冒険者が集う村シューラルーン~剣と魔法とポーションと、あと聴診器~

酉埜空音

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プロローグ

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 森と風の王国ベルハイム王国。その王国のシンボルでもある「古の森」は、王都から馬車で一日ほどのところに存在している。
 王国が出来る前から存在している古い森だが、決して陰鬱な雰囲気ではなく、むしろ、明るい。
 柔らかい色あいの常緑樹の枝の間から光が差し込み、芝生の上ではシカや馬の親子連れや小動物たちがのんびり過ごしているのが見える。
 そして、旅人や冒険者のために道はきちんと整備され、時折、道案内の看板が出ている。

『最初の村・シューラルーン こっち→』
『冒険者の村シューラルーン この先左折』

 といった具合だ。
 今、その道に重装備の剣士が一人、倒れ込んだ。
 馬車や騎獣での移動ではないところをみると、自力で空間移動をしたのだろう。実際、彼の背後に白い枠が浮かんでいる。
 かなり高度な冒険者スキル……「セルフワープポータル」を使ったらしい。
 剣士はごろりと転がって道の端に身を寄せる。それと同時に片膝を立てて素早く周囲を窺う。
 警戒する彼のその耳に、記憶の底にクッキリ刻まれている縦笛のメロディーが飛び込んできた。

「よかった……ランダムで飛んだが……古の森……シューラルーンに出たか。助かった……」

 ここには、なぜかモンスターはいない。
 懐かしさと安堵感から、剣士の体を疲労が襲う。
 あの村は、少し変わった村だ。どこの大陸とも違う衣服や文化が、根付いている。
「はじめて行ったときは……妙な村だと……驚いたもんだ……」
 痛みと痺れで思うように動かない手を懸命に動かし、荷袋からポーションを取り出して何とか飲む。
 モンスターの毒にやられて目が見えないが、長年持ち歩いているアイテムだ。どれを飲めばいいかは、判断がつく。
「できれば村の診療所まで行きたいが……」
 あの、不思議な衣服や治療道具を操る『ドクター』はまだ健在だろうか。
 男の体が大きく揺れる。小さなポーション一つでは、回復しきらなかったようだ。地面をちゃんと踏みしめているのかどうかすら、わからない。
「くっ……かつては『灼熱の獅子』と呼ばれた俺も、もはやここまで、か」
 自嘲気味に呟き、感覚が失われた足を懸命に動かす。
 その耳に、縦笛の奏でる民謡が飛び込んでくる。
(あの時……村の少女が好んで吹いていた曲だ……)
 故郷の民謡だと笑っていた緑の髪の彼女は今、どうしているだろうか。
 王国中を冒険してまわったが、結局あの曲は、あの村でしか聞けなかった。あの縦笛も、彼女しか持っていないのだろう。
 その懐かしい曲を聞きながら、剣士の意識は次第に薄れていった。
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