ガイアセイバーズ6 -妖艶の糸繰り人形-

独楽 悠

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本編

第6話_鮮彩なる金色の瞳-1

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風の加護を受けたサルファーは、蒼矢アズライト救出のため、地上から水中へと沈んだ地点からほぼ垂直に降下していた。
地上で待つ葉月エピドートが言っていた通り、彼の防御壁に護られる身体は濡れもせず地上と何ら変わりなく動けていて、風の壁は水中を渦巻いて回転しながら進み、少しずつ、確実に彼を深みへと連れていく。

水中はどこまで潜っても鮮やかな青みを帯び、気色悪さ・不気味ささえ感じる。

…本当にこの下に、あお兄いるんだろうな…

あまりに変わり映えしない景色が続き、不安を覚えかけた頃、足許に黒い影がぼんやりと見えてきたことに気付く。

「…!」

降下を止め、目を凝らす。素でも視力の良い彼の両眼が、深みにうごめく何かを捉えた。
思わず漏らしそうになった声を寸止めし、そのおぞましい光景に目を見張る。

揺らめく水の向こうには、巨大な鯰のような[侵略者]が、緩慢に体躯をくねらせながら大きな口をもごもごと動かしていた。
口からはアズライトの上半身だけがはみ出していて、仰向けに水中に漂っている。意識があるようには見えず、目は閉じ、中途半端に開いた唇からは小さな空気の泡が漏れ出している。
彼の身体をしゃぶる[侵略者]の口端からは、時おり太く長い舌が伸び出していた。舌はアズライトの胸や脇を執拗に撫ぜ、やがてその顎が上向き口からは大きな空気が漏れ、身体がぴくぴくと震える。[侵略者]は痙攣する彼を咥えたまま喉の奥を動かし、舌を再び口腔へとしまい込む。

「っ…」

その凄惨さを前に、サルファーの感情は一気に昂るが、飛び出しそうになる身体を片隅の理性がなんとか食い止めた。

…駄目だ、落ち着けっ…! 今は俺ひとりなんだっ…!!

水中に入ってからあえて、エピドートとは言葉を交わしていない。おそらく訴えかけたところで、[侵略者]を視界に捉えた今、通信は遮断されているだろう。
幸い[侵略者]はアズライトに夢中で、サルファーの気配には気付いていないようだった。
噴き出そうな怒りを押し殺し、心を鎮め、標的の動きを今一度観察する。

アズライト・・・・・の体は、[侵略者]と完全にくっついちまってる…どう引き剥がせばいい?
…引きずり出すか、口をこじ開けるか…

おそらく最低限の攻撃を与えないとアズライトを助け出せないと踏んだサルファーは、[侵略者]の表皮を視る。

…水中で自由に動けるアズライトは、少なくとも抵抗はしたはずだ。でも、[奴]が傷付いてる様子は無ぇ…
…装具が通らなかった…?
…どうやって攻撃したんだ? 裂こうとしたのか、刺したのか…

「……っ!」

サルファーは細かく首を横に振り、自身の手に握られる装具を見つめた。

…わからねぇことをいくら考えても無駄だ。やってみるしかねぇ…!
…『水面みなも』より『閃光せんこう』の方が、攻撃力は確実に上だ。
…必ず攻撃は通る!!

片手ずつ構えていたふた振りの『閃光』を、両手にまとめて持つ。
刀身がお互いに巻きつき合い、切っ先まで縄のようにひとつになっていく。
螺旋状に融合したひと振りの『閃光』を両手で構え、サルファーは意を決する。

…エピドート、俺を護ってくれよ!!
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