【完結】身代わりで男装した王女は宮廷騎士の手で淫らに健気に花開く

酉埜空音

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:身代わりの戴冠式ー3:

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 戴冠式は、王立中央神殿で厳かに進行していく。
 招待した周辺諸国の王侯貴族や、神殿に押し掛けた自国の民の拍手と歓声に包まれて、新王はゆっくりと祭壇へと歩み寄る。
 白い薔薇に囲まれた祭壇の脇には、立会人として白装束の神官たちがずらりと並ぶ。これらも古式ゆかしい装束であるとかで、誰が誰やらさっぱりわからない。
 が、大変厳かで緊張感のある儀式である。
 それなのに。

「王の父母ら血族はすべて白装束で壇上にいるのか――巨乳美人のローテローゼ王女を見に来たのだが……これではどれだかわからぬな」

 と、貴賓席から大声で宣った人物があった。それは、そこそこ友好関係にあるエルージョン皇国のヴァーン皇子であった。
 ぎょっとした周囲の人々が皇子を見るが、すぐに目線を逸らしてしまう。

――なぜこの国はあの皇子を招待したのだ!
――きっとあの皇子の悪評をご存じないのだ、新王陛下は……
――何もトラブルが起きねばよいが……
――いやいや、トラブルが起こることは間違いない。死人や戦といった物騒なことにならぬよう祈るまで

 参加者たちが、こそこそと話をする。
「おいこらそこの老人ども、やかましいぞ!」
「皇子、お声を落とされませ」
「うるさいぞ、タターニャ」
「うるさくご注意申し上げるのが乳母の務めにございます!」
 ちっ、と皇子は舌打ちをすると、長い脚を前の座席へ放り出した。

 ちなみに皇子の行儀の悪さに辟易した人が席を譲ってくれているため、皇子の周囲はがら空きである。
「つまらん儀式になりそうだな。どこもかしこも薔薇ばかりの、浮かれためでたい国め。誰ぞ、襲撃でもせぬかな。いくらか刺激的で、賑やかになるぞ」
「皇子! いくらなんでも言葉が過ぎましょう」
「そうか?」
 三白眼になった乳母が自国の皇子の頬を張り飛ばし床に転がして縛り上げ猿轡をはめるという、信じられない荒業でもって不適切発言を繰り替えすヴァーン皇子を黙らせたその直後――不穏な空気が神殿を支配した。
 それきたっ、と、ヴァーン皇子の目が輝いた。

 一族が一堂に会する(ことが多い)戴冠式や結婚式、葬式といったものはまれに、悲劇や修羅場の舞台にもなる。
 それはノワゼット王国にあっても同じであった。
 狙われたのは、新王であった。

 銀色の騎士・マティスを従えた新王が、戴冠式の会場である神殿の大広間をゆったりと歩いていると、剣を抜いた黒尽くめの男たちが突如、襲い掛かってきた。
「新王! 御命ならびに玉座を頂戴致す!」
 白刃が、王の喉元めがけて伸びてくる。が、奇妙な衣装のせいで急所がよくわからない。刺客が一瞬、迷いをみせた。
 その隙に、マティスが動いていた。
 がっ、と鈍い音がしたのは、マティスが鞘ごと剣を掲げて凶刃を弾いたからだった。
「曲者だ!」
 ローテローゼが、くせものとは何だったかと考えていると、再び刃がローテローゼめがけて襲ってきた。
 それは首を竦めてなんとかかわすが、その拍子に被り物が床に落ちてしまった。
「しまった……」
 刃は、執拗に首や眉間を狙ってくる。
 そのころになってようやく、命を狙われているという恐怖感がローテローゼの全身を駆け巡った。
「っ!!」
 きゃあ、と、迸りそうになった悲鳴を唐牛で堪えて、ローテローゼはその場に踏ん張った。
 王が、逃げてはいけない。
 この頃になると、周囲は大騒ぎになっていた。逃げ惑う人、興奮気味に見物する人、色々いる。
「――お客様と民の避難は……」
 周囲を見渡せば、事態を察したマティスの同僚騎士たちが避難誘導しているところだった。
「陛下!」
 鋭い声を上げたマティスが、さっと剣を抜いて王の前に回り込む。新王の喉元に突きつけられた槍の穂先を切り飛ばし、二番手の男の手首から先を切り落とす。
「マ、マティス……なんで、こんなことに」
「わかりません。が、敵がだれであれ、必ずお守りします」
 わかっている、と、ローテローゼは頷いた。
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