83 / 164
◇第五章 ルイス編◇ チャラい彼のヒミツに触れます
第三十八話 「普通でいいじゃないですか」
しおりを挟む
自分の気持ちを確認したはいいけど……これ以上深く考えない方がいいよね。
ますます悩んで、ドツボに嵌るだけだろうし。気を取り直して話題を変えようかな。
この気持ちを悟られたりなんかされたら、こっぴどくフラれちゃうに決まってるから。絶対にルイスさんがわからないようにしないと。
「それでその耳って結局なんですか?」
「え、おい今更聞くのか?」
今更って、仕方ないじゃないですか。
ルイスさんが失礼なことを言ったりするから横道に話が逸れたのに。
「私に文句を言うんですか? そもそもがルイスさんのせいじゃないですか」
ムッとしてみせて言い返す。私の軽口に、ルイスさんが顔をしかめた。
「……俺のせいか?」
「他に誰がいるんですか? 人の話も聞かないで、嫌われるために無理やりキスをしたくせに」
恨み言をもらすと、ルイスさんは目を頼りなく泳がせた。
さすがに気まずいなんて感じてくれてるみたい。でもこれで何にも思ってなかったら、さすがに私でも怒るよ。
「うっ!? あー……っとそれはだな」
「誰でしたか?」
「…………俺、だな」
素直に認めて、ルイスさんはガックリと肩を力なく落とした。
自白した彼をよそ目に、私は淡々と話を続けることにした。
「それとちなみに、いつまでこの体勢のままなんですか」
これは単純な疑問。私は寝転がれて楽でいいけどね。
ただやっぱり落ち着かないし、できたら起き上がって会話したいよ。
「……べつにこのままでよくないか?」
どうして不思議そうな表情をしてるんですか。それともルイスさんにとっては些細《ささい》なことなんですか。
小首傾げないでください。その耳と相乗効果でワンコにしか見えないです。
……そういえば、このルイスさんの耳って、何の動物のなのかな。
っは!? 違うこと考えてる場合じゃないよね。このままぼんやりしてると、なぁなぁになって流されて会話続行なんて未来が見えるよ。
「ッダメです! 絶対、場所を移しましょう!」
断固拒否しなきゃ。
こんな状況慣れたくなんかないよ。
「…………なんか、そう強く反対されると逆のことをしてみたくなるな」
「!?」
どうしてそこでアクドイ笑顔を浮かべるんですかっ!?
そんな必要性ないと思います!
「変なところで興味を持たないでください!」
「はいはい。わかったっつうの。仕方ねぇな」
どうして私がワガママを言ってそれを渋々聞き入れたみたいな様子なんですか!?
違いますよね、常識的に考えて規格外なことを仕出かそうとしてるのはルイスさんですからね!
ムスッとして見つめてるのに、ルイスさんは気にした素振りなんかなくて平然としてる。
彼は身軽な動きで、さっと身体を私の上から退かした。
上半身を起こすと、サッと視界に腕が入りこんできた。
「ほら」
「……」
手を差し出されたけど……なんだか素直につかめないよ。
気恥ずかしいから、だけじゃなくて。あんな態度をされたのに、親切にされたってどっちがルイスの本心なのかわからないから。
疑わないで、ルイスさんの手をつかんでいいのかな。
じっと手のひらの向こうに見えるルイスさんの顔を見つめると、彼は私の様子に不思議そうにしている。
「あ? どうしたんだ?」
「……いえ」
掘り下げたって、ロクなことにならなさそう。きっと、レディースファーストだから自然としちゃってるだけじゃないのかな。
内心で湧いた疑惑を打ち消して、軽く指先を彼の手のひらに乗せた。彼の手を引かれる力にうながされて、立ち上がった。
彼のエスコートで、室内にあったソファーに座らされた。……私の部屋には備えついてなかったから、これってもしかしてルイスさんの私物?
腰掛けると安定感があって、すっごく落ち着く。
私の隣に座って、ルイスさんは「さてと」ってとりなしてみせた。
「んで、さっきの質問は……あー、なんだったっけな?」
「今、ルイスさんに生えてる耳についてです」
「ああ、そうだったな」
こうやって話してる最中も絶えずにずっとピコピコと動いてる。……かわいいって思うけど、口にはしないようにグッと我慢しなきゃ。
「っつってもな……『何』かなんて、聞かれるとは思わなかったぞ」
「え?」
あごに手をあて、ルイスさんは戸惑ってるみたいだった。
あの、私だって戸惑うんですけど。どうして聞くこと自体が変みたいな反応をしてるんですか?
もしかして、この世界だと一目見てわかるようなことをわざわざ聞いたってこと?
