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番外編 勇者と聖女とお泊り会3
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明日は帰宅の日なので、夕飯は管理人夫妻が豪勢な食事を用意してくれていた。
海の幸はもちろん、肉料理と野菜たっぷりのスープもある。
俺は、昼間のお詫びにって甘味を振る舞ってみた。
「ぽめ太くん、これって」
「寒天ゼリーもどき」
管理人の奥さんに相談したら厨を貸してくれて、材料も分けてくれたんだ。
もちろん、夕食の仕込みも手伝った。
管理人夫婦からは「小さいのに偉いなぁ」って頭を撫でられたから、子どもだと勘違いされてたと思う。
意外にも、俺が出した甘味は殿下達に好評だった。
どうやらすでに売り物であるらしく、酒の後に冷えてつるつるした喉越しが好まれたみたいだ。良かった。
護衛の人達からも「お小さいのにしっかりされてますね」って褒められたし、もしかして、俺、北小路くんより年下だと思われてる?
そしたら、灯さんなんて幼女じゃん!
「いえ、あの、背丈だけの問題じゃないと……」
「颯人くん、シッ! それは……」
二人がこそこそ言っていた。
なんだろう?
俺の軽率さっていう心に引っかかるアクシデントはあったけど、みんなのおかげで島での旅行を楽しく終えることができた。
「ただいまぁ」
帰ってからオーナーの仕事部屋にいくと、オーナーは広い書き物机に座って書類を書いているところだった。
「ん、おかえり」
あれ? 抱きついてくるかと思ったのに?
意外に冷静に受け止められて、広げた手をどうしようか困ってしまった。
「楽しかったか?」
「あ、う、うん」
そっと机を回って、オーナーの横に立つ。
忙しいのかな? だったら邪魔しちゃいけないし。
オーナーの横顔を眺めてると、急にオーナーが俺を抱き寄せてきた。
横抱きのまま、膝に乗せられる。
「ん」
オーナーの顔が寄ってきたから、目を閉じて首に手を回した。
「寂しかったか?」
「うん」
寂しかったのはオーナーだろうとは言わなかった。
きっと拗ねてたに違いない。面倒くさい人だな。
オーナーが満足そうに笑って、額をこつんと押し付けてきた。
ぎゅうっと抱きついて、俺からもう一度キスをせがんだ。
その夜、俺はシーツに沈んだまま島での出来事を話した。
昼間はみんなにせがまれて、楽しかったことを話した。
素晴らしい別荘や島の散策、釣り、ボート遊び、美味しかった料理。
「なんかあったんだろ?」
だけど、オーナーは見抜いていた。
ぽつぽつと。
俺の軽率さで迷惑かけたことを話した。
なんで、今回に限ってここまで落ち込んだのか。
多分、あの仔虎がよたよたとお母さん虎に近寄っていったのを見たからだ。
北小路くんじゃなかったら、もしかしたら、お母さん虎が退治されたかもしれない。
あの仔虎が親を失うことになったかも知れないんだ、俺の軽率さのせいで。
俺に何かあったら、殿下や護衛の人が責任を問われたろう。
命や責任の重さを、俺は改めて実感したのかも知れない。
オーナーは左手で頭を支え、横向きになって俺を見ていた。
「お前が考えなしなのは、今に始まったことじゃないだろうが」
「えぇ? 落ち込んでるのに」
「粗忽で軽率で反省してもすぐ忘れるし、そういうところが子どもだって言われるんだ」
空いてる右手で俺の頭に手をやると、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。少し乱暴に。
「それがお前の良さでもあるだろ。明るくて屈託なくて馬鹿で、俺は好きだよ」
なんか泣けてきた。
ギョッとした顔で「痛かったか」なんて見当違いのことを言ってるから、俺はオーナーに抱きついた。
俺だって。
「俺だって、適当でいい加減で根性悪いけど、オーナーが好き。大好き」
「それ褒めてるか?」
まぁいっかって、オーナーは俺の背中をトントンと優しく叩いてくれた。
オーナーは俺に心地いい言葉を吐くだけじゃない、ダメなところはハッキリと言ってくれる。
でも、それは優しさからなんだと思った。
心地良くて眠気がきたから胸に凭れると、微かに上からオーナーの笑い声が聞こえた気がした。
翌朝。
二人ともが掻き出すのを忘れてて、俺は腹を壊してしまった。
体はしんどかったけど、心はスッキリしていた。
オーナーのおかげだな。
「ありがとね、オーナー」
「え? あ、おう?」
オーナーは「腹壊したのに?」って首を傾げてた。
そういうとこだよ。ホント大好き。
お読みいただきありがとうございました。
海の幸はもちろん、肉料理と野菜たっぷりのスープもある。
俺は、昼間のお詫びにって甘味を振る舞ってみた。
「ぽめ太くん、これって」
「寒天ゼリーもどき」
管理人の奥さんに相談したら厨を貸してくれて、材料も分けてくれたんだ。
もちろん、夕食の仕込みも手伝った。
管理人夫婦からは「小さいのに偉いなぁ」って頭を撫でられたから、子どもだと勘違いされてたと思う。
意外にも、俺が出した甘味は殿下達に好評だった。
どうやらすでに売り物であるらしく、酒の後に冷えてつるつるした喉越しが好まれたみたいだ。良かった。
護衛の人達からも「お小さいのにしっかりされてますね」って褒められたし、もしかして、俺、北小路くんより年下だと思われてる?
