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本編

第15話_凍てつく刃-3

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影斗オニキスがやや睨みをきかせながら、沈黙したままのロードナイトへ振り向く。

「――さっき、装具にダメージ喰らわせたみたいだったな。ありゃ『灼熱』の効果があってのもんだよな?」
「…わかんねぇ。咄嗟に出ちまっただけだから…でも、あの時は確かに灼熱属性だった」
「あの得物だけでも封じられりゃ、かなりの戦力ダウンが見込める。偶然を必然にしろ」
「出来ればアズライトに影響無い程度に抑えて欲しい。…装具に何かあったら、彼自身がどうなるかわからない」
「…了解」

ふたりからのわりと無茶な注文を受け、ロードナイトはやや自信無さ気に頷く。

再び向かってきた蒼矢アズライト葉月エピドートへ狙いを定めるも、ロードナイトが間に割り入って行く手を阻む。

「壁を張れ! 『灼熱』でいる内は、君自身にはアズライトの属性攻撃は効かないはずだ…上手く切り替えて、装具を無効化するんだ!」

脳内で響くエピドートの指示に、ロードナイトは言われた通り防御壁を張り、氷柱を振るわれた隙に彼の懐へ飛び込み、大剣を操る手首を握った。
氷気が灼熱の壁に遮られ、蒸発する音が耳にうるさく響く中、至近距離からその殺意を帯びる面差しへ訴えかける。

「アズライト…っ、蒼矢、目を覚ませ!!」

感情が昂って手のひらに力がこもり、掴まれるアズライトの手首が高温に焦がされる。
アズライトの眼が細められ、眉が歪む。

「…っ!! ごめっ…」

はたと気付いたロードナイトが青くなり、動揺して握る手を緩めたところをアズライトは素早く振りほどき、その鳩尾に蹴りを見舞った。
思い切り蹴飛ばされたものの、ロードナイトはなんとか受け身を取って体勢を立て直したが、顔面はいまだ蒼白のまま固まっていた。
放心状態になってしまっている彼の前にエピドートが暴風の壁を張り、アズライトを一旦退ける。

「ロード…!!」
「……駄目だ、…できねぇ…っ…!」

極度の緊張と興奮で、息をあげながら途切れとぎれに漏らす彼へサルファーが遠くから野次を飛ばす。

「弱音吐いてんじゃねぇよ!! 他誰も相手に出来ねぇんだぞ!?」
「うるせぇわかってる!!」

怒鳴り返しながらも、ロードナイトは言いようもない恐怖に声を震わせる。

…今の俺の『灼熱』じゃ、上手く加減できる気がしねぇ…
…一歩間違ったら、『氷柱』も、『アズライト』もどうにかしかねない。
……俺のこの手で、蒼矢を…っ…!!

「……」

アズライトが正気に戻る様子は無く、セイバーそれぞれが緊迫した心境を抱える中、オニキスはひとり、状況を観察しながら新たに思考を張り巡らせていた。

「…作戦変更だ。やっぱり操られてるこいつをこのまま相手にしてても、埒あかねぇわ」
「…そうだね…仮にロードが戦力を落とせたとしても、アズライトの意識が元に戻ることはない…力でねじ伏せただけで、状況は変わらないだろう」
「先に[侵略者]をなんとかすれば、突破口が見える。逃げた魚を追うぞ」
「わかった。…でも…」

オニキスの言にエピドートは同意するが、その顔は曇る。
[侵略者]を先に討伐するにしても、アズライト相手にも人員を割かなければならない状況で、水属性と予想されている[霆蛇テイダ]に有効な属性を持つのは『風・雷』のエピドートしかいない。
しかし、ふたり同じ思考回路と思われていたところ、オニキスは聞き流すように続けた。

「…いや、[侵略者あっち]はロードに行ってもらう」
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