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国民への婚約発表。4
この16年間。幼少期を除けば約十年間、虚勢を張って生きてきた。気が付けば周囲に辛辣令嬢なんてあだ名も付いていた。
アレクと再会して演技の必要はなくなったが、それと同時にぽっかりと開いてしまった空白の時間が不安の波となって押し寄せて来る。
内気な性格の自分が王妃なんて務まるのか、虚勢を張っていない自分に価値があるのか、そしてなによりも……自分がアレクに相応しい人間なのか。
これから自分の義理の母になる人に否定してもらえれば、アレクもきっと私を諦めて新しい婚約者候補を見つけるだろう。その方がアレクは幸せになれるのかもしれない……
「質問に質問で返すようだけど……あなたは自分に自信がないの?」
「…………はい」
図星だった……この人に初めて会った瞬間から、どこか掴めない人だと思っていた。
私が膝に手を置きうつむきながら表情を曇らせていると、ビクトリアは私の体をそっと抱き寄せた。
「なっ!? お義母様っ!?」
「……震えてる。それに体も冷たいわ……元婚約者の人は、本当の意味であなたを見てくれたことがないんでしょう。だから、性格を変えてまで振り向いてもらおうとした……でも、失敗した。だから、自分には価値がないってあなたは決めつけているのね」
「……そうかも、しれません」
小刻みに震えている私をビクトリアは優しく包み込むようにして抱き締める。
「大丈夫よ。あなたは頑張ることができる人間なのだから……周囲の声や反応なんて気にしてもキリがないわ。大事なのはあなたがアレクを好きか……一生添い遂げたいかどうかなんだから……アリシアちゃんはアレクが好き?」
「好きです!」
自分でも驚くほど早く返答した私は頬を真っ赤に染めて恥ずかしくなってビクトリアから視線を逸らした。
ビクトリアはそんな私を見て優しい微笑みを向ける。
「そう。なら、これから何があっても大丈夫……アレクをよろしくね……」
「はい。ありがとうございます……おかあさま……」
私が涙を流しながらうなずくと、ビクトリアは私の体をぎゅっと抱き締めた。
それから涙が収まるまでビクトリアが抱いててくれた……
「アリシアちゃん。お風呂に入ってきたら? 少し体を温めて落ち着いてきなさい」
「……はい。そうします」
私はそう言って部屋を出た。
外では少し離れた場所でアレクが腕を組みながら壁にもたれ掛かって待っていた。
さっきまで居たはずの姿がないのは、セリアはおそらく仕事に戻ったのだろう。
「アリシア、もういいのか?」
「はい。アレク……お義母様はいい方ですね……」
「……そうか」
アレクは壁にもたれ掛かりながら嬉しそうに微笑みを浮かべる。
アレクと再会して演技の必要はなくなったが、それと同時にぽっかりと開いてしまった空白の時間が不安の波となって押し寄せて来る。
内気な性格の自分が王妃なんて務まるのか、虚勢を張っていない自分に価値があるのか、そしてなによりも……自分がアレクに相応しい人間なのか。
これから自分の義理の母になる人に否定してもらえれば、アレクもきっと私を諦めて新しい婚約者候補を見つけるだろう。その方がアレクは幸せになれるのかもしれない……
「質問に質問で返すようだけど……あなたは自分に自信がないの?」
「…………はい」
図星だった……この人に初めて会った瞬間から、どこか掴めない人だと思っていた。
私が膝に手を置きうつむきながら表情を曇らせていると、ビクトリアは私の体をそっと抱き寄せた。
「なっ!? お義母様っ!?」
「……震えてる。それに体も冷たいわ……元婚約者の人は、本当の意味であなたを見てくれたことがないんでしょう。だから、性格を変えてまで振り向いてもらおうとした……でも、失敗した。だから、自分には価値がないってあなたは決めつけているのね」
「……そうかも、しれません」
小刻みに震えている私をビクトリアは優しく包み込むようにして抱き締める。
「大丈夫よ。あなたは頑張ることができる人間なのだから……周囲の声や反応なんて気にしてもキリがないわ。大事なのはあなたがアレクを好きか……一生添い遂げたいかどうかなんだから……アリシアちゃんはアレクが好き?」
「好きです!」
自分でも驚くほど早く返答した私は頬を真っ赤に染めて恥ずかしくなってビクトリアから視線を逸らした。
ビクトリアはそんな私を見て優しい微笑みを向ける。
「そう。なら、これから何があっても大丈夫……アレクをよろしくね……」
「はい。ありがとうございます……おかあさま……」
私が涙を流しながらうなずくと、ビクトリアは私の体をぎゅっと抱き締めた。
それから涙が収まるまでビクトリアが抱いててくれた……
「アリシアちゃん。お風呂に入ってきたら? 少し体を温めて落ち着いてきなさい」
「……はい。そうします」
私はそう言って部屋を出た。
外では少し離れた場所でアレクが腕を組みながら壁にもたれ掛かって待っていた。
さっきまで居たはずの姿がないのは、セリアはおそらく仕事に戻ったのだろう。
「アリシア、もういいのか?」
「はい。アレク……お義母様はいい方ですね……」
「……そうか」
アレクは壁にもたれ掛かりながら嬉しそうに微笑みを浮かべる。
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