ガイアセイバーズ6 -妖艶の糸繰り人形-

独楽 悠

文字の大きさ
39 / 62
本編

第12話_夜明けの種明かし-1

しおりを挟む
次の日の早朝、明るむ景色の中に本来の薄灰色の外観を取り戻す大学学生寮近くの駐車場へ、一台のミニバンが滑り込む。
夜間の終わらない喧騒さから変わり、さすがに閑散とした空気感をたたえる建物の一室へ、ぱたぱたと早足の駆ける音が近付く。

勝手知ったる者らしく、短い間隔で軽いノックをし、部屋の主から反応を返される前にドアを開けた。

「――影斗エイト!!」

息を切らし、緊迫した面持ちで自分を見つめる葉月ハヅキへ、暗がりの中フローリングに上裸のまま寝転がっていた影斗が、ドア向こうの照明に目をくらませながらじろりと視線を送り返した。

「…んだよ。いねぇ・・・っつっただろうが…来んなよ」

不機嫌さを隠しもしない彼の姿に一旦安堵したのか、葉月は胸に手を当てながら息をつくと、部屋へ入ってドアを閉める。
そして眉を寄せ、いつもの彼らしくもなく表情に苛立ちと憤りをにじませた。

「留守電入れたのにすぐ返してくれないし、やっと連絡くれたと思ったらひと言、ふた言しか言わないで切るし…、どれだけ心配したか…!」
「必要最低限の情報はくれてやっただろ」

硬い床で節々を痛めたか、少し顔を歪めながら身体を起こし、影斗は長い脚を葉月の足元へ投げ出す。
そんな様子の彼へ、葉月は以前険しい面差しを向けていた。

「怪我は?」
「ねぇよ」
「何かされたりは? 危害を加えられかけたとか」
「俺がそんな下手こくかよ」

吐き捨てるように返し、影斗はぎろりと葉月を睨む。

「…なんだ? "あれ"は」
「…留守電に残した通りだよ。まだ何も判ってないけど、[侵略者彼ら]に操られてることは間違いないだろう」

そう、予測段階の解答を返すにとどまった葉月は彼の足元へしゃがみ、再び息をついた。

「とにかく無事で、本当に良かったよ…こっちは苡月イツキが泣かされたり、レツが襲われたり、全部後手後手になってしまってて…」
「……ふぅん」
「手をこまねいている間に、また見失って。あては無かったけど…おそらく次はだろうと思ったんだ」
主力狙い・・・・ならな。…今頃操ってる[あっち]も泡食ってんじゃねぇか? "想定外"だったってな」
「…顛末が知りたい。どうやって無事"彼"をやり過ごしたんだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...