嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる

フオツグ

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パジャマパーティーは恋バナ付きで

「好きに生きな」

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 暫く歩くと街に着いた。
 人の往来が盛んな街。
 フラフラと歩くシャルルルカは何度もすれ違う人とぶつかっていた。
 しかし、ぶつかられた人は謝ることも怒ることもなく、ただ早足で通り過ぎていく。
 忙しい彼らは立ち止まる時間さえ惜しいのだろう。
 大通りから道を外れ、シャルルルカは閑散とした路地裏に入った。
 そして、一軒の宿屋に入る。

「やあ、エロディ」

 シャルルルカは宿屋の受付に座る人物に声をかけた。

「お久しぶりですね、シャルルルカ様。暫く見ない内に、また捨て犬のようになって……」

 エロディと呼ばれた男とも女とも言えない人は目を見開く。

「おや、その子はどうされたんです?」
「私の子」
「ご冗談を。今まで一言もおっしゃらなかったではないですか」
「言ってないからね。あ、こちらはエロディ。この間、恋人に逃げられた」

 エロディは苦笑いする。

「それは言わない約束です」
「……冗談のつもりだったんだがな。また逃げられたのか」
「人の心とは移ろいやすいものですからね」
「それはお前が? 相手が?」
「お互いです」

 エロディは椅子から立ち上がりレイに近づく。
 痩せこけた体と薄汚れたボロボロの服を見て、エロディは言った。

「おやおや、まるで迷い猫のようですね。捨て子でしょうか?」
「いや? 貴族から貰った」
「本当に?」
「これが証明書だ」

 そう言ってシャルルルカは先程貴族から脅しとった奴隷契約書を出した。
 エロディはまじまじとその紙を見つめる。

「なるほど、奴隷の子……。興味深いですね。この子をどうなさるつもりで?」
「さあ?」
「子育てをするのなら暫くお泊まりになられては? シャルルルカ様が子育てする様を是非見させて下さいな」
「子育て?」
「子猫が一人で生きていけるとお思いで?」
「子育ては面倒そうだ。やっぱりいらない。《契約解除》」

 シャルルルカは奴隷契約書をビリビリに破り捨てる。
 え、とレイは目を丸くさせた。

「さ、お前はこれで自由だ。好きに生きな」

 バイバイ、と後ろ手を振りながら宿屋の入り口に向かう。

「ま、待って! お金……」

 貴族の荷馬車で拾わされた硬貨をシャルルルカに渡さないと、とレイは思い、呼び止めた。
 しかし、シャルルルカは「金ならやらないよ」としらばっくれる。
 レイは困ってしまった。

「その金はどうした?」
「あんたが拾えって……」
「お前が拾ったんだな?」
「う、うん……」
「じゃあ、それはお前のものだ」

 シャルルルカは宿屋の外に出て扉を閉めてしまった。

「ま、待って!」

 レイがシャルルルカを追いかけて扉を開ける。
 シャルルルカは箒に跨り、空を飛んでいってしまった。

「行っちゃった……」

 レイは呆然と立ち尽くすしかなかった。

「シャルルルカ様を追うのはお勧めしません。あの方は悪いお人ですから」
「あの人、悪いだけじゃないと思います……」
「ふふ。ええ、そうですね。貴女はとても良い感性をしています。彼のことを一言で言い表すには、途方もない時間が必要でしょうから」

 エロディはレイの頭を撫でる。

「水遊びをしませんか? その後、新しい服を見繕いましょう。きっと、楽しい一日になりますよ」

 □

 商業の街の古い仕立て屋。
 エロディ行きつけのその店で、レイは新しい服を見繕われた。
 子供用のブラウスとサスペンダーショートパンツ、そして、大きめのリュック。
 それらを試着して、エロディに見せた。

「とてもよくお似合いですよ、お嬢様」

 エロディは微笑む。
 最初はワンピースを着させられたが、動きにくいことを理由に拒んだ。

「好きな服を好きなように着るのがオシャレですから」

 そうエロディは笑って許してくれた。

「あの、お金……」

 レイは硬貨の巾着袋をエロディに差し出した。
 これで少しでも洋服の代金が払えないかと思ったのだ。
 エロディは目を伏せる。

「受け取れません。そのお金はシャルルルカ様が貴女に渡した優しさなんですから」
「優しさ……?」
「シャルルルカ様は捻くれ者。人に優しくするのにも遠回り。お金を渡したこともきっと彼の遠回りの優しさでしょう。ですから、これはいざというときのために大事に持っておきなさいな」
「でも、エロディさんのお金が……」
「お気になさらず。私は自分のこと以外にお金を使うのが趣味なもので」

 エロディは快く代金を支払い、仕立て屋を出る。
 さて、とエロディは改まって言う。

「次は腹ごなしといきましょう」

 エロディに連れられ、再び大通りを出た。
 屋台から香る焼き物の匂い。
 甘味処のテラス席に見える綺麗なケーキ。
 レストランの店先のメニューの聞いたこともない料理の名前の数々。
 道を歩くだけで、美味しそうな食べ物の情報が出て飛び込んできて、レイはお腹を鳴らした。

「興味の惹かれるものはありましたか?」

 エロディがレイに尋ねる。

「え、えっと……。どれも美味しそうで」
「それは良かった。今日食べられなかったものは明日、明日食べられなかったものは明後日食べましょう。これからお嬢様はこの街で暮らすのです。楽しみは残しておきましょう?」
「あたし、この町で暮らして良いんですか?」
「ええ、勿論。さて、今日は何を食べましょうか?」

 エロディさん、とエロディに誰かが声をかけてきた。

「この通りを歩いてるなんて珍しいですね! 店はどうしたんですか?」
「今は臨時休業でして。可愛らしい子猫が訪れたものですから。お嬢様、ご挨拶を──」

 エロディはレイに目を向けた。
 しかし、そこにレイの姿はなかった。

「……お嬢様?」

 エロディが周囲を見回したが、レイの姿は見当たらなかった。
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