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◇第二章◇ 知人は友人になりますか?
◆Normal END◆ 彼女は、そして惑う
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「……いい天気」
空に昇り始めた太陽が眩しすぎて、目を細めてしまう。
長い一日が、今日もきっと始まるんだ。
◆◆◆
あの日、クロウからの問いに私は、答えることができなかった。
『……』
『……それすらも、答えられないのか』
『……ごめんなさい。誰かって言われても、今は誰ともいたくないよ』
『そうか。…………わかった』
ため息を去り際にこぼして、クロウは私の元から去っていった。
それが彼の姿を見た最後だった。それから今日まで、一度もクロウに会っていない。
彼は一体、私の何が知りたかったのかな。
何が目的だったのかな。
気になるけど、それを知る手段を私は持ってない。
◆◆◆
クロウに会った次の日。
結局私は、ジョシュアさんに仕事を紹介してもらった。アンジェさんもふくめて、二人とも私が屋敷を離れるのを寂しがってくれたけど。
レイモンドさんには、屋敷を去る瞬間まで会わないまま。
アルにも、何も告げずに別れることになって、心苦しかったけど。そのためだけにマクファーソンの家にとどまることも、私はできなかった。
ハーヴェイさんには街角で会って、騎士舎の家政婦についてはお断りをさせてもらった。
『残念だな』なんて苦笑してたけど。きっと、私より他に、もっと適任の人がすぐに見つかるって信じてる。
セオドールさんともあれっきり。
王宮図書には本を読むために通い続けたけど、彼には会わずじまい。きちんと、話をしたかったけど……仕方ないよね。
◇◇◇
そして、マクファーソンの屋敷を出て、5年経った今日。
私はようやっと、旅立つ決心をした。
隣国まで行く乗り合わせの馬車に乗って、私は軽くため息をついた。
両肩に背負ってた、わずかな荷物を下す。それで、やっと一息つけそうな気がした。
荷物の中には、わずかな服と5年間で稼いで貯めたお金。貯めたと言っても限りがあるから、他の国についたら、いずれまた仕事に就いて働かなきゃ。
働きながら、『元の世界に戻る方法』を探さないと、ね。
思考する私を乗せて、馬車の車輪が回るカラカラとした音が聞こえた。馬の蹄《ひずめ》が石畳を単調に踏み鳴らすリズムって、なんだか落ち着く。
そうこうしてるうちに、城門前の警備の人達の横を私が乗っていた馬車が通過した。
乗り合わせの馬車は公共機関扱いで、検問が入らないみたい。
「あ……」
「どうした、娘さん」
「……いえ。なんでも、ないです」
乗り合いで居合わせたおじさんに聞かれた私は、緩く首を振ってみせた。
――これで、パンプ王国とはお別れ。
長い間居たけど、私は結局、少しも元の世界に戻るための情報を図書館で見つけることができなかった。
あの膨大な数を読み切ったのは、すごいなって自分でも思う。
それこそ、5年経った今旅経つのは、あの本達全部を読むのに時間がかかったせい。
他の場所に行って、私が望む情報が手に入るかなんてわからないけど。でも、少しでも可能性があるんだったら、探すことに決めた。
「どこへ行こうかな」
……どこへ行ったらいいのかな。
でも、きっと。
――私のいるべき場所は、ここじゃない。
空に昇り始めた太陽が眩しすぎて、目を細めてしまう。
長い一日が、今日もきっと始まるんだ。
◆◆◆
あの日、クロウからの問いに私は、答えることができなかった。
『……』
『……それすらも、答えられないのか』
『……ごめんなさい。誰かって言われても、今は誰ともいたくないよ』
『そうか。…………わかった』
ため息を去り際にこぼして、クロウは私の元から去っていった。
それが彼の姿を見た最後だった。それから今日まで、一度もクロウに会っていない。
彼は一体、私の何が知りたかったのかな。
何が目的だったのかな。
気になるけど、それを知る手段を私は持ってない。
◆◆◆
クロウに会った次の日。
結局私は、ジョシュアさんに仕事を紹介してもらった。アンジェさんもふくめて、二人とも私が屋敷を離れるのを寂しがってくれたけど。
レイモンドさんには、屋敷を去る瞬間まで会わないまま。
アルにも、何も告げずに別れることになって、心苦しかったけど。そのためだけにマクファーソンの家にとどまることも、私はできなかった。
ハーヴェイさんには街角で会って、騎士舎の家政婦についてはお断りをさせてもらった。
『残念だな』なんて苦笑してたけど。きっと、私より他に、もっと適任の人がすぐに見つかるって信じてる。
セオドールさんともあれっきり。
王宮図書には本を読むために通い続けたけど、彼には会わずじまい。きちんと、話をしたかったけど……仕方ないよね。
◇◇◇
そして、マクファーソンの屋敷を出て、5年経った今日。
私はようやっと、旅立つ決心をした。
隣国まで行く乗り合わせの馬車に乗って、私は軽くため息をついた。
両肩に背負ってた、わずかな荷物を下す。それで、やっと一息つけそうな気がした。
荷物の中には、わずかな服と5年間で稼いで貯めたお金。貯めたと言っても限りがあるから、他の国についたら、いずれまた仕事に就いて働かなきゃ。
働きながら、『元の世界に戻る方法』を探さないと、ね。
思考する私を乗せて、馬車の車輪が回るカラカラとした音が聞こえた。馬の蹄《ひずめ》が石畳を単調に踏み鳴らすリズムって、なんだか落ち着く。
そうこうしてるうちに、城門前の警備の人達の横を私が乗っていた馬車が通過した。
乗り合わせの馬車は公共機関扱いで、検問が入らないみたい。
「あ……」
「どうした、娘さん」
「……いえ。なんでも、ないです」
乗り合いで居合わせたおじさんに聞かれた私は、緩く首を振ってみせた。
――これで、パンプ王国とはお別れ。
長い間居たけど、私は結局、少しも元の世界に戻るための情報を図書館で見つけることができなかった。
あの膨大な数を読み切ったのは、すごいなって自分でも思う。
それこそ、5年経った今旅経つのは、あの本達全部を読むのに時間がかかったせい。
他の場所に行って、私が望む情報が手に入るかなんてわからないけど。でも、少しでも可能性があるんだったら、探すことに決めた。
「どこへ行こうかな」
……どこへ行ったらいいのかな。
でも、きっと。
――私のいるべき場所は、ここじゃない。
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