エイリアンチートで新人類に進化した俺は、異星文明で現代地球を開拓して南朝復活をめざします

大沢 雅紀

文字の大きさ
43 / 80

パーティ

しおりを挟む
教室
昼休み、玲は作ってきた弁当を広げていた。
「え?これって玲さんの自作ですか?」
「おいしそうにゃ」
玲の弁当をみた姫子と美亜が驚いている。弁当にはこれでもかと気合が入ったごちそうが入っていた。
「一口いただきにゃ!いたっ!」
つまみ食いをしようとした美亜の手を、玲はペシッとひっぱたく。
「……だめ」
「けち。こんなにいっぱいあるから、ちょっとぐらいいいにゃ」
そう拗ねる美亜を放っておいて、玲は勇人に声をかける。
「……勇人、お弁当を作ってきた。一緒にたべよう」
一斉にクラスメイトたちから注目され、勇人は真っ赤になった。
「い、いいって。食堂にでも行くから」
「だめ。私の愛情をたっぷり注ぎ込んだお弁当じゃないと、栄養が偏る」
玲に招かれ、勇人はしぶしぶ隣に座る。
「あーん」
「だから、いいって。仕方ないな。おっ。これはうまいな」
「でしょう。真理婆から教わった。男を落とすには胃袋をつかむのがてっとりばやいって」
そんな仲睦まじい姿をみせつけられ、姫子と美亜は瞳をキラキラと輝かせた。
「もしかして、二人はつきあっているんですか?」
「怪しい雰囲気にゃ」
興味津々で聞いてくる二人に、勇人は口ごもる。
「えっと……あの」
「……つきあってはいない」
玲が否定したので、勇人はほっとする。しかし、次の言葉で飲んでいたお茶を吹き出した。
「……だけど、卒業したら子供を作ると約束している」
「「ええっ」」
玲の爆弾発言に、聞き耳を立てていたクラスメイトたちも驚いた。
「ど、どういうことなんですか?付き合ってないのに子供をつくるって」
「爛れた関係にゃ」
二人が詰め寄ってくるので、勇人は困ってしまった。
「……だから、その……」
「勇人を責めないで。私が一方的に言い寄っているだけ。メイドとして誠心誠意お仕えして、振り向いてもらえるように頑張る。もし飽きられて捨てられたら、子供を引取ってうちの神社を継げばいいだけ」
無表情でいい放つ玲に、クラスメイトの勇人を見る目が冷たくなっていく。
「……フケツ……」
「無責任にゃ」
姫子と美亜は、ムシケラを見るような目で勇人を見た。
「いやいや待って。誤解なんだって」
勇人が弁解しようとした時、今までじっと見てきた女子が近寄ってきた。
「玲さん。どうやら身の程を知っているようですね。勇人さんは名門である南方家の御曹司。あなたのような庶民とは生きている世界が違うのです」
玲を見下した目で見たのは、勇人の元婚約者、豊畑奈美だった。
「……勇人が御曹司とか関係ない。私は勇人個人を愛しているだけ」
「ふん。綺麗ごとを。上流階級の間では政略結婚は当然。そのことを自覚して、正妻になろうなどと考えないことです」
奈美はそういって釘を刺してきた。
「……私は正妻なんて興味ない。そもそも私たちは女だけで自立してきた一族で、全員母子家庭。結婚制度自体意味を持たない。大切なのは、これはと決めた男の子種をもらうこと」
そういって勇人の手に自分の手を絡ませる。
「ふん。下賤な庶民にふさわしい考えですこと」
そういって、奈美は離れていった。
「あれ、なんなんでしょう」
「牽制しに来て返り討ちにあったにゃ」
姫子と美亜は、去っていく奈美を笑う。
「……勇人、そんなわけで今度行われるパーティじゃ、私に遠慮せずに財閥の利益になる女を捕まえる」
「勘弁してくれよ。もうちょっと嫉妬してくれても……これじゃ種馬みたいじゃないか」
独占欲のかけらも見せないあっさりとした玲に、勇人は複雑な気分になるのだった。

