ガイアセイバーズ9 -萌える若葉を摘む獣-

独楽 悠

文字の大きさ
75 / 109
本編

第8話_二点同時戦闘-8

しおりを挟む
一方、アキラが転送したくすのき神社の最寄駅から2駅離れた地点で、数分遅れて別の『転異空間』が造られる。
『転異空間』を造成した蒼矢ソウヤはやはり単独で転送し、日常から隔絶されたその『狭間』に降り立つ。

目を開けると、下方には青い水面が果てまで広がり、その中に巨大な氷塊がぽつぽつと浮かんで、わずかに揺れ動いていた。
辺りには細かな氷の粒が漂い、空気中を青白く漂う微細な粒子に満たされた視界は少しかすんでいた。

まるで北極か南極のような極寒の光景のなか、蒼矢アズライトは見定めたようにある一点だけを見据える。
宙に浮き、視線を固めたまま動かずにいると、やがて正面の水面が泡立つ。

現れた侵略者[カイリ]は、体躯をずぶずぶと水域から揚げ、脚先まで出すと水面に足裏を落とす。
ひとの形に酷似してはいるものの、ひとならざるほどの巨躯で、青緑の皮膚に覆われ、全身には波紋様を走らせていた。
四肢の指間には薄く透き通った膜が張り、脚の間から水棲哺乳類のような太い尾を生やす風貌は、さながら"海の化身"のようだった。

長くうねる白髪から水滴を滴らせ、顔にはりつくそれをかきあげると、アズライトを蔑むように睨んだ。

「手間取らせおって、『餌』風情が。本来であれば姿さえ目にもしたくないところ、こうして足労してやったのだ。われの時間をいたずらに損なわせるな」

[浬]の顔貌は憎悪に満ち、肌に刺さるほどの敵意を向けてくる。

「当然、わかっているだろうな? この我が『下等生物』ごときにここまで出向いた理由が。深い恩情をもってうぬの最期を見届けてやるのだ、感謝するがいい」

『現実世界』での執拗な追跡から、明らかな標的意識を向けられていることを自認するアズライトは、特段表情は変えずに[敵]の口上を受け入れていた。
[浬]を静かに見据えたまま、身体の前に大剣の装具『氷柱ツララ』を呼び出す。

遣い手の姿を透かす儚い見目でありながら、壮麗で神々しいその得物を見、[浬]は片眉をあげ鼻を鳴らした。

「…ふん、抗うか。せいぜい足掻くがいい、我に面した時既に、汝の死地は決められている。この場から逃れられると思うな、罪深きものよ」

[浬]はそう言い捨てると、掌に青い三叉槍を造りあげる。
片手に携えたそれを脇に払うと、アズライトへ向けて足裏で水面を蹴る。
同時に、アズライトも『氷柱』を両手で構えて踏みこみ、[浬]へ真正面から当たっていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

処理中です...