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本編
第15話_凍てつく刃-6
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「っ!!」
豪速でぶつかってきた氷柱の切っ先を鉤爪を交差させて防いだものの、速度と装具の重量に圧し負け、影斗の身体が大きく弾かれる。
あえなく無防備になる彼へ、追撃の氷の刃が大量に浴びせかけられた。
「ぐぁっ…!!」
全身を貫かれ、短く声をあげた後、オニキスは自由落下していく。
蒼矢はその墜落地点へ向けて飛んだが、前方から光が照射され、視界を奪われてその挙動を止める。
咄嗟に目眩まし攻撃を見舞った陽が、二人の間に入るように『閃光』を構えて立った。
受け身無しで文字通り地に堕ちたオニキスが、面を歪め、腕を震わせながら上体を起こす。
「…っ…、…ナイスタイミングだ。ちったぁ使えるじゃねぇか」
「軽口叩いてる場合かよぉっ…!! やばいよ、毒霧効かねぇじゃんか!!」
「みてぇだなぁ。…あの野郎、正気に戻ったら次戦はぜってぇ前線やらすぞ」
アズライトの秘めたる地力を見せつけられ、オニキスは息を弾ませながらも悪態を吐いた。
…他4人より選出条件が鬼厳しいことを考えりゃ、ポテンシャル高いのも当然っちゃ当然だったよな…
…とはいえ、馬鹿みてぇに攻撃力高ぇだけかと思ったら、セルフ防御まで出来るなんざ想定外だったぞ…?
オニキスの全身に、比喩ではない冷や汗が流れる。
「――どけ。お前じゃ勝負にならねぇ」
ふらつきながら立ちあがり、オニキスは装具を呼び戻す。
「!? でもっ…!!」
「うるせぇ、離れてろ。…次が来るぞ」
サルファーの光線が空間に溶け、目が慣れたアズライトは、氷のように冷たい視線でオニキスを見下ろしていた。
再び攻撃姿勢をつくり、氷柱をオニキスへ向けて構える。
やっとの思いで地に立つオニキスは、自らに用意された絶望的な状況をすべからく受け止める。
…お前にゃほんと、いいようにあしらわれまくってんな…俺。出会ってからずっと、身も心も振り回されっぱなしだ。
…振られた上にこてんぱんにされて、どんだけ俺を凹ませりゃ気が済むんだよ…
オニキスは、全身から大量の毒を噴出する。
黒い毒霧は彼を中心に渦巻くように流れていき、広範囲に層厚く覆う。
「…!!」
その尋常ではない光景に、サルファーはすぐさまその場を離れ、はるか後方から息を飲む。
霧の隙間から見える冷酷にして秀麗な面差しを、オニキスは紫黒の眼で睨み返した。
「来いよ。刺し違えてでもお前を止めてやる」
…お前に引導渡されるなら、本望だ。
豪速でぶつかってきた氷柱の切っ先を鉤爪を交差させて防いだものの、速度と装具の重量に圧し負け、影斗の身体が大きく弾かれる。
あえなく無防備になる彼へ、追撃の氷の刃が大量に浴びせかけられた。
「ぐぁっ…!!」
全身を貫かれ、短く声をあげた後、オニキスは自由落下していく。
蒼矢はその墜落地点へ向けて飛んだが、前方から光が照射され、視界を奪われてその挙動を止める。
咄嗟に目眩まし攻撃を見舞った陽が、二人の間に入るように『閃光』を構えて立った。
受け身無しで文字通り地に堕ちたオニキスが、面を歪め、腕を震わせながら上体を起こす。
「…っ…、…ナイスタイミングだ。ちったぁ使えるじゃねぇか」
「軽口叩いてる場合かよぉっ…!! やばいよ、毒霧効かねぇじゃんか!!」
「みてぇだなぁ。…あの野郎、正気に戻ったら次戦はぜってぇ前線やらすぞ」
アズライトの秘めたる地力を見せつけられ、オニキスは息を弾ませながらも悪態を吐いた。
…他4人より選出条件が鬼厳しいことを考えりゃ、ポテンシャル高いのも当然っちゃ当然だったよな…
…とはいえ、馬鹿みてぇに攻撃力高ぇだけかと思ったら、セルフ防御まで出来るなんざ想定外だったぞ…?
オニキスの全身に、比喩ではない冷や汗が流れる。
「――どけ。お前じゃ勝負にならねぇ」
ふらつきながら立ちあがり、オニキスは装具を呼び戻す。
「!? でもっ…!!」
「うるせぇ、離れてろ。…次が来るぞ」
サルファーの光線が空間に溶け、目が慣れたアズライトは、氷のように冷たい視線でオニキスを見下ろしていた。
再び攻撃姿勢をつくり、氷柱をオニキスへ向けて構える。
やっとの思いで地に立つオニキスは、自らに用意された絶望的な状況をすべからく受け止める。
…お前にゃほんと、いいようにあしらわれまくってんな…俺。出会ってからずっと、身も心も振り回されっぱなしだ。
…振られた上にこてんぱんにされて、どんだけ俺を凹ませりゃ気が済むんだよ…
オニキスは、全身から大量の毒を噴出する。
黒い毒霧は彼を中心に渦巻くように流れていき、広範囲に層厚く覆う。
「…!!」
その尋常ではない光景に、サルファーはすぐさまその場を離れ、はるか後方から息を飲む。
霧の隙間から見える冷酷にして秀麗な面差しを、オニキスは紫黒の眼で睨み返した。
「来いよ。刺し違えてでもお前を止めてやる」
…お前に引導渡されるなら、本望だ。
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