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本編
第3話_新たに選ばれし者-2
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陽はうつむいたまま続ける。
「平気だし割り切れてるけど、近くて遠い存在になっちまったみたいで、さみしい。もう色々助けてもらえないんだなーって思うと、不安だし」
「…そうだな」
「影兄に発破もかけられたし、踏ん張りどころだからしっかりしなきゃって思うんだけど、でも…しばらくテンション下がっちまうのは許して欲しい」
「いいよ、全然。俺たちも同じだから」
ぽつぽつと漏れる胸の内を聞き、隣に座る蒼矢が静かに同調して頭に優しく手を置くと、陽は少し瞳を潤ませた。
泣きたくなるのを必死にこらえているような彼の面持ちを見、烈も軽く息をついてから声をかけた。
「俺らみんな、葉月さんに育ててもらったようなもんだからなぁ…漠然とした不安は俺らもあるし、たぶん影斗もだ。蒼矢の言うとおり、お前だけじゃない、みんな同じだ…そこに引け目感じることはねぇよ」
「うん…」
「でも、こうなっちまったもんは仕方ない、時間は元には戻らねぇんだからな。…気持ち入れ替えてやってくしかねぇ」
「うん…」
小さいながらも頷き返す陽へそう諭し、烈は葉月の言葉を借りつつ、すこし声色を明るく続けた。
「開いちまった穴は大きすぎるけど、まだ4人動けるし、蒼矢も俺も『後発』まで発現出来てるし、きっと今までにないくらい"欠け"のリスクは低くなってる。なんとかなるって。…また全員揃うまで、4人で乗り切ってこうぜ」
「…次の『エピドート』って、苡月なんだろ?」
すると陽はふとそう言い、顔をあげて烈を見返した。
思わぬ切り返しに、励まそうとした烈は顔が凍ってしまい、蒼矢も目を見張った。
彼らの表情で察した陽は、再び視線を下げる。
「…やっぱそうなんだ」
「葉月さんから聞いたわけじゃないのか?」
「うん、なんとなくそう思ってただけ。あいつもうすぐ誕生日じゃん? 次で15になるし」
「…! そうだったのか…」
烈と蒼矢は苡月の誕生日までは知らず、前日葉月が言っていた推論のとどめになるような事実を聞かされ、驚愕する。
「それ知ってたから、親ごと田舎に移住したのに、あいつだけすげぇドンピシャなタイミングで帰ってきたなって、ずっと思ってたんだ。そこにきて月兄の引退だろ? …もうそれっきゃないじゃん、てさ」
そして、陽がなにも情報を与えられずとも、自分なりに推測していたことにも驚かされていた。
ふたりから素直に感心されても、陽は表情が沈んだままだった。
「それでも、まさかなーと思ってたんだ…ただの偶然だって思いたい自分がいた。俺、勘良くねぇ方だからさ。どうせいつもみたいに、思い過ごしだろーって」
「陽…」
「でも、…そっか。今回は当たっちまったんだ」
軽い口調で話すものの、陽の声色は明るさを欠かし、まとう空気は重かった。
「平気だし割り切れてるけど、近くて遠い存在になっちまったみたいで、さみしい。もう色々助けてもらえないんだなーって思うと、不安だし」
「…そうだな」
「影兄に発破もかけられたし、踏ん張りどころだからしっかりしなきゃって思うんだけど、でも…しばらくテンション下がっちまうのは許して欲しい」
「いいよ、全然。俺たちも同じだから」
ぽつぽつと漏れる胸の内を聞き、隣に座る蒼矢が静かに同調して頭に優しく手を置くと、陽は少し瞳を潤ませた。
泣きたくなるのを必死にこらえているような彼の面持ちを見、烈も軽く息をついてから声をかけた。
「俺らみんな、葉月さんに育ててもらったようなもんだからなぁ…漠然とした不安は俺らもあるし、たぶん影斗もだ。蒼矢の言うとおり、お前だけじゃない、みんな同じだ…そこに引け目感じることはねぇよ」
「うん…」
「でも、こうなっちまったもんは仕方ない、時間は元には戻らねぇんだからな。…気持ち入れ替えてやってくしかねぇ」
「うん…」
小さいながらも頷き返す陽へそう諭し、烈は葉月の言葉を借りつつ、すこし声色を明るく続けた。
「開いちまった穴は大きすぎるけど、まだ4人動けるし、蒼矢も俺も『後発』まで発現出来てるし、きっと今までにないくらい"欠け"のリスクは低くなってる。なんとかなるって。…また全員揃うまで、4人で乗り切ってこうぜ」
「…次の『エピドート』って、苡月なんだろ?」
すると陽はふとそう言い、顔をあげて烈を見返した。
思わぬ切り返しに、励まそうとした烈は顔が凍ってしまい、蒼矢も目を見張った。
彼らの表情で察した陽は、再び視線を下げる。
「…やっぱそうなんだ」
「葉月さんから聞いたわけじゃないのか?」
「うん、なんとなくそう思ってただけ。あいつもうすぐ誕生日じゃん? 次で15になるし」
「…! そうだったのか…」
烈と蒼矢は苡月の誕生日までは知らず、前日葉月が言っていた推論のとどめになるような事実を聞かされ、驚愕する。
「それ知ってたから、親ごと田舎に移住したのに、あいつだけすげぇドンピシャなタイミングで帰ってきたなって、ずっと思ってたんだ。そこにきて月兄の引退だろ? …もうそれっきゃないじゃん、てさ」
そして、陽がなにも情報を与えられずとも、自分なりに推測していたことにも驚かされていた。
ふたりから素直に感心されても、陽は表情が沈んだままだった。
「それでも、まさかなーと思ってたんだ…ただの偶然だって思いたい自分がいた。俺、勘良くねぇ方だからさ。どうせいつもみたいに、思い過ごしだろーって」
「陽…」
「でも、…そっか。今回は当たっちまったんだ」
軽い口調で話すものの、陽の声色は明るさを欠かし、まとう空気は重かった。
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