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Kiss
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端的に事実だけを聞いたリオネとレイチェルは表情を硬直させ言葉を失った。
目の前で倉野の鼓動が止まっている。それは二人にとって受け入れ難いものだった。
もちろんレオポルトにとってもそうだが、彼は自身の感情よりもすべきことを優先する。
「心臓は止まっているがまだ死んだとは限らない。経験則だが、心臓が止まっても適切な処置を施せば助かる可能性はある。ワシが心臓を叩き起こすから、お前さんたちはクラノの代わりに呼吸を」
レオポルトはそう指示を出してから倉野の左胸に両掌を重ねて置いた。そしてそのまま体重を乗せて心臓に強い圧をかける。圧迫と解放を繰り返すことで心臓が止まっていたとしても血液を身体中に送り出すことは可能だ。
血液は酸素を運び、それによって臓器が動き出す。いわゆる心臓マッサージだ。
レオポルトは元軍人。心停止の処置はその時に学んだものだろう。
ショックから立ち直れず立ち尽くしていたリオネだったが、レオポルトが動き出したことで冷静さを取り戻し、先ほどの指示を思い返した。
クラノの代わりに呼吸を、というレオポルトの言葉が意味していることを理解し、彼女はレイチェルに視線を送る。
リオネからの視線に気づいたレイチェルは即座に頷いた。何を言おうとしているのかその瞬間に察したのである。
リオネは何をしようとして、何故レイチェルに伺い立てるような視線を送ったのか。レイチェルは何を察し頷いたのか。
その答えに向かってリオネが動き出す。
右手で倉野の顎を動かし気道を確保したリオネは左手で彼の鼻を塞いだ。そのままリオネは息を大きく吸い込み、自分の唇を彼の唇に重ねる。
そう、リオネが行っているのは人工呼吸だ。緊急時でなければ唇のふれあいに集中できただろう。しかし、そんな場合ではない。リオネは必死に少しでも多くの酸素を倉野の体内に送る。
「死なないで、クラノさん!」
そう言いながら何度も唇を重ねるリオネ。
レオポルトも額から汗を流しながら胸骨を圧迫する。
「死ぬな、クラノ! こんなところで死んでいいわけがないだろう!」
二人の懸命な救命作業を見ていたレイチェルは自分にできることを考えて動き出した。
「わ、私は医師を呼んできます!」
そう言って部屋から出ていくレイチェル。去っていく彼女の横顔を見ていたレオポルトはその表情から焦りと複雑な乙女心を感じ取った。
「ふっ、お前さんもレイチェル嬢もクラノには勿体無いほどの女性だな。ワシが二十年若ければ惚れていたかもしれん。己の感情を捨てるわけでもなく、真っ直ぐに向き合った上で今すべきことが出来る。いいか、クラノ! お前は彼女らの愛に応えなければならない! 死ぬな!」
目の前で倉野の鼓動が止まっている。それは二人にとって受け入れ難いものだった。
もちろんレオポルトにとってもそうだが、彼は自身の感情よりもすべきことを優先する。
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レオポルトはそう指示を出してから倉野の左胸に両掌を重ねて置いた。そしてそのまま体重を乗せて心臓に強い圧をかける。圧迫と解放を繰り返すことで心臓が止まっていたとしても血液を身体中に送り出すことは可能だ。
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リオネは何をしようとして、何故レイチェルに伺い立てるような視線を送ったのか。レイチェルは何を察し頷いたのか。
その答えに向かってリオネが動き出す。
右手で倉野の顎を動かし気道を確保したリオネは左手で彼の鼻を塞いだ。そのままリオネは息を大きく吸い込み、自分の唇を彼の唇に重ねる。
そう、リオネが行っているのは人工呼吸だ。緊急時でなければ唇のふれあいに集中できただろう。しかし、そんな場合ではない。リオネは必死に少しでも多くの酸素を倉野の体内に送る。
「死なないで、クラノさん!」
そう言いながら何度も唇を重ねるリオネ。
レオポルトも額から汗を流しながら胸骨を圧迫する。
「死ぬな、クラノ! こんなところで死んでいいわけがないだろう!」
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