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本編
第15話_心そぞろな同棲生活_1
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その日の夕方遅く、一度楠瀬邸へ戻って荷物をまとめた苡月は、楠瀬家・花房家双方の合意のもと、無事花房酒店へと居を移した。
それぞれの事情から、陽と苡月が身を置くことで手狭になった花房家は、全員分の寝る場所の確保が困難になり、影斗の提案で、大柄な烈が押し出される形で実家から髙城家へ一時移動することとなった。
仕事を終えた烈は、準備を整えて挨拶に来た苡月と入れ替わるように勝手口から家を出、数日分の衣類を詰めたスポーツバッグを手に、夕暮れの道を歩きだす。
なじみ深い道のりを進み、ものの数分で着いた高城邸は、いつもの在・不在の不明瞭な薄暗い外観から少しばかり様相を変え、門と玄関に明かりが灯っていた。
「…!」
玄関を前にして烈は一旦立ち止まり、面持ちを正し呼吸を整えてから、呼び鈴を鳴らす。
ほどなくしてドアが開き、中からブランケットを肩にかけた蒼矢が顔を出す。
「いらっしゃい。一日お疲れ」
「…おう…!」
目元を緩める彼の微笑に、烈の胸がひとつ大きく鼓動する。
「…今日からお世話になります!」
玄関へ入ると、開口一番烈はそう真っ先に一礼した。
かしこまった挨拶と深く腰を折るその所作に、ふり向いた蒼矢はやや面食らったものの、すぐに表情を崩す。
「うん、よろしく」
「悪いな、成り行き上こうなっちまって」
「気にするな、お前や珠代おばさんの方がよほど大変なんだから」
「親父さんは?」
「2日前から入ってる出張が延長したらしくて、しばらく帰ってこない予定になった。話は通してある、好きに使えばいいって」
「そっか。良かった…」
烈の口から、つい本音が飛び出してしまった。
"良かった"というのは、蒼矢の父親から許しが得られたことよりも、父親が長期不在になったことで接触機会がなくなった安堵からくるものの方が強かった。
それぞれの事情から、陽と苡月が身を置くことで手狭になった花房家は、全員分の寝る場所の確保が困難になり、影斗の提案で、大柄な烈が押し出される形で実家から髙城家へ一時移動することとなった。
仕事を終えた烈は、準備を整えて挨拶に来た苡月と入れ替わるように勝手口から家を出、数日分の衣類を詰めたスポーツバッグを手に、夕暮れの道を歩きだす。
なじみ深い道のりを進み、ものの数分で着いた高城邸は、いつもの在・不在の不明瞭な薄暗い外観から少しばかり様相を変え、門と玄関に明かりが灯っていた。
「…!」
玄関を前にして烈は一旦立ち止まり、面持ちを正し呼吸を整えてから、呼び鈴を鳴らす。
ほどなくしてドアが開き、中からブランケットを肩にかけた蒼矢が顔を出す。
「いらっしゃい。一日お疲れ」
「…おう…!」
目元を緩める彼の微笑に、烈の胸がひとつ大きく鼓動する。
「…今日からお世話になります!」
玄関へ入ると、開口一番烈はそう真っ先に一礼した。
かしこまった挨拶と深く腰を折るその所作に、ふり向いた蒼矢はやや面食らったものの、すぐに表情を崩す。
「うん、よろしく」
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「気にするな、お前や珠代おばさんの方がよほど大変なんだから」
「親父さんは?」
「2日前から入ってる出張が延長したらしくて、しばらく帰ってこない予定になった。話は通してある、好きに使えばいいって」
「そっか。良かった…」
烈の口から、つい本音が飛び出してしまった。
"良かった"というのは、蒼矢の父親から許しが得られたことよりも、父親が長期不在になったことで接触機会がなくなった安堵からくるものの方が強かった。
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