異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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普通の世界

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 どうあってもジルトールがした事は許されるべきではない。
 しかし、その先を決めるのは倉野ではなく、エスエ帝国の者たちだ。
 
「あとはエスエ帝国の方々に任せましょう。グランダー伯爵に連絡をとって・・・・・・」

 そう言い出した倉野は言葉の途中でいきなり地面に膝をつく。

「あ、あれ?」

 全身の力が抜けていくのが分かった。最初にクレアシオンを握った時と同じ感覚である。
 すると倉野の頭の中にイスベルグの不満そうな声が響いた。

「全く・・・・・・自分の器を無限だと思っているのか。既に私がお前の中にいるというのにこのような大きな力を・・・・・・おかげで言葉を伝えるのにも時間がかかったぞ」
「イ・・・・・・イスベルグさん?」
「わかり易く言うなら、その剣からお前に力が流れ込んでいる。一気に流れ込んできた力を受け止めると体に大きな負担が掛かるもの。私が言葉を伝えるのに時間がかかったのもそれが理由だ。どうだ、どんどん力が入らなくなっているだろう?」
「は、はい。あの、意識も・・・・・・」
「ああ、今からお前は睡眠状態に入る。その力が体に馴染むために必要な段階だ。残念ながら、この戦いの結末を見届けることは出来ん」
「それなら・・・・・・大丈夫です」
「ほう、言い切れるのか? 間違いなくこの戦いの勝利者はクラノだ。お前に全てを決める権利がある。だが意識を失えば、お前の望む結末にならんかもしれんぞ」
「大丈夫です。皆さんがいますから・・・・・・」

 イスベルグの言葉にそう答えながら倉野はレオポルト、レイン、ノエルに視線を送る。それに気づいたレオポルトは不安そうな表情で倉野の体を支えた。

「大丈夫か、クラノ。どうした」

 なんとか言葉を返そうとする倉野だったが薄れていく意識には勝てない。
 そんな倉野にレインが優しく語りかける。

「ははっ、大きな戦いが終わるといつもクラノは気を失うね。俺たちに何かできる事はあるかい?」

 レインの問いかけに倉野はなんとか言葉を返した。

「僕は・・・・・・大丈夫です。後のことはお願・・・・・・い・・・・・・しま・・・・・・す」

 それだけ言い残して倉野は意識を失う。
 たとえ自分が意識を失っていてもレオポルトたちがいれば大丈夫だという信頼だった。そしてレオポルトたちにもその信頼は伝わっている。

「安心して眠ってなさい、クラノ」

 微笑みかけるノエル。

「これが世界の危機を救った英雄の寝顔か。こうして見ると普通の男だな」

 倉野の顔を覗き込み呟くレオポルト。

「そうだね。クラノは普通じゃない力を持った普通の男さ。だからこそ弱者の気持ちもわかるんだと思うよ。強者も弱者も平等に笑って暮らせる世界・・・・・・そんな普通を願っている」

 レインはそう語りながら、剣を鞘に納める。
 優しい口調で語るレオポルトたちだが、この戦いが終わっていないことはわかっていた。いや、むしろ本当の戦いはこれからだろう。
 倉野の願いを叶えるための戦い。平和へと繋ぐための戦いだ。
 勝利の余韻に浸っている余裕などありはしない。

「さて、するべきことをするとしよう。レイン・ネヴァー、ノエル・マスタング。すまんが、力を貸してもらうぞ」

 言いながらレオポルトは倉野の体をレインに手渡した。
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