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五年越しの告白
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やめろ。先読みするな恥ずかしいだろうが。
<あんまり長く書いてもわかりにくくなるから、本題に入るね。今から私は別れ話をします。理由は他に好きな人ができたから>
確かにそうだったと俺は思い出した。
なんの前触れもなく彩乃は別れ話を切り出してきたのである。
手紙の通り、好きな人ができたから別れて欲しいと言われた。
家族もいない俺にとって彼女の存在は大きかったが、他の男を好きになったと言われてしまえば仕方がない、と別れることを了承したのだ。
脳内に悲しみと切なさが流れ込んでくる。
なんとか冷静さを保って手紙を読み進めた。
<でもそれは嘘です>
嘘?
<好きな人なんてできていません>
どういうことだ?
当時確かにそう話されたし、それを受け入れて別れたんだぞ。
あの時の悲しみはなんだったんだ?
<できたのは子どもです>
頭の中が真っ白になった。
五年前に好きな人ができたと言って別れたのは嘘で、本当は子どもができていた。
突然のことに脳内の容量がいっぱいいっぱいになる。
確かに当時、完全に避妊していたかと怪しい。妊娠する可能性は否定できない。
だが、それならそうと言ってくれればいい。
結婚して家庭を築いていけばいいだけだろう。
それぐらいの覚悟はあったつもりだ。
どういうことだろうと思いながら俺は手紙を読み進める。
<子どもができたって言えば冬至くんは喜ぶかな、困るかな?多分、喜んでくれるよね。結婚しようって言ってくれると思う>
その通りだ。
それがわかってるならどうして。
疑問は尽きない。
<だけど、言えない理由があります。だから全部私のわがまま。もしすぐに見つけても五年後くらいに読んだことにしてください>
手紙はそこで終わっていた。
・・・・・・どう言うことだ。
ちゃんと五年後に読んだけども。
それについては流石と言う他ない。
この棚には今すぐには必要のないものを入れているので触るとしたら引っ越す時くらいだろう。彩乃はそれをわかっていてここに手紙を入れた。
つまり、時間を稼ぎたかったということだろうか。
子どもを産んでからしばらくの時間が欲しかった。
だから、数年は触らないであろう棚に手紙を残したということ。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
図書館の本棚でドミノをしたようになっている。
考えなければならないことと情報が入り混じって思考を停止させた。
どれくらいぼーっとしていただろうか。
我に帰ったのは家のチャイムがなった瞬間だった。
ピーンポーンと安っぽいチャイムが鳴る。
いきなりの音に体を揺らし驚いた。
すぐに返事をして玄関に向かう。
「はーい!今出ます」
そう言いながら玄関のドアを開けると、隣に住んでいる安田さんが立っていた。
安田さんは三十代後半くらいの男性で、いつも作業着を着ている。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだが、その安田さんの隣には五歳くらいの可愛らしい女の子が立っていた。
安田さんに子供いないはずだ。というか独身だ。
というよりも多分童貞だ。推測だけど。
そんなことを思いながら首を傾げていると安田さんが話し始めた。
「どーも。この子が巻島さんを探してたもので連れてきたんすけど」
そう言いながら安田さんは女の子を紹介した。
いや、俺に五歳くらいの女の子の知り合いはいないぞ。
そう言おうと思った瞬間、先ほどの彩乃の手紙を思い出した。
「え」
自分でも間抜けな声を出したと思う。
その瞬間女の子がこう口にしたんだ。
俺はその言葉が自分に向けられることはないと思っていた。
<あんまり長く書いてもわかりにくくなるから、本題に入るね。今から私は別れ話をします。理由は他に好きな人ができたから>
確かにそうだったと俺は思い出した。
なんの前触れもなく彩乃は別れ話を切り出してきたのである。
手紙の通り、好きな人ができたから別れて欲しいと言われた。
家族もいない俺にとって彼女の存在は大きかったが、他の男を好きになったと言われてしまえば仕方がない、と別れることを了承したのだ。
脳内に悲しみと切なさが流れ込んでくる。
なんとか冷静さを保って手紙を読み進めた。
<でもそれは嘘です>
嘘?
<好きな人なんてできていません>
どういうことだ?
当時確かにそう話されたし、それを受け入れて別れたんだぞ。
あの時の悲しみはなんだったんだ?
<できたのは子どもです>
頭の中が真っ白になった。
五年前に好きな人ができたと言って別れたのは嘘で、本当は子どもができていた。
突然のことに脳内の容量がいっぱいいっぱいになる。
確かに当時、完全に避妊していたかと怪しい。妊娠する可能性は否定できない。
だが、それならそうと言ってくれればいい。
結婚して家庭を築いていけばいいだけだろう。
それぐらいの覚悟はあったつもりだ。
どういうことだろうと思いながら俺は手紙を読み進める。
<子どもができたって言えば冬至くんは喜ぶかな、困るかな?多分、喜んでくれるよね。結婚しようって言ってくれると思う>
その通りだ。
それがわかってるならどうして。
疑問は尽きない。
<だけど、言えない理由があります。だから全部私のわがまま。もしすぐに見つけても五年後くらいに読んだことにしてください>
手紙はそこで終わっていた。
・・・・・・どう言うことだ。
ちゃんと五年後に読んだけども。
それについては流石と言う他ない。
この棚には今すぐには必要のないものを入れているので触るとしたら引っ越す時くらいだろう。彩乃はそれをわかっていてここに手紙を入れた。
つまり、時間を稼ぎたかったということだろうか。
子どもを産んでからしばらくの時間が欲しかった。
だから、数年は触らないであろう棚に手紙を残したということ。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
図書館の本棚でドミノをしたようになっている。
考えなければならないことと情報が入り混じって思考を停止させた。
どれくらいぼーっとしていただろうか。
我に帰ったのは家のチャイムがなった瞬間だった。
ピーンポーンと安っぽいチャイムが鳴る。
いきなりの音に体を揺らし驚いた。
すぐに返事をして玄関に向かう。
「はーい!今出ます」
そう言いながら玄関のドアを開けると、隣に住んでいる安田さんが立っていた。
安田さんは三十代後半くらいの男性で、いつも作業着を着ている。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだが、その安田さんの隣には五歳くらいの可愛らしい女の子が立っていた。
安田さんに子供いないはずだ。というか独身だ。
というよりも多分童貞だ。推測だけど。
そんなことを思いながら首を傾げていると安田さんが話し始めた。
「どーも。この子が巻島さんを探してたもので連れてきたんすけど」
そう言いながら安田さんは女の子を紹介した。
いや、俺に五歳くらいの女の子の知り合いはいないぞ。
そう言おうと思った瞬間、先ほどの彩乃の手紙を思い出した。
「え」
自分でも間抜けな声を出したと思う。
その瞬間女の子がこう口にしたんだ。
俺はその言葉が自分に向けられることはないと思っていた。
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