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事件の輪郭、新たなる疑問

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 名前が分かっているのならばブラッドという乗組員に話を聞くことができるだろう。
 そう考えたノエルはアルダリンとリオネに話しかけた。

「じゃあとりあえず、そのブラッドっていう乗組員に話を聞きにいく? 事件の状況なら大体分かったし」
「そうですな・・・・・・どうですか、ルベルトさん。他に何か覚えていることはありませんか?」

 アルダリンはそう言いながらルベルトに視線を送る。問いかけられたルベルトは自分の顎に触れながら記憶を遡ったが、何も思い出せずに首を横に振った。

「うーん、覚えていることはこれで全てだと思います。私自身、エスエ帝国には任務で向かっていましたので現場検証以外に参加できませんでしたから」

 ルベルトの言葉を聞いたアルダリンは優しく微笑む。

「ほっほっほ、そうですか。では、そのブラッド氏に話を聞きに行くとしましょう。ルベルトさん、ご協力感謝いたしますぞ」
「いえ、大した情報がなく申し訳ないくらいです」
「何をおっしゃいますか。ルベルト氏のおかげで事件の輪郭が見えてきましたぞ。また何かを思い出した際には教えていただけますかな」
「もちろんです」

 ルベルトは左胸に手を当てながらそう答えた。命に替えても協力するという表現だろう。
 その後ルベルトに礼を言いアルダリンたち三人はその部屋を出た。
 部屋を出たアルダリンはノエルとリオネに話しかける。

「かなりの情報が得られましたな。ディートの死亡が確認された時間と状況。ディートの部屋に置かれていたグラスと葡萄酒はグランマリア号で取り扱っていない物ということ。そして何よりディートの異変に気づき乗組員に報告した第一発見者の存在でしょう。その正体さえ分かれば大きく進展することは間違いないですな」
「そうですね。そのブラッドさんって乗組員に話を聞けば、どのような人かだけでもわかるかもしれませんしね」

 そうリオネが答えた。
 これまで二月前も乗船していた六人の話でしか真相に近づくことしかできなかったが、第一発見者がいるとなれば別である。
 第一発見者となれば間違いなくディートとの関わりがあるはずだ。
 その男がディートの死と関わっている可能性すらある。
 ルベルトから得た情報を再確認した三人はそのブラッドという乗組員を探すことにした。

「ひとまず誰でもいいので乗組員に話しかけますかな。乗組員ならば同僚のブラッドを呼び出し話を聞くこともできるでしょう」

 アルダリンが提案するとリオネが何かを思い出したような表情で口を開く。

「だったら・・・・・・」

 それからリオネはとある人物の名前を出した。その者なら協力してくれるだろうという話である。
 そして三人はその協力してくれるであろう人物のもとへ向かった。
 場所は四階の乗組員室である。

「ジョンは居る?」

 ノックもなく乗組員室の扉を開きながらノエルは言い放った。
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