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本編
第3話_可憐な美青年-1
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数日後、通う国立大のキャンパス敷地内を、午前の講義と資料の取りまとめを終えた蒼矢はひとり、食堂へと歩いていた。
南向きがおおむねガラス窓で採光のよく入る明るい食堂内は、少し昼食時を外れた時分とあって人はまばらで、スムーズにパンとスープをオーダーし、外観が見渡せる窓際の席へ腰かけた。
パンを口に運びながらテキストをめくっていると、横のガラス窓が軽く叩かれる音がする。振り向くと、黒いレザージャケット姿の男が窓越しのすぐ横に立っていた。
「…影斗先輩!」
窓越しにニッと笑ってみせると、男は入り口まで回って蒼矢のもとへ辿り着く。
「よーっす、また来ちゃった」
「…一言下さいよ、こっちにだって多少の心の準備というものがあるんです」
「嬉しいこと言ってくれるね、4年の付き合いを経てもなお、俺へのときめきを感じてくれると」
「そういうところです。内も外も、もっと忍んで下さい。ただでさえ先輩、目立つんですから…」
「!? 馬鹿言ってんなって…誰が目立つって? お前にだけは言われたくねぇ…!!」
顔を合わせて早々に茶化し始める彼を、蒼矢はむっとして見返したが、そのぼやきを受け影斗は額を押さえながら背をのけぞらせた。
大型バイクを乗り回し、長身でイケメンを自認する美形男子・宮島 影斗だったが、蒼矢もまた彼とは別のベクトルで人目を惹く容姿の持ち主だった。
幼少期から女子に間違われることを幾星霜も重ねてきた彼は、二十歳を迎える歳になった今、背格好と骨格に男性らしさが表れてきたものの顔立ちはいい具合に綺麗に成長し、"美男"というよりは"美人"になってしまった。面差しに似つかわしくない黒縁眼鏡になんとなく誤魔化されているが、それでもその群を抜いた容貌と、儚げでいて均整の取れたスタイルは多くの人の視線を集めがちで、普段の大学生活ではさほど難は無いが入学式の時はかなりの注目を浴び、しばらく在校生たちのSNSで目撃情報が飛び交うほどであった。
残念ながら、彼自身にとってはそれら全てがコンプレックスであり、悩みの種でしかなかったが、高校時代の先輩である影斗にはそんな内面も含めて全てがお気に入りで、別々の大学に行ってもこうしてたまに会いに来ては、朴念仁な蒼矢をからかって反応を見て楽しむという、彼なりの愛情表現を注いでいる。
南向きがおおむねガラス窓で採光のよく入る明るい食堂内は、少し昼食時を外れた時分とあって人はまばらで、スムーズにパンとスープをオーダーし、外観が見渡せる窓際の席へ腰かけた。
パンを口に運びながらテキストをめくっていると、横のガラス窓が軽く叩かれる音がする。振り向くと、黒いレザージャケット姿の男が窓越しのすぐ横に立っていた。
「…影斗先輩!」
窓越しにニッと笑ってみせると、男は入り口まで回って蒼矢のもとへ辿り着く。
「よーっす、また来ちゃった」
「…一言下さいよ、こっちにだって多少の心の準備というものがあるんです」
「嬉しいこと言ってくれるね、4年の付き合いを経てもなお、俺へのときめきを感じてくれると」
「そういうところです。内も外も、もっと忍んで下さい。ただでさえ先輩、目立つんですから…」
「!? 馬鹿言ってんなって…誰が目立つって? お前にだけは言われたくねぇ…!!」
顔を合わせて早々に茶化し始める彼を、蒼矢はむっとして見返したが、そのぼやきを受け影斗は額を押さえながら背をのけぞらせた。
大型バイクを乗り回し、長身でイケメンを自認する美形男子・宮島 影斗だったが、蒼矢もまた彼とは別のベクトルで人目を惹く容姿の持ち主だった。
幼少期から女子に間違われることを幾星霜も重ねてきた彼は、二十歳を迎える歳になった今、背格好と骨格に男性らしさが表れてきたものの顔立ちはいい具合に綺麗に成長し、"美男"というよりは"美人"になってしまった。面差しに似つかわしくない黒縁眼鏡になんとなく誤魔化されているが、それでもその群を抜いた容貌と、儚げでいて均整の取れたスタイルは多くの人の視線を集めがちで、普段の大学生活ではさほど難は無いが入学式の時はかなりの注目を浴び、しばらく在校生たちのSNSで目撃情報が飛び交うほどであった。
残念ながら、彼自身にとってはそれら全てがコンプレックスであり、悩みの種でしかなかったが、高校時代の先輩である影斗にはそんな内面も含めて全てがお気に入りで、別々の大学に行ってもこうしてたまに会いに来ては、朴念仁な蒼矢をからかって反応を見て楽しむという、彼なりの愛情表現を注いでいる。
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