異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

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扉を開けた理由

　二月前、ディートの遺体を目の前にして抱いた小さな疑問について話したルベルト。
　一つ一つは大きな違和感ではない。だが、重なることで記憶に残る疑問となったのだろう。
　ルベルトの話を聞いたノエルは同調するように頷いた。

「確かにそれは気になる情報ね。グラスや葡萄酒の入手方法から何かのつながりが見えてくるかもしれないもの。それに所持金が少なかったっていうのもおかしな話よね。アルダリンさんが仕入れてくれた情報によれば船に乗る前にデルターラで豪遊してる・・・・・・つまりエスエ帝国でお金の当てがあったってことかしら」

　そう考察するノエル。その隣で聞いていたアルダリンも自分の考えを述べた。

「私個人の意見ですが、仕入れにせよ商品を売りに行くにせよある程度余裕を持てる資金を持っていくと思いますぞ。ディートが商人であるならば余計にです。何か掘り出し物を見つける可能性もありますし、状況によっては滞在日数が増えるかもしれない。そう考えると、既に商品にはお金を払っていて受け取りに行く予定だったか、エスエ帝国の方に関係者がおりそちらでお金を用意していたか。何にせよお金の当てはあったはずですな」

　ディートの所持金が少なかったという情報からほんの少しだけ乗船目的の可能性を絞り込むアルダリン。何もわかっていない状況から一歩、いや半歩前したというところだろう。
　推測を進めるアルダリンたちの姿を見ながらルベルトは何かを思い出したかのように声を漏らした。

「あ」
「どうしたの？」

　突然、口を開いたルベルトに驚きながらノエルが問いかける。
　するとルベルトは腕を組み首を傾げながら、記憶を探った。

「いや、もう一つ何かを忘れていたような気がしたんですよ。自分で目にしたことでもなく、乗組員から少し聞いただけだったので失念していました」
「もう一つ？」

　再びノエルが問いかけるとルベルトは自分の部屋の扉を指さし、こう話す。

「扉を開けることになった理由です」

　ルベルトの言葉を聞いたリオネはハッとしたように口を開いた。

「そうですね。確かにどうしてディートさんの部屋を開けることになったのか、私たちはまだ知りません」
「どうしてって、そりゃ、返事がなかったからじゃないの？」

　ノエルが当然のようにそう返す。しかしリオネは首を横に振った。

「そんなはずないんです。ディートさんは一人で船に乗っていますし、出航してからそれほどの時間は経っていなかった。部屋を開ける理由がないんです。誰かがディートさんに会いに来ない限りは」

　それを聞いたアルダリンはなるほどと頷く。

「リオネさんの言う通り乗組員がいきなり部屋の訪れる理由なんてないですな。ですが、ディートには一緒に乗船した者がいなくとも部屋で酒を飲んだ者がいたはず。その者がもう一度ディートの部屋を訪ねたと考えるのが自然でしょうか」