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武道場
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「ばあ様。でかけてきます。」
少女がドアを開きながら言った。少女の名は紅葉。両親を亡くし祖父母と共に生活している。
「武道場ですね。決して練習をしてはなりませんよ。」
紅葉はため息をついた。
「何回も言われましたもの。もちろんやりませんよ。見学です。」
「わかりました。早く帰って来るように。」
紅葉は祖母に言われるとすぐに家を出た。紅葉の住む家は一般的な家よりもはるかに大きい。来ている服も王御用達の店のものだ。紅葉は家から少し離れると綺麗にまとめられた髪の毛をほどき動きやすいよう一つに結った。
「あ、紅葉じゃない!」
後ろから元気な声がした。振り向かなくとも友人の琴海ということがわかった。
「おはよう。琴海。」
紅葉は琴海の隣へ行った。
「紅葉も武道場に行くの?」
「そうだよ。暁暝(しょうめい)ができないからせめて見たいなって。」
紅葉は笑った。暁暝はこの灑麗国に伝わる武術。敵国の相手を殺すために作られた武術だ。建国と同時に広がり当時の王の暁暝の名がつけられた。
「そっか。紅葉はなんで禁止にされてるんだろう。」
「教えてもらえない。でもじい様、ばあ様が話しているのをこっそり聞いたのだけど私は目立ってはいけないみたい。」
紅葉はため息をついた。
「謎ねぇ。でも、いつかはまた出来るといいね!
まあ、私は朱道さんを一番に応援するけど!二番目が親友の紅葉!」
「ひどいなぁ。朱道ってそんなかっこいいの?」
紅葉は笑った。琴海は頬をふくらませ、紅葉に殴りにかかった。紅葉は琴海を避けて
「そんなんじゃ私に当たらないよ。」
と言った。
「あぁ、紅葉は動きが速すぎるのよ!
あ!武道場が綺麗になっているよ。少し改築したんだね。」
琴海が指を指したその先には武道場があった。しかし紅葉の見慣れた姿ではなかった。紅葉が行かなかった数日の間に改築されたらしく今にも崩れそうだった武道場が王宮のお膝下である灑麗町の一流道場と争えるほどの豪華さになっていた。
「すごいね。朱道さんが優勝してくれたおかげだよ。」
琴海が目を輝かせた。
「朱道なんて力だけよ。総合的には私の私の方が断然上だよ。」
「確かに紅葉も出ていたら、紅葉がぶっちぎりで優勝だったね。」
紅葉と琴海は靴を脱ぎ武道場に入っていった。建物以外にもう一つ変わったことがあった。それは人が増えていたのだ。王宮大会優勝者の朱道、そして紅葉を弟子に持つ数少ない若い女性指導者の珈恋(かれん)師匠に多くの弟子が出来たらしい。それも、朱道が優勝し、有名となったおかげだ。
「弟子懇願者?それとも朱道の見学?言っとくけど懇願は二時間待ってもらうし見学は受け付けてないよ。」
友人である秀麗(しゅれい)が顔を上げずに二人に言った。秀麗は紅葉に気づいていないのだろう。
「秀麗。私なんだけど。」
紅葉が言うと秀麗は嬉しそうな顔をして
「紅葉じゃねえか。あと琴海。久しぶりだなぁ。」
といった。
「そうだね。久しぶり。大会...棄権してごめんなさい。」
紅葉は申し訳なさそうに言った。
「気にするなよ。事情があるならしょうがない。琴海もあの時、俺達に急いで知らせに来てくれてありがとな。あれがなかったら俺達は大会出場できなかったから。」
「ううん。気にしなくていいよ。全部紅葉のためだから。」
「ふーん。じゃあ中に早く行けよ。師匠が会いたがってるよ。」
秀麗はドアを開けた。
「私も行っていいかな?」
「もちろん。師匠が琴海にしっかりお礼したいって言ってた。」
