限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら

フオツグ

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限界オタクと推しとメインキャラと。

ゾンビ男子、スキルを披露する

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 そのとき、スコルピオンの後ろの草むらががさり、と動いた。
 何の音だ、と皆が思ったとき、草むらからゾンビが飛び出した。

「うおっ! 出た!」

 スコルピオンが叫ぶ。
 ゾンビは一番近くにいたスコルピオンに襲いかかる。
 リブラとシュタインボックが戦闘体制に入る。
 その前に、ノヴァが動いた。

「──《死霊の指揮者ネクロマンス》!」

 ノヴァが自身のスキルを使い、ゾンビの動きを制止させた。
 しん、と辺りが静まり返る。

「……お? おおー……? 止まった……?」

 スコルピオンはゾンビの脇腹を指で突く。
 ゾンビはぴくりとも動かない。

「大丈夫か、スコルピオン?」

 ノヴァがスコルピオンに近寄る。

「おー、平気……。ってかこれ、てめえのスキルか?」
「ああ。《死霊の指揮者ネクロマンス》で制止させた」

 シュタインボックは動かないゾンビの様子を見て、顎に手を当てる。

「ふむ……。これが死体を操るスキルか」
「どうでしょうか、シュタインボック様。ノヴァのスキルは利用出来ると思いませんか」

 リブラが自慢げに言う。
 シュタインボックは頭を振った。

「……否、まだ決断は出せぬ」

 リブラはがっかりしたように目を伏せた。

「もう行って良いぜ……」

 ノヴァはゾンビをこの場から離れるように指示した。
 しかし、ゾンビは身じろぐだけで、一向に動かない。
 不思議に思い、ノヴァはゾンビに近づいた。
 よく目を凝らすと、ゾンビの体には白い糸が巻き付いていた。

「糸……?」
「ああ、それ、俺様の固有スキル《星を繋ぐ糸コンステーレイションライン》! 糸を出して、操るスキルだ」

 スコルピオンは自身の手を見せた。
 指に白い糸が巻き付いている。

「襲われると思って、咄嗟に出ちまった。てめえのスキルを見に来たってのになァ」

 スコルピオンはリブラに目を向けた。

「つう訳で、糸切ってくれ、断罪者殿?」
「《正義の秤ユースティティア》」

 リブラはスコルピオンの真上に剣を召喚し、スコルピオンの手首を切り落とす勢いで落とした。
 スコルピオンは間一髪でそれを避ける。

「──あっぶね!」
「切れた」
「手首も切れるとこだったわ!」

 スコルピオンの糸が切れ、余った糸がしゅるしゅるとスコルピオンの手の中に吸い込まれていく。
 ゾンビに絡まっていた糸も解け、ゾンビは動けるようになった。
 ノヴァの指示通り、ゾンビはその場から立ち去った。
 ノヴァはそれを見て感心する。

「スコルピオンのスキル、凄いな……」
「そうだろぉ? もっと崇め奉れ!」

 スコルピオンはギャハハ、と笑った。
──かなり汎用性が高いスキルだ。オレみたいに場所を選ぶ必要もない……。やっぱり、【星の守護者】は星の神様に選ばれた存在なんだな……。
 ふと、ノヴァは首を伸ばした。
 ノヴァの住んでいた塔が遠くに見える。

「お前が根城にしていた塔が見えますね」

 リブラがノヴァの見ている方へ視線を向けながら、ノヴァの横に立った。

「ああ、そうだな。……あいつら元気にしてっかな……」
「〝あいつら〟とな……? この森の中に人間がおるのか?」

 シュタインボックがノヴァに尋ねる。

「ゾンビですよ。オレが住処にしてた塔の周辺に棲みついてて……。まあ、同居人みたいなもんです。結構良い奴らなんですよ」
「ゾンビに良いも悪いもないと思うが……ふむ。折角じゃ。案内して貰おうかのう」
「え……案内ですか? あそこは塔以外、何もないですよ?」
「〝良いゾンビ〟とやらいるのじゃろう? わしに紹介してくれんか?」
「ううん……。シュタインボック様のお願いとあらば……?」

