ガイアセイバーズ6 -妖艶の糸繰り人形-

独楽 悠

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本編

第8話_翻弄される憧れ-3

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葉月ハヅキの呼び出しを受けたアキラが到着し、場所を蒼矢ソウヤの眠っていた2階寝室へ移し、昨日『転異空間』で起こったあらましについて、3人で情報の擦り合わせをした。
苡月イツキへは引き続き蒼矢の具合を診るとし、2階へ来る以外は自由にしていいと伝えた。

「良かったよ、あお兄…具合悪くなったりしてなくって」
「ああ。心配かけて悪かった」
「起き抜けに負担かけるから、手短に簡潔に話そうね。まず、ふたりとも[侵略者]には遭遇したんだよね?」
「うん、あの大ナマズな。[異形]は俺は見てねぇ気がする。蒼兄は?」
「池の中を満たしていたあの水が、どうやら[異形]だったらしい」
「……!」
「えぇっ!? じゃ、あの下全部[異界のもの奴ら]の領域だったってことか!?」

頷く蒼矢を見、陽は想定外の事実に目を見張り、葉月は表情を強張らせた。

「俺が体感した限りでは、潜れはしますが、浮上は[水の異形]に妨害されました。…装具があればある程度は動けましたので、地上へ戻ることは不可能ではなかったと思いますが」
「…危なかったね…本当に。妨害以外の行動は?」
「…特には。水流を変化させる以外の能力は無いようでした」
「属性は調べられたのか? [異形]は水で確定だろうけど、[侵略者ナマズ]の方は?」
「…悪い、『索敵』する余裕は無かった」
「そっか…そりゃそうだよな…」

陽は蒼矢を助け出した時の光景を思い出し、やや落胆の表情を見せながらもすぐ納得した。

「俺が攻撃した時も、蒼兄回収してすぐ離れたからか攻撃仕返してこなかったし、どんな技使ってくるか見れなかったな。でも、見るからに水属性っぽかったなー。魚だし!」
「そのあたりは予測までにしておいた方が良さそうだね。近い内に再戦があるだろうし、なんとか『索敵』出来る状況に持ち込まないとね」
「どうやって[奴]を誘い出したらいいんだ?」
エピドートの防御壁があれば干渉されないことを陽が証明してくれたから、地上へ誘い出すよりやっぱり中へ入って、[侵略者]へ集中攻撃した方が良いだろうね。蒼矢にも、次は風の壁を造るからね」
「はい、ありがとうございます」

出来る限りの情報共有を済ませ、話が終わろうとする時に、葉月があぁと気付いて蒼矢へ振り向いた。

「そういえば…君、昨日[侵略者]からどこかに傷を受けた記憶は?」
「…傷、ですか?」

蒼矢が首を傾げてみせる中、陽も掌に拳をのせた。

「ああ、あの傷! 蒼兄、太腿の内側に虫刺されみたいな新しい傷があったんだよ」
「…太腿に…?」
「ごめんね、昨日気を失ってる間に体を見せてもらったんだ。…傷に覚えは無いかな?」
「…ありません。傷があること自体、気付いてませんでした」
「…やっぱ知らねぇ内に、虫にでも刺されたんだって。痒くなるような悪いじゃなくて良かったな!」
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