そしたら、灯さんなんて幼女じゃん!
「いえ、あの、背丈だけの問題じゃないと……」
「颯人くん、シッ! それは……」
二人がこそこそ言っていた。
なんだろう?
俺の軽率さっていう心に引っかかるアクシデントはあったけど、みんなのおかげで島での旅行を楽しく終えることができた。
「ただいまぁ」
帰ってからオーナーの仕事部屋にいくと、オーナーは広い書き物机に座って書類を書いているところだった。
「ん、おかえり」
あれ? 抱きついてくるかと思ったのに?
意外に冷静に受け止められて、広げた手をどうしようか困ってしまった。
「楽しかったか?」
「あ、う、うん」
そっと机を回って、オーナーの横に立つ。
忙しいのかな? だったら邪魔しちゃいけないし。
オーナーの横顔を眺めてると、急にオーナーが俺を抱き寄せてきた。
横抱きのまま、膝に乗せられる。
「ん」
オーナーの顔が寄ってきたから、目を閉じて首に手を回した。
「寂しかったか?」
「うん」
寂しかったのはオーナーだろうとは言わなかった。
きっと拗ねてたに違いない。面倒くさい人だな。
オーナーが満足そうに笑って、額をこつんと押し付けてきた。
ぎゅうっと抱きついて、俺からもう一度キスをせがんだ。
その夜、俺はシーツに沈んだまま島での出来事を話した。
昼間はみんなにせがまれて、楽しかったことを話した。
素晴らしい別荘や島の散策、釣り、ボート遊び、美味しかった料理。
「なんかあったんだろ?」
だけど、オーナーは見抜いていた。
ぽつぽつと。
俺の軽率さで迷惑かけたことを話した。
なんで、今回に限ってここまで落ち込んだのか。
多分、あの仔虎がよたよたとお母さん虎に近寄っていったのを見たからだ。
北小路くんじゃなかったら、もしかしたら、お母さん虎が退治されたかもしれない。
あの仔虎が親を失うことになったかも知れないんだ、俺の軽率さのせいで。
俺に何かあったら、殿下や護衛の人が責任を問われたろう。
命や責任の重さを、俺は改めて実感したのかも知れない。
オーナーは左手で頭を支え、横向きになって俺を見ていた。
「お前が考えなしなのは、今に始まったことじゃないだろうが」
「えぇ? 落ち込んでるのに」
「粗忽で軽率で反省してもすぐ忘れるし、そういうところが子どもだって言われるんだ」
空いてる右手で俺の頭に手をやると、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。少し乱暴に。
「それがお前の良さでもあるだろ。明るくて屈託なくて馬鹿で、俺は好きだよ」
なんか泣けてきた。
ギョッとした顔で「痛かったか」なんて見当違いのことを言ってるから、俺はオーナーに抱きついた。
俺だって。
「俺だって、適当でいい加減で根性悪いけど、オーナーが好き。大好き」
「それ褒めてるか?」
まぁいっかって、オーナーは俺の背中をトントンと優しく叩いてくれた。
オーナーは俺に心地いい言葉を吐くだけじゃない、ダメなところはハッキリと言ってくれる。
でも、それは優しさからなんだと思った。
心地良くて眠気がきたから胸に凭れると、微かに上からオーナーの笑い声が聞こえた気がした。
翌朝。
二人ともが掻き出すのを忘れてて、俺は腹を壊してしまった。
体はしんどかったけど、心はスッキリしていた。
オーナーのおかげだな。
「ありがとね、オーナー」
「え? あ、おう?」
オーナーは「腹壊したのに?」って首を傾げてた。
そういうとこだよ。ホント大好き。
お読みいただきありがとうございました。
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