ルイスさんの様子にますます困惑する私を、彼はジッと見返していた。
スッと目をすがめて、静かに問いかけてきた。
その発言は、口調はいつもの軽い彼のものなのに、背筋がゾッとするような冷たさをおびていた。
「それとも、認めたくないだけかよ?」
「? 認めたくないって……?」
あいまいに言われたって私、わからないんですけど……。
ルイスさんは余計に困った私の表情を、黙ってしばらく観察してきた。頬にチクチク彼の視線を感じると、息をするのもなんだか緊張しちゃうよ。
「…………悪ぃ、変に勘繰ったな。あんたは、そんな駆け引きを仕掛けてこない人間だったのに」
「? あの」
「疑って悪かった」
目を伏せて謝られても、混乱度合いが増すだけですけど。
ルイスさんが私に対してどう悪いって感じてるのかわからないから、許しようもないし。それにきっと聞いたって、気にしなそうな予感がするよ。
その耳が嫌われる原因だってルイスさんは思い込んでたみたいだけど、全然私は気にしなかったこともあったしね。
「気にしすぎですよ。普段は無神経なところが多いのに、どうしてこんなところで神経質な面をのぞかせてるんですか?」
「おいクガ!? こういった時に容赦ない言葉を向けてくんなって! どう反応したらいいのか困んだろが!」
「普通でいいじゃないですか」
そうですよね?
だって、私達にそんな雰囲気似合いませんよ。
それに、せっかくルイスさんから久しぶりに話しかけてくれているんだから。
いつルイスさんが我に返って、前みたいに「もう関わるな」って言ってくるのかって不安も少しだけあって。
だから、これくらいの冗談とかからかいは許してもらわないと、私だって平常心が保てそうにないよ。
「あんた……俺ら一応これから、真面目な話をするんだけどな」
「いいじゃないですか。しましょう?」
「…………もういい、わかった。ああもう、してやるよ!」
投げやり気味に言い放たれても。私としては煽ったつもりはないのに、半分キレてるみたいなヤケクソ感を出さないでほしいな。
そのままの勢いで、まくし立てるみたいにルイスさんはさっきの質問の答えを教えてくれた。
「こんな耳がある理由は一つしかないだろ!? 俺には獣人の血が流れてんだよ!」
「……獣人」
険しい顔をルイスさんはしてて、自分自身の発言に嫌そうな表情を浮かべてるけど。
「……」
『獣人』って、たしか一度どこかで本で読んだことがあった気もするんですが。
あの……そもそもそれって、何でしたか?
ますます悩んで、ドツボに嵌るだけだろうし。気を取り直して話題を変えようかな。
この気持ちを悟られたりなんかされたら、こっぴどくフラれちゃうに決まってるから。絶対にルイスさんがわからないようにしないと。
「それでその耳って結局なんですか?」
「え、おい今更聞くのか?」
今更って、仕方ないじゃないですか。
ルイスさんが失礼なことを言ったりするから横道に話が逸れたのに。
「私に文句を言うんですか? そもそもがルイスさんのせいじゃないですか」
ムッとしてみせて言い返す。私の軽口に、ルイスさんが顔をしかめた。
「……俺のせいか?」
「他に誰がいるんですか? 人の話も聞かないで、嫌われるために無理やりキスをしたくせに」
恨み言をもらすと、ルイスさんは目を頼りなく泳がせた。
さすがに気まずいなんて感じてくれてるみたい。でもこれで何にも思ってなかったら、さすがに私でも怒るよ。
「うっ!? あー……っとそれはだな」
「誰でしたか?」
「…………俺、だな」
素直に認めて、ルイスさんはガックリと肩を力なく落とした。
自白した彼をよそ目に、私は淡々と話を続けることにした。
「それとちなみに、いつまでこの体勢のままなんですか」
これは単純な疑問。私は寝転がれて楽でいいけどね。
ただやっぱり落ち着かないし、できたら起き上がって会話したいよ。
「……べつにこのままでよくないか?」
どうして不思議そうな表情をしてるんですか。それともルイスさんにとっては些細《ささい》なことなんですか。
小首傾げないでください。その耳と相乗効果でワンコにしか見えないです。
……そういえば、このルイスさんの耳って、何の動物のなのかな。
っは!? 違うこと考えてる場合じゃないよね。このままぼんやりしてると、なぁなぁになって流されて会話続行なんて未来が見えるよ。
「ッダメです! 絶対、場所を移しましょう!」
断固拒否しなきゃ。
こんな状況慣れたくなんかないよ。
「…………なんか、そう強く反対されると逆のことをしてみたくなるな」
「!?」
どうしてそこでアクドイ笑顔を浮かべるんですかっ!?
そんな必要性ないと思います!
「変なところで興味を持たないでください!」
「はいはい。わかったっつうの。仕方ねぇな」
どうして私がワガママを言ってそれを渋々聞き入れたみたいな様子なんですか!?
違いますよね、常識的に考えて規格外なことを仕出かそうとしてるのはルイスさんですからね!
