで連れて」

 ははは、とピエーロは笑顔を作った。

「何用ですかな? まさか、我が輩のコンサートを台無しにしに……?」
「そんな訳あるまい。激励に来たんだ」

 シャルルルカはニヤニヤと笑って、そう言った。

「激励……?」

 ピエーロは訝しげにシャルルルカを見た。

「土の指の調子はどうだ?」

 ピエーロは目を見開く。

「……何故、それを……」

 ピエーロは昔、ゴーゴンの襲撃で指を失った。
 しかし、大魔法使いシャルルルカの魔法によって、魔力で動く指を手に入れた。
 長いリハビリの末、ピアノを弾けるようになった。
 思うように指を動かせなくて何度諦めようと思ったことか。
 それでも、シャルルルカのくれた希望を捨られず、血の滲むような努力をした。
 そして、コンサートを開くまでになった。
──こいつはシャルルルカ様の偽物なのだ。我が輩の指が土の指だと知っている訳がない!
 何も知らないホムラフラムが首を傾げる。

「土の指? 何の話だ」
「君には関係のない話」
「あ?」
「ピエーロくん。君の演奏、楽しみにしてる」

 シャルルルカはポンポンとピエーロの肩を叩くと、踵を返した。
──嘘、だよな。嘘に決まっている。彼奴が、本物のシャルルルカ様だなんて。

 ピエーロの初のコンサートは大成功に終わった。
 演奏者がよく見える席でシャルルルカは大きな拍手を送ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...