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本編

最終話_応援し隊の誕生-1

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その日、昨日まで学内に陳列・公開されていた記事を受けて、蒼矢ソウヤはやはり幾人かの他学部生との接触に見舞われつつ最終講義まで終えた。
概算、日を追うごとに謁見者数は減少傾向にあるものの、影響はまだまだ大きく、記事の回収・非公開があってもこの先しつこく余波は続くだろうと予想された。

「――なんだかんだ、だいぶあしらい方を会得しちゃってる感あるよな、俺たちも」
「そうだな。マニュアル化してクラスに配ろうか」

講義室を出、屋外出入口へ続く廊下を歩きながら、啓介ケイスケはため息混じりに漏らす。
達観したような物言いに、諒も少し噴き出しながら続けた。

「良いなそれ! まぁまぁ数減らしてるとはいえ、下火になるまでまだ時間かかりそうだし、あってもいいかも」
「一番困るのは"会いに来ただけ"・"見に来ただけ"ってやつかな。そういう無意味なのは本当にやめて欲しいよね…」
「髙城は見世物じゃないっつーの。"お友達になりませんか"くらい言えんのかい」
「いや…勝手に会いに来て友達要求も、だいぶぶっ飛んでると思うけどね」
「確かに! サイコ味を感じるわな」

愚痴とも冗談とも取れる軽口を笑いながら言い合う啓介とリョウの隣で、黙って聞いていた蒼矢がぽそりと言葉を漏らす。

「…よくわからない交友の輪が広がるのは嫌だよ…」

"冗談"と流せていないような呟きに、ふたりははっとした表情で彼を見る。
そして、諒は息をひとつ飲み込み、うつむくその面差しへと顔を傾けた。

「…髙城タカシロ、俺たちは、もうお前の友だちだよな? ただの同級生じゃないよな?」

その大前提を確認するような質問に、蒼矢は振り向いて一寸きょとんとし、僅かに眉を寄せた。

「当たり前だろ。じゃなかったら、食事に誘ったり武道の師範葉月さんに怪我の手当て頼んでない」
「…!」

返答を聞いた諒と啓介は、目を丸くしながら顔を見合わせた。

…そっか。そんな初期から髙城には友だちと認められてたんだ。
…なんか嬉しいな…
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