王道学園のモブ

四季織

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第23話 文化祭の終わり

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 最後に花火が何十発も上がって、文化祭は幕を閉じた。
 フェスの終わりみたい。さすが、金持ち学校、規模が違う。


「俺の部屋に来ないか?」

 花火を見上げていたら、先輩が繋いだままの俺の手をぐっと握った。
 囁くように耳元で言われて、ドキッとする。

 いくらどんくさいって言われる俺でも、意味は分かるから。
 
 俺は、真っ赤になった顔を隠すように俯いて。
 掠れた声で「はい」って言った。


 そこで終われば良かったんだけど。

 鞄も荷物も、全部、教室のロッカーに置きっぱなしだったことに気づいたので、俺達は教室に取りに戻ることにした。
 やっぱりしまらないなぁ、俺。

 途中、先輩宛に電話が掛かってきたので、俺は一足先に教室へ向かう。


 人気がない廊下をいくと、教室から何か音が聞こえてきた。 
 バキッグシャッていう破壊音と、何かを罵るような声だ。


 そうっと教室を覗くと。
 
 俺達のティラノサウルスは足から千切られ、無惨に横たわっていて。
 罵りながら、周りの物を叩きつける白い体は……。


 渋谷あおい、主人公だった。


 ウェディングドレス姿のままで、ダンボールを蹴りながらブツブツと誰かのことを罵っている。
 聞こえてきた名前は、加賀谷のことだ。
 物音を立てた俺に気づいて、ゆっくり顔を上げた渋谷の目が俺を捉えた。


「お前が、悪いんだ。お前が最初に俺の邪魔をしたから。モブのくせに」


 え?


「折角、主人公に転生したのに、なんでこうなるんだよ! 俺が愛されなきゃおかしいだろ!? 全部お前のせいだ!」


 こいつ。
 転生者だ、俺と同じ。


 息を飲む俺を勘違いして、モブだから分からないんだろ、と渋谷は笑った。
 苛つかせる笑い声だった。


「あーあ、お前なんか、ヤられて蒼に嫌われるはずだったのに」


 え。もしかして?


「お前がレイプの首謀者?」
「そうだよ? モブが邪魔するからだろ。蒼の試合イベントも邪魔しやがって!」

 渋谷の目は吊り上がって、可愛い顔が残念なほど歪んでいた。


「俺は主人公なんだよ! 選択肢も間違ってない! どうして、皆、ゲームと違う動きするんだよ! お前らのせいだろ?!」
「ふざけんなよ!」

 ここは、ゲームじゃない。
 いや、ゲームの世界なんだろうけど。

「ここで生きてんだよ! 俺達も先輩も、お前と同じ感情がある人間なんだぞ! 物じゃないんだ!」

 でも、これは。
 
 これまでの俺に対する言葉だ。
 ゲームと比べてばかりだった俺への言葉なんだ。


 渋谷は、一瞬、虚を突かれた顔をしたけど、頭を振って、

「うるさい! うるさいうるさい、モブが俺に口出しするな!」

 渋谷の手にナイフが握られていた。
 俺の方が大きいし、素手なら負けないと思うけど、刃物を持たれると分からない。


「小坂!」

 先輩の声がした。
 渋谷が怯んだ隙に、俺は足元にあったティラノサウルスの残骸の一つを掴んで投げる。
 その手からナイフが転がった。

 飛び込んできた先輩が、渋谷を拘束する。
 その間も、渋谷はずっと「なんで俺が!」と叫び続けていた。


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