 ノヴァは首を捻りながらも承諾した。

「こっちにある橋を渡れば直ぐ着きますよ」

 ノヴァは先頭を切って歩き始めた。
 その後ろで、リブラがシュタインボックに小声で尋ねた。

「シュタインボック様、何が目的で?」
「そなたも気になるじゃろう。この五年間、あやつがどうやって過ごしてきたのか……」

 リブラは黙り込む。

「あやつの住処を見れば、少しはわかるかもしれぬぞ?」
「……そう……ですね」

 リブラはノヴァの顔を見つめる。

「私はもう、目を逸らさない……」
「──んー。ここらへんだと思うんだけどな。おんぼろ橋があるとこ……」

 ノヴァは前方に目を凝らした。
 そこには崖がある。
 見たところ橋はかかっていない。

「おんぼろ橋……?」
「おんぼろだから、『おんぼろ橋』。今にも落ちそうな橋でさ。ゾンビ達に『一度に大勢で渡るな』って言ってたんだけど……」

 ノヴァは崖の下を覗き込んだ。

「あー……やっぱり。橋が落ちてら。下にゾンビが何匹か落ちてるし、あいつらが落としたな、多分」

 ノヴァ達のいる崖に繋がれていた紐が切れたのだろう。
 崖には、橋だったものがへばりついている。
 崖の下にはゾンビの残骸がいくつも転がっていた。
 ゾンビは魔物だ。
 死ぬ時に、星の欠片となる。
 まだ星の欠片になっていないということは、一応、生きているということなのだろう。
 残骸は崖の下でうごうごと動いている。

「ノヴァ、あまり見ないように」

 リブラは青い顔で言う。
 ノヴァが首を傾げた。

「なんで?」
「見て、気分の良いものではありません」
「ゾンビの残骸なんて、ここじゃ日常茶飯事だぜ? オレで見慣れてるだろ」
「ノヴァは違う」
「同じだよ」

 ノヴァはへらへらと笑う。

「しっかし、困ったな……。この橋、便利だったのに」

 ノヴァは腕を組んで思案する。

「こういうときのために、スコ坊がいるんじゃ」

 シュタインボックがスコルピオンを見て、顎をくいっと上に上げた。

「スコ坊、《星を繋ぐ糸コンステーレイションライン》で橋を直すのじゃ」
「俺様があ?」
「命令じゃ、すこ坊。『橋を直せ』」
「ちっ、人使いの荒いジジイだ。── 《星を繋ぐ糸コンステーレイションライン》!」

 スコルピオンの手から糸が飛び出し、垂れ下がってる橋に巻きつく。
 スコルピオンは橋に巻き付いた糸の端を対岸へと飛ばし、対岸の樹木に引っ掛ける。
 スコルピオンは戻ってきた糸を掴み、思い切り引っ張った。

「そりゃっ!」

 橋がピンと張った。
 スコルピオンは糸を手慣れた手つきで操り、樹木の幹へ糸を巻きつけ、固定する。
 おんぼろ橋は向こう側に渡れるようになった。
 スコルピオンはふう、と額の汗を腕で拭う。

「これで渡れんだろ」
「強度は」
「俺様が人様を害することは禁止されてる。てめえらお得意の従属契約でな。俺様が意図的に強度を弱くすることは出来ねえ」
「……それもそうか」

 リブラはすたすたと橋を渡っていく。
 橋が修復されたとはいえ、まだ『おんぼろ橋』だ。
 ゆらゆらと揺れていて、また何かの拍子に落ちてしまいそうだ。
 そんな橋をリブラは恐怖なんてないように渡っていく。

「肝が座ってんなァ、相変わらず」

 スコルピオンは呆れ顔で笑った。
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