澤檸檬声劇用短編集

澤檸檬

文字の大きさ
2 / 4

復讐

しおりを挟む
義父「そうか、お前ももう二十歳か。おめでとう」

青年「ありがとう。父さんが僕を引き取ってここまで育ててくれたおかげだよ」

義父「あれから十年になるのか」

青年「そうだね。あっという間だったよ」

義父「そうか?長かったようにも感じるし、つい昨日のようにも感じるな」

青年「なんだか年寄りくさいセリフだね」

義父「ふっ、年寄りだからな」

青年「そんな歳じゃないでしょ。それより父さん、こういう時って大切な話をするものじゃないの?」

義父「ん?どういうことだ?」

青年「ほらほら、よくドラマとかであるやつだよ。実は父さんは本当のお父さんじゃないんだ的な」

義父「いや、私が本当の父親ではないことは知っているだろう」

青年「そうだけどさ。なんか、こう驚くような話が聞きたいな、と思ってさ」

義父「驚くような話か。そうだな、驚くかはわからないが、私がお前を引き取った時の話をしようか」

青年「思い出話って余計に年寄りくさいね」

義父「そう言うな。そうだ折角二十歳になったんだから、酒でも飲もうか。ちょっと待ってろ」

青年「うん、そうだね。折角だから一緒に飲もう」

義父「ほら、いいウイスキーだからな氷が溶け切る前に飲むんだぞ」

青年「ありがとういただきます。・・・・・・ん!なんかクセのある味だ」

義父「それがウイスキーだ」

青年「大人の味だねぇ。それで引き取った時の話ってなんだい?」

義父「おお、そうだったな。お前を引き取った理由を話したことはあったかな?」

青年「えっと、僕の本当の父親と知り合いだったんだよね?」

義父「ああ、そうだ。元々知り合いだったからな、当時、家族を失くしたお前を引き取ったんだ」

青年「うん、感謝してる。天涯孤独になった僕を引き取ってくれたんだよね」

義父「お前の本当の父親には世話になったからな」

青年「本当に救われたのを覚えてるよ。家族を亡くした時は絶望のどん底にいたから」

義父「そりゃそうだろうな。家族を失った悲しみはわかる。それにお前は元々、いい生活をしていただろ?何せお前の父親は大企業の社長だったからな」

青年「そうだね。だけど、社長だったせいで父さんも家族も命を落としてしまった。だったらお金も立場もいらないよ。生きててくれたほうが何倍も幸せだ。あ、もちろん今も幸せだよ」

義父「そう気を使わなくていいさ」

青年「本当に幸せだと思ってるよ」

義父「辛い話だが、お前は本当の家族がどうして命を落としたのか知っているのか?」

青年「ああ、僕なりにあの事件のことを調べたよ」

義父「そうか。さぞ悔しく憎いだろうな」

青年「そうだね。許せないと思ってる。復讐したいとも思ってるよ」

義父「その気持ちはわかるぞ。私も同じ気持ちだ」

青年「そこまで思ってくれてるんだね」

義父「当たり前じゃないか。お前の本当の父親は裏切られて全てを失い、一家心中を図った。そしてお前だけ生き残った。そんなお前の気持ちを聞いておきたいと思ったんだ」

青年「裏切った部下たちを許せないよ。本当の父さんは部下たちに裏切られ会社を追い出された。仕事に命をかけていた父さんは全てを失って絶望したんだ。そして心は壊れ、最悪の手段を選んだ。いや選ぶしかなかったんだ。当時の部下たちに全てを壊された。当時の部下たちが僕の家族を殺したんだ」

義父「ああ、その通りだ。人間にはそうするしかないという状況があり、その状況に追い込んだのならそれは殺したのと変わらない」

青年「まだ、当時裏切った部下が誰なのかわかっていないんだけど、調べて復讐しようと思ってる」

義父「そうか・・・・・・私もな、復讐したいと思っている」

青年「父さんも?」

義父「ああ。私も家族を失っているんだ」

青年「その話は聞いたことがあるよ。僕を引き取ってくれる前に結婚していて娘もいたんだよね」

義父「そうだ。命よりも大切な家族だ。だからこそお前の気持ちはよくわかる」

青年「聞いていいのかわからないけど・・・・・・どうして家族を失ったの?」

義父「私も裏切られたのだ。信じていた人にな」

青年「信じていた人?」

義父「ああ、そうだ。その人のためなら何でもできると思っていた。心酔していた。だが、その人にとって私はただの捨て駒でしかなかった」

青年「何があったの?」

義父「つまらない話さ。その人は金を稼ぐために法を犯していた。そしてそれが暴かれてしまい、その罪を私に被せた」

青年「父さんに罪を?」

義父「そして私は逮捕された。犯罪者として報道され、私の家族は周囲の人間に追い詰められた」

青年「報道とかってこと?」

義父「それだけじゃない。親族や友人、職場全ての人間が犯罪者の家族として扱ってくる。そして追い詰められた妻は心を病み、娘と共に命を絶った。その時私がいたのは塀の中だ。無力さと怒りで狂いそうだった。だが、復讐を誓い、ここまで生きてきたのだ」

青年「そっか・・・・・・あれ?でもそれって復讐する相手がわかってるんじゃないの?」

義父「ああ、そうだ。だが、そいつはすでに死んでいたんだ」

青年「それじゃあ、復讐できずに終わってしまったってこと?」

義父「その時はそう思った。だが、復讐する方法が残っていたんだよ」

青年「どういうこと?」

義父「いや、もういいんだよ」

青年「父さん?」

義父「気づかないか?」

青年「何が・・・・・・うっ・・・・・・体が痺れ・・・・・・」

義父「動けないだろう。酒には動けなくなる程度の毒を仕込んである」

青年「ど、どうし・・・・・・て」

義父「私の家族を殺したのがお前の父親だからだよ」

青年「な・・・・・・どういうこと」

義父「私はお前の父親の部下だった。この人にならついていけると思っていた。だがな、お前の父親は私を裏切ったのだよ。私に全ての罪を被せた。そして私は捕まり家族を失った。その後、他の部下に裏切られ全てを失ったようだがな!因果応報とはこのことだ」

青年「くっ・・・・・・」

義父「復讐相手を失い生きる意味をなくした私はお前に出会った。これは復讐だ。あいつのせいで家族を失ったのだ。あいつの家族をこの手で・・・・・・殺す」

青年「やめて」

義父「恨むならば父親を恨め。お前を殺したのは義理の父親であり本当の父親だ」

青年「ぐああああ」

義父「これがお前の求めていた驚く話さ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...