異世界転移した先は陰間茶屋でした

四季織

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11 初めてのお使い

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 玄関ホールに行くと、嫌な声が聞こえてきた。
 
 げ。

 俺を目の敵にするリシャールだ。出稼ぎから帰ってきたとこらしい。
 玄関ホールで他の陰間達と楽しく立ち話をしてるから、目につかないようにそうっと出ていこうとした。
 なのに……。

「あれぇ、お出かけぇ? いいなぁ、暇な人って」

 なんで、こいつは目敏いんだ。
 嫌いな奴は気にかける必要ないだろ? 俺ならそうするね。

「チッ」
「な、舌打ち? この僕に舌打ちしたの? ぽめ太のくせに生意気!」
「チッ!」

「やめろ、お前ら。店先だぞ」

 奥の扉を開けて出てきたのは、俺のお世話係、金剛まわしのハザナさんだ。
 リシャールも口をつぐむ。

 ざまあみろ。
 せせら笑うと、俺の頭に拳骨が降ってきた。

「何やってんだ、この馬鹿が」

 オーナーだ。
 相変わらずツートンカラーの派手な着流しに、今日は赤と金の髪を撫でつけている。

 見惚れるくらい派手な顔立ちで男臭くてイケメンなのは間違いない。
 でも、頭が2色で賑やかだから、着物ぐらい地味に出来ないのかな。
 俺は南国のド派手な鳥か鶏のとさかを思い出して、笑いが込み上げてしまった。
 駄目だ、駄目だ。

「お前達も部屋に戻れ」

 オーナーの一声にリシャール達が慌てて階段を駆け上がっていく。
 それを見送ってから、オーナーは俺を見下ろした。
 基本、ここの人デカいんだよね。同じくデカいハザナさんが俺の後ろに立つから、圧迫感がすごい。

「メモは持ったか」

 俺の頭上で二人が会話してる。
 俺の「大丈夫」は当てにならないってオーナーが言ってたから、俺に聞いてないのはよく分かる。
 オーナーだって適当なくせによく言うよ。

 今日は、ハザナさんとお使いに行く。

 おもてなしのお菓子を新しくするっていうので、オーナーの代理で打ち合わせに行くんだって。
 多分、お使いはハザナさん一人で十分なのに、暇を持て余してる俺を慮って声をかけてくれたんだろうと思う。

「ぽめ太、これ」
「うん?」

 オーナーが、俺の手に包んだお金を握らせる。

「欲しいものがあれば、買ってもらえ」

 えっと。
 駄菓子屋に行く子どものお駄賃みたいになってないかなぁ。

 オーナーが頭をポンポンと撫でるので、有り難く受け取る。
 だって、俺が小さい声でお礼を言うと頬を緩めるんだ。
 俺はオーナーの年を知らない。
 まさか俺くらいの子がいる年には思えないから、親戚か近所の子にお小遣いあげてる気分なのかも。

「ハザナ、くれぐれも頼む」

 オーナーに見送られて、俺達は馬車で街に向かう。
 肌寒いからとフード付きのポンチョみたいな防寒着を着せられて、しっかり頭まで覆われた。
 俺、てるてる坊主みたくない?
 ここの人達はてるてる坊主なんて知らないだろうけど、これで外出て、俺、大丈夫?

 この前の高藤様の出稼ぎのときも、街はぶらつけなかったから、実は楽しみだったりする。


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