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本編
第11話_惑わされる想い-4
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「! 陽君、本当にここに居たんだ」
兄の助言通り、中庭のある部屋の縁側に胡坐をかいていた陽を見つけ、苡月は上着を手に近寄っていく。
「寒くないの? そんな格好で中庭なんて…」
「寒くねぇ! 指だけ冷やしてんだっ」
へそを曲げたままの陽に、苡月は彼のスタジャンを羽織らせてやる。
背中にぬくもりを感じ、かえって冷えを催したか、陽はぶるっと身を震わせた。
「くそー、やっぱさみーわ。いよいよ冬本番かな」
「そうだね…花も葉っぱも無くなっちゃうから、虫も見掛けなくなってきたしね」
「や、まだいるぞ。近頃なんだかブヨみたいなのが視界に入るようになって来てよ。あいつら、こっちが苦手だとわかっててチラチラチラチラ俺をコケにしくさりやがって…」
苛立ちを紛れさせながらぶちぶちと垂れる陽の文句を聞き、苡月は中庭を見渡す。
植えられた低木の葉は概ね落ち、空っぽのプランターが整然と並ぶ物寂しい景色の中、冬支度を始める木々が冷たい風に揺れている。
「んー、見当たらないけどなぁ」
「お前の目は節穴か? …! ほら、またっ…、あーうぜぇ!!」
首をひねる苡月の隣で、陽は顔をしかめながら両腕を空中に振り回す。
「あたたっ…」
「陽君、安静にしてないと…」
患部を押さえる陽を気遣いつつ、苡月は頭上を見上げる。
「!」
薄闇の中、部屋の中の明かりに照らされて、小さな黒い点がひとつ、細かく翅を動かしながら空を舞っていた。
苡月は虚を突かれたような面持ちで、寒々しい背景に不釣り合いなその姿を目で追った。
「…蝶々? こんな季節に…冬越ししてるはずなのに」
「? なんだそりゃ」
「蝶々はね、冬の間はご飯を食べないで、春になるまで葉っぱの裏とかにとまって、じっと動かずに待ってるんだよ。"冬越し"っていうんだ」
「へー! じゃ、今飛んでた奴はなんだ? イレギュラーってやつか?」
「うーん…わかんない。そうなのかなぁ」
陽と苡月はふたり揃って首を傾げながら、蝶が飛び去っていった空を見上げていた。
兄の助言通り、中庭のある部屋の縁側に胡坐をかいていた陽を見つけ、苡月は上着を手に近寄っていく。
「寒くないの? そんな格好で中庭なんて…」
「寒くねぇ! 指だけ冷やしてんだっ」
へそを曲げたままの陽に、苡月は彼のスタジャンを羽織らせてやる。
背中にぬくもりを感じ、かえって冷えを催したか、陽はぶるっと身を震わせた。
「くそー、やっぱさみーわ。いよいよ冬本番かな」
「そうだね…花も葉っぱも無くなっちゃうから、虫も見掛けなくなってきたしね」
「や、まだいるぞ。近頃なんだかブヨみたいなのが視界に入るようになって来てよ。あいつら、こっちが苦手だとわかっててチラチラチラチラ俺をコケにしくさりやがって…」
苛立ちを紛れさせながらぶちぶちと垂れる陽の文句を聞き、苡月は中庭を見渡す。
植えられた低木の葉は概ね落ち、空っぽのプランターが整然と並ぶ物寂しい景色の中、冬支度を始める木々が冷たい風に揺れている。
「んー、見当たらないけどなぁ」
「お前の目は節穴か? …! ほら、またっ…、あーうぜぇ!!」
首をひねる苡月の隣で、陽は顔をしかめながら両腕を空中に振り回す。
「あたたっ…」
「陽君、安静にしてないと…」
患部を押さえる陽を気遣いつつ、苡月は頭上を見上げる。
「!」
薄闇の中、部屋の中の明かりに照らされて、小さな黒い点がひとつ、細かく翅を動かしながら空を舞っていた。
苡月は虚を突かれたような面持ちで、寒々しい背景に不釣り合いなその姿を目で追った。
「…蝶々? こんな季節に…冬越ししてるはずなのに」
「? なんだそりゃ」
「蝶々はね、冬の間はご飯を食べないで、春になるまで葉っぱの裏とかにとまって、じっと動かずに待ってるんだよ。"冬越し"っていうんだ」
「へー! じゃ、今飛んでた奴はなんだ? イレギュラーってやつか?」
「うーん…わかんない。そうなのかなぁ」
陽と苡月はふたり揃って首を傾げながら、蝶が飛び去っていった空を見上げていた。
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