「ありがとう。じゃあ、行ってくるね。」
二人は部屋に入って行った。
少女がドアを開きながら言った。少女の名は紅葉。両親を亡くし祖父母と共に生活している。
「武道場ですね。決して練習をしてはなりませんよ。」
紅葉はため息をついた。
「何回も言われましたもの。もちろんやりませんよ。見学です。」
「わかりました。早く帰って来るように。」
紅葉は祖母に言われるとすぐに家を出た。紅葉の住む家は一般的な家よりもはるかに大きい。来ている服も王御用達の店のものだ。紅葉は家から少し離れると綺麗にまとめられた髪の毛をほどき動きやすいよう一つに結った。
「あ、紅葉じゃない!」
後ろから元気な声がした。振り向かなくとも友人の琴海ということがわかった。
「おはよう。琴海。」
紅葉は琴海の隣へ行った。
「紅葉も武道場に行くの?」
「そうだよ。暁暝(しょうめい)ができないからせめて見たいなって。」
紅葉は笑った。暁暝はこの灑麗国に伝わる武術。敵国の相手を殺すために作られた武術だ。建国と同時に広がり当時の王の暁暝の名がつけられた。
「そっか。紅葉はなんで禁止にされてるんだろう。」
「教えてもらえない。でもじい様、ばあ様が話しているのをこっそり聞いたのだけど私は目立ってはいけないみたい。」
紅葉はため息をついた。
「謎ねぇ。でも、いつかはまた出来るといいね!
まあ、私は朱道さんを一番に応援するけど!二番目が親友の紅葉!」
「ひどいなぁ。朱道ってそんなかっこいいの?」
紅葉は笑った。琴海は頬をふくらませ、紅葉に殴りにかかった。紅葉は琴海を避けて
「そんなんじゃ私に当たらないよ。」
と言った。
「あぁ、紅葉は動きが速すぎるのよ!
あ!武道場が綺麗になっているよ。少し改築したんだね。」
琴海が指を指したその先には武道場があった。しかし紅葉の見慣れた姿ではなかった。紅葉が行かなかった数日の間に改築されたらしく今にも崩れそうだった武道場が王宮のお膝下である灑麗町の一流道場と争えるほどの豪華さになっていた。
「すごいね。朱道さんが優勝してくれたおかげだよ。」
琴海が目を輝かせた。
「朱道なんて力だけよ。総合的には私の私の方が断然上だよ。」
「確かに紅葉も出ていたら、紅葉がぶっちぎりで優勝だったね。」
紅葉と琴海は靴を脱ぎ武道場に入っていった。建物以外にもう一つ変わったことがあった。それは人が増えていたのだ。王宮大会優勝者の朱道、そして紅葉を弟子に持つ数少ない若い女性指導者の珈恋(かれん)師匠に多くの弟子が出来たらしい。それも、朱道が優勝し、有名となったおかげだ。
「弟子懇願者?それとも朱道の見学?言っとくけど懇願は二時間待ってもらうし見学は受け付けてないよ。」
友人である秀麗(しゅれい)が顔を上げずに二人に言った。秀麗は紅葉に気づいていないのだろう。
「秀麗。私なんだけど。」
紅葉が言うと秀麗は嬉しそうな顔をして
「紅葉じゃねえか。あと琴海。久しぶりだなぁ。」
といった。
「そうだね。久しぶり。大会...棄権してごめんなさい。」
紅葉は申し訳なさそうに言った。
「気にするなよ。事情があるならしょうがない。琴海もあの時、俺達に急いで知らせに来てくれてありがとな。あれがなかったら俺達は大会出場できなかったから。」
「ううん。気にしなくていいよ。全部紅葉のためだから。」
「ふーん。じゃあ中に早く行けよ。師匠が会いたがってるよ。」
秀麗はドアを開けた。
「私も行っていいかな?」
「もちろん。師匠が琴海にしっかりお礼したいって言ってた。」
「ありがとう。じゃあ、行ってくるね。」
二人は部屋に入って行った。
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