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獅子と雷帝
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レオポルトとエクレール。二人の話を聞いた倉野は、予想していたよりも深い仲なのか、と一瞬戸惑いながらも片膝を着く。
同じようにサウザンドがしゃがもうとしていることに気づいたレインとリオネも膝を着き、頭を下げた。
だが、他の者が体勢を低くしていることなど気にせずにエクレールは話を続ける。
「謁見者の名を聞いた時、まさかとは思ったが・・・・・・本当にお前だとはな」
「覚えていただいていたとは、驚きですね」
「記憶にあるレオポルトとは別人で驚いているのは私の方だ。あの頃のお前は常に目を血走らせていただろう」
エクレールの口から出る思い出話。
レオポルトからすると、尖っていた頃の話は恥ずかしいらしく下唇を噛み、堪える。わかりやすく言うならば黒歴史だったのだろう。
よく考えると『血煙の獅子』なんて二つ名は結構痛いもんな、と倉野は心の中でコメントした。その直後、エクレールの二つ名が『雷帝』であることを思い出し、どっちもどっちだな、とおかしくなる。
「あの戦場に出た頃は、まだ若かったですから」
レオポルトがそう返すと、エクレールは再び鼻で笑った。
「ふっ、確かにそうだな。あの頃は私に敬語を遣うこともなかった。丸くなったどころか、生き方を学んだらしい。死に場所を探すように戦っていたお前からは想像もできなかった現代だな」
「剣や拳では守れぬものがあると知りましたからね」
「なるほどな。その考えに至れる者が一体どれほどいるのか、と頭を抱えるところだ。いいか、レオポルト、剣などいずれ世界から消える」
突拍子もないエクレールの言葉に驚き、レオポルトは顔を上げた。
「・・・・・・エクレール王?」
それは言葉の意味を問うための聞き返しではない。そもそも何の話をしているのか、と聞き返したのだった。
しかし、エクレールはレオポルトの疑問など置いて話を進める。
「一年、二年や十年、二十年後の話ではない。一千年、二千年後の話をしている。その予兆はもう見えているはずだ。剣よりも攻城兵器が強く、魔法もモノによっては数千の兵にも勝る。どうだ、剣がどれほど無力なものか、とわかるだろう。攻城兵器も魔法も所持しているだけで逆らうことのできない時代になりつつある。それを全ての国が所持すればどうなる?」
「・・・・・・互いに消耗し合い、世界単位で見れば停滞、いえ衰退することになるでしょう」
「そうだ。必要なのは武力ではなく政治力だ。が、それは数千年後の話。争いは剣から政治に代わるだろう。言い換えれば、今はまだ剣が必要だということだ。しかし、私は可能な限り剣を・・・・・・兵を消耗させたくない」
「ええ、仰っていることはわかります」
レオポルトがそう答えると、エクレールは眉間にシワを寄せ、頬杖をついてから聞き返した。
「本当にわかっているのか?」
「え?」
「我が国で血煙を立てるな、と言っているんだ・・・・・・獅子よ」
同じようにサウザンドがしゃがもうとしていることに気づいたレインとリオネも膝を着き、頭を下げた。
だが、他の者が体勢を低くしていることなど気にせずにエクレールは話を続ける。
「謁見者の名を聞いた時、まさかとは思ったが・・・・・・本当にお前だとはな」
「覚えていただいていたとは、驚きですね」
「記憶にあるレオポルトとは別人で驚いているのは私の方だ。あの頃のお前は常に目を血走らせていただろう」
エクレールの口から出る思い出話。
レオポルトからすると、尖っていた頃の話は恥ずかしいらしく下唇を噛み、堪える。わかりやすく言うならば黒歴史だったのだろう。
よく考えると『血煙の獅子』なんて二つ名は結構痛いもんな、と倉野は心の中でコメントした。その直後、エクレールの二つ名が『雷帝』であることを思い出し、どっちもどっちだな、とおかしくなる。
「あの戦場に出た頃は、まだ若かったですから」
レオポルトがそう返すと、エクレールは再び鼻で笑った。
「ふっ、確かにそうだな。あの頃は私に敬語を遣うこともなかった。丸くなったどころか、生き方を学んだらしい。死に場所を探すように戦っていたお前からは想像もできなかった現代だな」
「剣や拳では守れぬものがあると知りましたからね」
「なるほどな。その考えに至れる者が一体どれほどいるのか、と頭を抱えるところだ。いいか、レオポルト、剣などいずれ世界から消える」
突拍子もないエクレールの言葉に驚き、レオポルトは顔を上げた。
「・・・・・・エクレール王?」
それは言葉の意味を問うための聞き返しではない。そもそも何の話をしているのか、と聞き返したのだった。
しかし、エクレールはレオポルトの疑問など置いて話を進める。
「一年、二年や十年、二十年後の話ではない。一千年、二千年後の話をしている。その予兆はもう見えているはずだ。剣よりも攻城兵器が強く、魔法もモノによっては数千の兵にも勝る。どうだ、剣がどれほど無力なものか、とわかるだろう。攻城兵器も魔法も所持しているだけで逆らうことのできない時代になりつつある。それを全ての国が所持すればどうなる?」
「・・・・・・互いに消耗し合い、世界単位で見れば停滞、いえ衰退することになるでしょう」
「そうだ。必要なのは武力ではなく政治力だ。が、それは数千年後の話。争いは剣から政治に代わるだろう。言い換えれば、今はまだ剣が必要だということだ。しかし、私は可能な限り剣を・・・・・・兵を消耗させたくない」
「ええ、仰っていることはわかります」
レオポルトがそう答えると、エクレールは眉間にシワを寄せ、頬杖をついてから聞き返した。
「本当にわかっているのか?」
「え?」
「我が国で血煙を立てるな、と言っているんだ・・・・・・獅子よ」
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