異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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貸し借り

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 何故、このタイミングでこんな話をするのだろうと思っていたエクレールの言葉は、全てここに向かっていたのだとレオポルトは察する。
 レオポルトの二つ名を用いて警告するエクレールの表情は苛立っているようにも見えた。先ほどまでレオポルトと昔話をしていたようには見えない。
 そんなエクレールにレオポルトは首を左右に振って答えた。

「もちろんです。この国で争いを起こそうなどとは思っていません・・・・・・こちらからは、ですが」
「こちらからは? お前は何を知っている、レオポルト。我が国で起きている問題のことを言っているのならば、お前が出る幕ではない。いくらでも対処の方法はある。もちろん犠牲は出るが、最小限に抑えることも可能だ。無用な波を立たせることは許さん」

 そう話すエクレールの言葉に、どこか冷たさを感じる倉野。何かを捨てる決定をしているような口ぶりであった。
 倉野よりもエクレールを知っているレオポルトは、その冷たさの正体に気づき言葉にする。

「最小限の犠牲・・・・・・たとえ我が子であろうとも、最小限と言い切るおつもりですか?」

 レオポルトの言葉でようやく気付かされた倉野は思わず口を開く。

「まさか、ノエルさんやクリステラルドさんを見捨てて?」

 自分では独り言程度の声量だったつもりが、存外大きく、エクレールにも聞こえたらしい。エクレールの視線を受けた倉野は慌てて口を塞ぐ。

「人の命に大小はない。我が子であろうとも、一つは一つだ。数千、数万の国民や兵とは比べるまでもない。安い正義感や仲間意識を振りかざすのは、さぞ心地良かろうな」

 エクレールは明らかに、倉野に向けてそう言い放った。
 自分に向けられていると気づいた倉野は、気圧されたように小声で返す。

「そんなつもりは・・・・・・」
「例えば、私が我が子可愛さに、数万の兵を犠牲にしたとしよう。何を失い、何が残る? いいか、お前たちがノエルとどのような関係であろうと、奴はバレンドット王家の血筋。この血からは逃れられん。国のために死ねと王が命じたならば、一縷の疑問も持たずに死ぬのが定めだ。それを伝えるために今回の謁見を許した・・・・・・わかったな、レオポルト」

 エクレールはそう言い切ると、王座から立ち上がった。
 するとレオポルトも即座に立ち上がり、引き止めるように呼びかける。

「エクレール王!」
「・・・・・・なんだ? もう話すべきことは終わった。これ以上、話すことも聞くこともないはずだ」
「覚えておられますか・・・・・・あの時、『貸したもの』を。それを、今返して頂きたい」

 何かを覚悟したようにレオポルトが言うと、エクレールは再び王座に座り、ゆっくり問いかける。

「お前こそ覚えているのか? あの時『借りたもの』は既に返しているはずだ。返せと言うならば、こちらも取り立てることになるぞ」
「ええ、覚悟の上です」
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