ムスッとして見つめてるのに、ルイスさんは気にした素振りなんかなくて平然としてる。
彼は身軽な動きで、さっと身体を私の上から退かした。
上半身を起こすと、サッと視界に腕が入りこんできた。
「ほら」
「……」
手を差し出されたけど……なんだか素直につかめないよ。
気恥ずかしいから、だけじゃなくて。あんな態度をされたのに、親切にされたってどっちがルイスの本心なのかわからないから。
疑わないで、ルイスさんの手をつかんでいいのかな。
じっと手のひらの向こうに見えるルイスさんの顔を見つめると、彼は私の様子に不思議そうにしている。
「あ? どうしたんだ?」
「……いえ」
掘り下げたって、ロクなことにならなさそう。きっと、レディースファーストだから自然としちゃってるだけじゃないのかな。
内心で湧いた疑惑を打ち消して、軽く指先を彼の手のひらに乗せた。彼の手を引かれる力にうながされて、立ち上がった。
彼のエスコートで、室内にあったソファーに座らされた。……私の部屋には備えついてなかったから、これってもしかしてルイスさんの私物?
腰掛けると安定感があって、すっごく落ち着く。
私の隣に座って、ルイスさんは「さてと」ってとりなしてみせた。
「んで、さっきの質問は……あー、なんだったっけな?」
「今、ルイスさんに生えてる耳についてです」
「ああ、そうだったな」
こうやって話してる最中も絶えずにずっとピコピコと動いてる。……かわいいって思うけど、口にはしないようにグッと我慢しなきゃ。
「っつってもな……『何』かなんて、聞かれるとは思わなかったぞ」
「え?」
あごに手をあて、ルイスさんは戸惑ってるみたいだった。
あの、私だって戸惑うんですけど。どうして聞くこと自体が変みたいな反応をしてるんですか?
もしかして、この世界だと一目見てわかるようなことをわざわざ聞いたってこと?
ルイスさんの様子にますます困惑する私を、彼はジッと見返していた。
スッと目をすがめて、静かに問いかけてきた。
その発言は、口調はいつもの軽い彼のものなのに、背筋がゾッとするような冷たさをおびていた。
「それとも、認めたくないだけかよ?」
「? 認めたくないって……?」
あいまいに言われたって私、わからないんですけど……。
ルイスさんは余計に困った私の表情を、黙ってしばらく観察してきた。頬にチクチク彼の視線を感じると、息をするのもなんだか緊張しちゃうよ。
「…………悪ぃ、変に勘繰ったな。あんたは、そんな駆け引きを仕掛けてこない人間だったのに」
「? あの」
「疑って悪かった」
目を伏せて謝られても、混乱度合いが増すだけですけど。
ルイスさんが私に対してどう悪いって感じてるのかわからないから、許しようもないし。それにきっと聞いたって、気にしなそうな予感がするよ。
その耳が嫌われる原因だってルイスさんは思い込んでたみたいだけど、全然私は気にしなかったこともあったしね。
「気にしすぎですよ。普段は無神経なところが多いのに、どうしてこんなところで神経質な面をのぞかせてるんですか?」
「おいクガ!? こういった時に容赦ない言葉を向けてくんなって! どう反応したらいいのか困んだろが!」
「普通でいいじゃないですか」
そうですよね?
だって、私達にそんな雰囲気似合いませんよ。
それに、せっかくルイスさんから久しぶりに話しかけてくれているんだから。
いつルイスさんが我に返って、前みたいに「もう関わるな」って言ってくるのかって不安も少しだけあって。
だから、これくらいの冗談とかからかいは許してもらわないと、私だって平常心が保てそうにないよ。
「あんた……俺ら一応これから、真面目な話をするんだけどな」
「いいじゃないですか。しましょう?」
「…………もういい、わかった。ああもう、してやるよ!」
投げやり気味に言い放たれても。私としては煽ったつもりはないのに、半分キレてるみたいなヤケクソ感を出さないでほしいな。
そのままの勢いで、まくし立てるみたいにルイスさんはさっきの質問の答えを教えてくれた。
「こんな耳がある理由は一つしかないだろ!? 俺には獣人の血が流れてんだよ!」
「……獣人」
険しい顔をルイスさんはしてて、自分自身の発言に嫌そうな表情を浮かべてるけど。
「……」
『獣人』って、たしか一度どこかで本で読んだことがあった気もするんですが。
あの……そもそもそれって、何でしたか?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない
白神ブナ
恋愛
高校一年一学期から三年三学期まで続く長編です。気になるサブタイトルを見つけて途中からでもお楽しみいただけます。
女子校あるあると、先生あるある、受験あるあるを描く学園恋愛ドラマ。
佐藤サトシは30歳の独身高校教師。
一度は公立高校の教師だったが心が折れて転職し、私立白金女子学園にやって来た。
一年A組の受け持つことになったサトシ先生。
その中の一人、桜井美柑はガチでサトシ先生に恋してしまった。
サトシ先生は、桜井美柑という生徒の存在を意識してしまいつつ、あくまで職務に忠実であろうと必死に適度な距離を保とうとするが……
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる