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雷帝の起源5
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言いながらシュレッケンは邪悪な笑みを浮かべる。
大きな怒りを感じたエクレールだったが、この時点で王を失うわけにはいかない。戦争が始まるかも知れないという状態で旗印となるシュレッケンを失えば、少なからず国内に影響を及ぼす。
エクレールは怒りを腹の中に隠し、未来だけに焦点を当てることにした。守るべきものを守るために戦うしかないのだ、と自分に言い聞かせる。
そこからはエクレールが予想した通りに全てが動き出した。
王女の死を知ったカルゴノールは王も国民も同様に怒り、バレンドットへと宣戦布告する。戦う相手がカルゴノールだけならばそれほど恐れることはない。だが、エクレールはその先に起こり得ることまで予想していた。
これまでにバレンドットが侵攻してきた周囲の国々の参戦である。
シュレッケンの欲望の対象となったのはカルゴノールだけではない。周囲の小国を相手に理不尽な侵攻を繰り返してきた。
「恨みを買いすぎている・・・・・・」
エクレールは戦況を把握しながらそう呟く。
これまでバレンドットが侵攻してきた国が正式にカルゴノールと同盟を組むと表明したのだ。
一つ一つの国はそれほど大きくもなく戦力も持たない。だが、全ての国がバレンドットを敵と定め、協力し合えば戦力差はなくなる。
それどころかあらゆる方向に対応しなければならないバレンドットが不利になるかもしれない。
そのような状況であってもエクレールは戦うしかなかった。己の持つ全てを出しきり、家族と国民を守る。それしか道はない。
エクレールの予想通り、バレンドットとカルゴノール側の戦力は拮抗し、戦争は泥沼状態に突入した。
バレンドットのあらゆる方向から攻め込んでくる国々、しかし兵力を増強していたバレンドットは全てに対応し、侵攻を許すことはない。だが、あくまで防衛が成功しているだけだ。撃退までは至らない。
終わることのない侵攻と防衛が繰り返されるだけだった。
カルゴノールの宣戦布告から数ヶ月後。エクレールは様々な戦場で指揮を取るために国内中を動き回っていた。生まれたばかりのノエルどころか家族にも会えず、ひたすらに戦いの日々を過ごすエクレール。
そんなエクレールに届いたのは彼を更なる絶望に叩き落とす一報だった。
「頼む・・・・・・嘘だと・・・・・・言ってくれないか」
届いた情報を聞いたエクレールは膝から崩れ落ちる。自分の体を支えていた芯がなくなったかのように、起き上がれなくなった。
しかし、無情にも報告は繰り返される。
「・・・・・・繰り返します。昨夜、奥方様は・・・・・・」
報告されたのは妻の死だった。エクレールは再び妻を失ったのである。
自分は何をしているのだろう、と自分に問いかけた。大切なものを守るために戦ってきたはずである。なのにどうして自分は妻の死に目にも会えなかったのだろうか。どうして妻の死を部下の言葉で知るのだろうか。
ここからエクレールの人生は大きく変わっていく。
大きな怒りを感じたエクレールだったが、この時点で王を失うわけにはいかない。戦争が始まるかも知れないという状態で旗印となるシュレッケンを失えば、少なからず国内に影響を及ぼす。
エクレールは怒りを腹の中に隠し、未来だけに焦点を当てることにした。守るべきものを守るために戦うしかないのだ、と自分に言い聞かせる。
そこからはエクレールが予想した通りに全てが動き出した。
王女の死を知ったカルゴノールは王も国民も同様に怒り、バレンドットへと宣戦布告する。戦う相手がカルゴノールだけならばそれほど恐れることはない。だが、エクレールはその先に起こり得ることまで予想していた。
これまでにバレンドットが侵攻してきた周囲の国々の参戦である。
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「恨みを買いすぎている・・・・・・」
エクレールは戦況を把握しながらそう呟く。
これまでバレンドットが侵攻してきた国が正式にカルゴノールと同盟を組むと表明したのだ。
一つ一つの国はそれほど大きくもなく戦力も持たない。だが、全ての国がバレンドットを敵と定め、協力し合えば戦力差はなくなる。
それどころかあらゆる方向に対応しなければならないバレンドットが不利になるかもしれない。
そのような状況であってもエクレールは戦うしかなかった。己の持つ全てを出しきり、家族と国民を守る。それしか道はない。
エクレールの予想通り、バレンドットとカルゴノール側の戦力は拮抗し、戦争は泥沼状態に突入した。
バレンドットのあらゆる方向から攻め込んでくる国々、しかし兵力を増強していたバレンドットは全てに対応し、侵攻を許すことはない。だが、あくまで防衛が成功しているだけだ。撃退までは至らない。
終わることのない侵攻と防衛が繰り返されるだけだった。
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自分は何をしているのだろう、と自分に問いかけた。大切なものを守るために戦ってきたはずである。なのにどうして自分は妻の死に目にも会えなかったのだろうか。どうして妻の死を部下の言葉で知るのだろうか。
ここからエクレールの人生は大きく変わっていく。
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