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ビスタへ向かう船の中、倉野とニャル。
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ビスタ国へ向かう船の中。倉野は用意された部屋でニャルから水を手渡された。
「まだ、船酔いは治まりそうにないです?」
「ええ、すみません。まだ、ちょっと」
倉野はグルグルとした気持ち悪さを感じながらな答える。
経験を積めばスキルとして能力を得られる倉野だったが、伸びにくい部分もあるらしく、『船酔い耐性』はなかなか得られない。
眠って起きてを繰り返すうちに、今が現実なのか夢なのか曖昧になってくる。
そんな状態で倉野がボソッと呟いた。
「ニャルさんの耳、とても可愛らしいですよね」
普段の倉野であれば、突然言わないようなセリフである。
「ニャッ? 何言ってるんですか、クラノさん」
ニャルは猫の獣人。獣人が差別されるこの世界では、獣人の耳や爪、牙や尻尾が褒められることなどあまりない。
ニャルは恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに耳を小刻みに揺らす。
すると倉野は懐かしむように優しく微笑み、ニャルの耳に手を伸ばした。
「昔、大好きだったタマみたいで、落ち着きます」
タマ、が元いた世界の猫であると知らないニャルは、自分が『倉野の元恋人に似ている』のだと勘違いし、赤面してしまう。
「ク、クラノさん? 起きてますか? 大丈夫ですか?」
そう言いながらも、自分の方に伸びてきた倉野の手を受けいれ耳に触れさせた。こそばゆくて、胸の奥から落ち着かなさが溢れる。
だが、触っている倉野は至極嬉しそうだった。
「今日も可愛いねぇ、よしよし」
まるで酩酊状態だ、と思いながらもニャルは小さく呟く。
「もう、私はニャルですよー」
そして最後に倉野に聞こえない程小さくこう付け足した。
「触るならタマさんの代わりじゃなくて、ニャルとしてにしてください」
「まだ、船酔いは治まりそうにないです?」
「ええ、すみません。まだ、ちょっと」
倉野はグルグルとした気持ち悪さを感じながらな答える。
経験を積めばスキルとして能力を得られる倉野だったが、伸びにくい部分もあるらしく、『船酔い耐性』はなかなか得られない。
眠って起きてを繰り返すうちに、今が現実なのか夢なのか曖昧になってくる。
そんな状態で倉野がボソッと呟いた。
「ニャルさんの耳、とても可愛らしいですよね」
普段の倉野であれば、突然言わないようなセリフである。
「ニャッ? 何言ってるんですか、クラノさん」
ニャルは猫の獣人。獣人が差別されるこの世界では、獣人の耳や爪、牙や尻尾が褒められることなどあまりない。
ニャルは恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに耳を小刻みに揺らす。
すると倉野は懐かしむように優しく微笑み、ニャルの耳に手を伸ばした。
「昔、大好きだったタマみたいで、落ち着きます」
タマ、が元いた世界の猫であると知らないニャルは、自分が『倉野の元恋人に似ている』のだと勘違いし、赤面してしまう。
「ク、クラノさん? 起きてますか? 大丈夫ですか?」
そう言いながらも、自分の方に伸びてきた倉野の手を受けいれ耳に触れさせた。こそばゆくて、胸の奥から落ち着かなさが溢れる。
だが、触っている倉野は至極嬉しそうだった。
「今日も可愛いねぇ、よしよし」
まるで酩酊状態だ、と思いながらもニャルは小さく呟く。
「もう、私はニャルですよー」
そして最後に倉野に聞こえない程小さくこう付け足した。
「触るならタマさんの代わりじゃなくて、ニャルとしてにしてください」
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