471 / 729
連載
戦々氷々と炎帝閻魔
しおりを挟む
しかし、下から見上げている倉野は発動された魔法をはっきりと捉えている。
「これが天空の支配者・・・・・・ドラゴン」
呟く倉野の目に映っていたのは冷気で真っ白に染まる空だった。
デザストルよりもさらに上空が冷気で満ちていく。
しかしイスベルグと向かい合っているデザストルはその光景に気づいていない。
「何をしやがったぁ!」
魔法の詠唱を聞いた上でその正体を掴んでいないデザストルは一気に困惑する。
イスベルグはまるで相手に同情するかのような表情で言葉を返した。
「翼を持つ強者だから天空の支配者だと思っているのか? 否。文字通り天空を支配するのだ。見上げてみろ・・・・・・もう手遅れだがな」
その言葉が合図だったかのようにデザストルは頭上を見上げる。
それと同時に空から無数の尖った氷柱が降り注いだ。
どう考えても回避不能な速度で降り注ぐ氷柱は、デザストルが声をあげる間もなくその漆黒の体表に突き刺さっていく。
高速すぎるリズムで執拗なまでに突き刺さっていく氷柱は、漆黒の体表を白に染め君臨していたデザストルを地面に叩き落とした。
ズドンという鈍い音を響かせて地面に押し当てられたデザストルは周囲の建物を下敷きにして横たわる。
落下地点は『センター』から少し西にずれており倉野が受けたのは巨体落下の風圧だけだった。
しかしその光景の壮大さに言葉を失う。
「・・・・・・」
舞い上がる土埃、響いた音の余韻、途轍もない緊張感がその場の空気を支配した。
もう動かないでくれ。言葉のでない倉野はそれだけを願う。
だが、ふと上空を見上げるとイスベルグの表情から緊張感が消えていないことに気づいた。
まだ終わっていないと倉野は直感で理解する。
その瞬間、地面に叩きつけられたデザストルが咆哮した。
「グアアアアアアアアァァァァァ! 許さねぇ許さねぇ! テメェだけは絶対に殺してやる!」
顔から体、両翼まで氷柱が突き刺さっている状態で立ち上がったデザストルは更なる怒りを燃やす。
その様子を上から見ていたイスベルグは魔力の動きを察知し、慌てて口を開いた。
「クラノ! 今すぐその場を離れろ!」
突然の指示に倉野は困惑する。
「え?」
しかし、もう既にイスベルグが危惧した事態は起き始めていた。
「全てを消し炭にしてやるぜ! 炎帝閻魔・爆発連鎖の段!」
デザストルが詠唱した瞬間、その体が爆発したと錯覚するかのような出力の炎を放つ。そして文字通り連鎖的にその爆発が周辺に広がり始めた。
デザストルの場所から円を描くように広がる爆発は建物を吹き飛ばし空間を燃やし、焦げ臭い更地にしていく。
もちろん、その爆発は猛スピードで少し離れていた倉野に襲いかかった。
「クラノ!」
再び上空から声をかけるイスベルグだったが、突然の窮地にただ驚くばかりの倉野には届かない。
「これが天空の支配者・・・・・・ドラゴン」
呟く倉野の目に映っていたのは冷気で真っ白に染まる空だった。
デザストルよりもさらに上空が冷気で満ちていく。
しかしイスベルグと向かい合っているデザストルはその光景に気づいていない。
「何をしやがったぁ!」
魔法の詠唱を聞いた上でその正体を掴んでいないデザストルは一気に困惑する。
イスベルグはまるで相手に同情するかのような表情で言葉を返した。
「翼を持つ強者だから天空の支配者だと思っているのか? 否。文字通り天空を支配するのだ。見上げてみろ・・・・・・もう手遅れだがな」
その言葉が合図だったかのようにデザストルは頭上を見上げる。
それと同時に空から無数の尖った氷柱が降り注いだ。
どう考えても回避不能な速度で降り注ぐ氷柱は、デザストルが声をあげる間もなくその漆黒の体表に突き刺さっていく。
高速すぎるリズムで執拗なまでに突き刺さっていく氷柱は、漆黒の体表を白に染め君臨していたデザストルを地面に叩き落とした。
ズドンという鈍い音を響かせて地面に押し当てられたデザストルは周囲の建物を下敷きにして横たわる。
落下地点は『センター』から少し西にずれており倉野が受けたのは巨体落下の風圧だけだった。
しかしその光景の壮大さに言葉を失う。
「・・・・・・」
舞い上がる土埃、響いた音の余韻、途轍もない緊張感がその場の空気を支配した。
もう動かないでくれ。言葉のでない倉野はそれだけを願う。
だが、ふと上空を見上げるとイスベルグの表情から緊張感が消えていないことに気づいた。
まだ終わっていないと倉野は直感で理解する。
その瞬間、地面に叩きつけられたデザストルが咆哮した。
「グアアアアアアアアァァァァァ! 許さねぇ許さねぇ! テメェだけは絶対に殺してやる!」
顔から体、両翼まで氷柱が突き刺さっている状態で立ち上がったデザストルは更なる怒りを燃やす。
その様子を上から見ていたイスベルグは魔力の動きを察知し、慌てて口を開いた。
「クラノ! 今すぐその場を離れろ!」
突然の指示に倉野は困惑する。
「え?」
しかし、もう既にイスベルグが危惧した事態は起き始めていた。
「全てを消し炭にしてやるぜ! 炎帝閻魔・爆発連鎖の段!」
デザストルが詠唱した瞬間、その体が爆発したと錯覚するかのような出力の炎を放つ。そして文字通り連鎖的にその爆発が周辺に広がり始めた。
デザストルの場所から円を描くように広がる爆発は建物を吹き飛ばし空間を燃やし、焦げ臭い更地にしていく。
もちろん、その爆発は猛スピードで少し離れていた倉野に襲いかかった。
「クラノ!」
再び上空から声をかけるイスベルグだったが、突然の窮地にただ驚くばかりの倉野には届かない。
0
あなたにおすすめの小説
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。