週末
勇人は源人に連れられ、政財界合同パーティに出席していた。
「いや、あなたが 南方財閥の御曹司ですか。かしこそうな顔をなさっている」
「どうですか?海設都市の開発をわが社にお任せいただければ……」
「いや、若いのにしっかりしていらっしゃる。わが孫娘
とお見合いを……」
政財界の爺さんおっさんたちに囲まれて、うんざりする勇人を見かねて、源人が間に入った。
「わが孫はまだ未熟なのでな。何か話があるのなら、ワシが聞きますぞ」
長年日本の財界の重鎮に居続けた源人の気迫に、勇人を利用しようとしていたおっさんたちもさすがにひるむ。
勇人はその隙におっさんたちの輪を抜け出し、家族が集まるエリアに逃げ込んだ。
「つ、疲れた~。おっさんたちに囲まれても、うれしくもなんともないな」
そうつぶやきながら食事をつまんでいると、今度はおっさんたちの子女に囲まれてしまった。
「勇人さん。パーティに来てくれたんですね。このパーティ会場は、わが豊畑自動車が用意したんですよ。ゆっくり楽しんでくださいね」
そういって勇人の右腕を組んだのは、元婚約者である豊畑奈美だった。
「なによ。こんなに人が集まったのは私のおじいちゃんの鳩川雪雄の人脈のおかげよ」
それに対抗して勇人の左腕を組んだのは、幼馴染である鳩川小百合だった。
二人の間に、バチバチと火花が飛び散る。
「なにが人脈ですか。北句麗王国や大韓朝国に媚びへつらって、日本から総スカンを食らっているくせに。南方財閥の力で政界復帰をもくろんでいるのですか?」
「そっちこそ、アメリカの電気自動車に押されっぱなしで落ち目じゃない。南方財閥の力を借りて、会社を立て直そうって魂胆でしょ」
二人は勇人そっちのけで喧嘩を始める。醜い争いを見せつけられて、勇人はうんざりしてしまった。
「ちょっと、トイレいってきます」
二人が喧嘩している間に逃げ出し、会場を出ようとする。その時、一人のメイドにぶつかった。
「にゃっ!」
「あっ。すいません。って、え?」
勇人は慌てて謝る。ぶつかったメイドは、カチューシャをつけている小柄な美少女だった。
「美亜じゃないか。ここで何やっているんだ?」
「勇人君こそ、何でここにいるのかにゃ」
二人は互いに顔を見合わせ、首をかしげる。
「俺は爺さんにパーティに連れてこられたんだよ」
「そうだったのにゃ。うちはバイトでメイドさんしているにゃ」
美亜はそういって、メイド服をみせびらかす。小柄で可愛い顔をしている彼女に、よく似合っていた。
「バイトかぁ。大変そうだな」
「ううん。パーティが終わった後に残った料理もらえるかもしれないにゃ。おいしいバイトにゃ」
美亜は嬉しそうに低い鼻をひくひくさせて、会場の臭いを嗅いだ。
「いいにおいにゃ。参加している勇人君が羨ましいにゃ」
「そんないいものでもないけどな。飯食う余裕なんてないぞ」
利権狙いのおっさんや、玉の輿狙いの肉食少女たちに囲まれたことを思い出し、勇人はうんざりした顔になる。
「お坊ちゃんも大変にゃね。おっと、いけにゃい。仕事に戻らにゃいと」
「そうか。がんばれよ」
美亜はにっこりと笑うと、給仕に戻っていった。
「さてと……会場に戻る気もしないし、もう帰ろう」
そう思うと、パーティ会場を後にする。
ホテルの前で迎えの車をまっていると、前庭に生えている大きな木の枝に黒い子猫がいるのを見つけた。
「に、にゃーん」
枝から降りられないのか、悲しげに鳴いている。
「子猫って、木に登っても降りられなくなることがあるよな。仕方ない」
勇人は木に飛び上がり、子猫を捕まえる。
「にゃっ!」
「こらっ。暴れるな」
ジタバタする子猫を抱きしめて、木から飛び降りた。
「ほらっ。もう大丈夫だぞ。って、おいっ!」
暴れていた子猫の爪が、偶然『空神珠』にひっかかり、ヒモの部分が切れてしまう。
地面に飛び降りた子猫は、落ちたネックレスを口にくわえた。
「ちょっ!それは大切なものなんだ。返してくれ」
「にゃ?」
子猫はしばらく考え込んでいたが、いたずらっぽい顔になる。
「にゃーん」
からかうように鳴くと、ネックレスを持ったまま逃げていってしまった。
「ちょっ!待てって。やばい!捕まえないと」
慌てた勇人は子猫を追って、ホテルに戻るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...