異世界に(として)転生しました。お前たちがいるのは俺の上なんだけど、わかってんの?

大沢 雅紀

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チタンズルリン

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ノーズダンジョン
「やったわ。これだけあれば、剣でも槍でも作り放題だわ」
大量に引き抜かれた木を見て、シルキドは歓喜している。
「でも、これだけ硬い木をどうやって加工するんだ?」
「ふふん。見ていなさい。そうね。これがいいわ」
ハナゲリュオンの木を見比べて、先に硬くて丸い根がついているものを選ぶ。
それをほかの木に叩きつけて、形を整えていく。数分で大きな金槌ができあがった。
「……すごいな」
「ふふん。どう?わがノーズ家は代々鍛冶師の家系なの。王家からも依頼されて、何本もの伝説の武器をつくったんだから」
褒められたシルキドは、そっくりかえって自慢した。
「ちょうどいいわ。あんたの武器もつくってあげる」
大金槌を振るって、ワルドの体格にあった、剣や槍を作っていく。木の槍しかもってなかったワルドは、ひょんなことから伝説の武器を手に入れることができた。
「ディミウスのいう通り、いい事があったな。これなら王都への旅も安心だ」
剣を振ってその感触を楽しむワルドに、シルキドが告げた。
「よし。準備もできたし、行くわよ」
「ああ」
そういって入口の方向に向かおうとするワルドを、シルキドは止めた。
「どこにいくのよ。私たちがいくのはこっち」
そういって、奥の方を指さす。
「えっ?でもそっちは最深部だぞ」
「どのみち帰り道はアシッドズルリンにふさがれているわ。行くしかないのよ。大丈夫。伝説の武器があるんだから、どんな魔物がでても平気よ」
大金槌を振り回しながらシルキドは進んでいく。ワルドは仕方なくついていくのだった。

ノーズダンジョンの奥へ奥へと歩いていくと。徐々に地下へと続いていく通路が現れる。あたりにはズルリンの姿もなくなって、不気味な雰囲気に包まれた。
「だ、大丈夫か?魔物すらいなくなったけど」
「そろそろオーラルダンジョンの領域に入るころだけど……
警戒しながら進んでいくと、天井から巨大なキノコのような魔物が垂れ下がっているのが見えてきた。
「なんだあれ?」
「うそっ……伝説のチタンズルリン?まさかこの目で見ることができるなんて……」
シルキドは、そのキノコをみて驚きのあまり固まっていた。
「はあ……また伝説のなんとかか」
「バカね。チタンズルリンめったに見られない貴重な魔物なのよ。外皮を硬いチタン金属で覆われていて、剣でも槍でも核を貫けない最硬の魔物として知られているわ。もし倒せたら、一匹でとんでもないレベルアップを果たせるのよ」
シルキドは無知なワルドに呆れながら、説明した。
「あの大きさ、おそらくあれがノーズダンジョンのボスね」
そう言いながら、油断なく大金槌を構える。
「このチャンスを逃すことはできないわ。行くわよ!」
「ち、ちょっと!」
ワルドが止めるのも聞かず、シルキドは大金槌を振りかざしてチタンズルリンに立ち向かっていった。




「えいっ!」
シルキドは渾身の一撃を放つ。しかし、魔力を込めた一撃は、硬いゴムに当たったかのようにはじき返された。
「キャッ!」
一撃の反動で、シルキドは跳ね飛ばされる。
「危ない!『空間クッション』」
ワルドは「空」の力を使い、シルキドをとりまく空間の空気密度をあげる。柔らかい空気のクッションに覆われて、シルキドはケガをしなくて済んだ。
「くぅ~硬い」
シルキドは歯ぎしりして悔しがる。チタンズルリンは、何もなかったように体をゆらゆら震わせていた。
「バカにするな!」
怒ったシルキドは何度も槌を振るって突撃するが、そのたびに跳ね返されるだけで相手にもされてなかった。
「だめだあれは……いくら攻撃しても、通用しそうにない」
シルキドの戦いを見て、力押しではだめだと判断する。
「なにかあいつの外皮を破れるものがあればいいんだけど……ディミウスは何か用意してないかな」
さう思って亜空間格納庫を探ってみると、なぜか柔軟薬が出てきた。
「もしかして、これをかければなんとかなるかも」
そう思ったワルドは、チタンズルリンめがけて薬瓶を投げつける。瓶が割れて、柔軟薬が降りかかった。
「フォォォォォ!」
薬剤がかかったチタンズルリンは、苦しそうに蠢動している。その核をまもっていた外皮も、さっきまで硬そうだったのに、液体のよう柔らかくなっていた。
「今だ!シルキド、一撃を放て!」
「なんだかわかんないけど、わかったわ!」
シルキドはありったけの魔力をこめて、槌の一撃を放つ。それはやすやすと外皮を打ち破り、核を破壊した。
「フォォォ……」
チタンズルリンは生気を失い、張りついていた天井から落ちる。そのままただの金属の塊となっていった。
「やったわね!」
「ああ!」
シルキドとワルドは、ハイタッチして喜びあう。倒れたチタンズルリンの魔力を吸って、二人のレベルは急激に上がっていった。
「すごい。一気に土魔法レベルが20に上がったわ。『錬金術』のスキルを覚えたみたい」
自分に身に付いた新たな力を感じ取って、シルキドははしゃぐ。
「えっと……俺も空魔法レベル20で、『緊急脱出(エグジット)』スキルが身に付いた?なんだこのスキル。あまり戦闘に役にたちそうにないな」
レベルが上がっても、攻撃的なスキルが身につかなかったので、ワルドは落ち込む。
「まあまあ。どうやらあんたの「空」の力は、補助に特化しているみたいだね。やっぱりあんたは私の荷物持ちになるべきね。冒険の旅に役立ちそう」
そういって、シルキドはワルドに笑いかけるのだった。

そのころ、アイリード村では、畑仕事を終えたディミスが自宅のベットでくつろいでいた。
鼻の奥がすっきりしたので、上機嫌に鼻歌をうたっている。
「まったく、あの『鼻茸』はやっかいだったよな。堕人族に駆除しろって命令しても「主の一部を手にかけるのは恐れ多いです」って手をださなかったし。まあ兄さんがなんとかしてくれたからよかったか」
そうつぶやくと、通りがよくなった鼻で息を吸い込む。
「よし。快調快調。これで兄さんたちも王都に早くつくだろう」
そうつぶやいて、にやりと笑うのだった。
ワルドが金属の塊となったチタンズルリンを亜空間格納庫に収納したとき、また突風が吹いた。
「うわぁぁぁぁ。またかよぉぉぉぉぉ」
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
二人は叫び声をあげながら、さらに奥へと飛ばされていく。そこは地獄へと通じる道のような、巨大な穴だった。
「おちるぅぅぅぅぅ」
絶叫をあげながら落ちていく。その途中で、大きな横穴が開いているのが見えてきた。風の流れはその横穴に吸い込まれていっている。
「あれがオーラルダンジョンか。くっ、あそこに行ければ……」
空気の流れに身を任せ、横穴に滑り込もうとする。
「よし。いける」
横穴に飛び込もうとした時、運悪くシルキドの体がぶつかってきた。
「うわぁ」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
二人の体は、奈落の底に落ちていくのだった。
「あれ?そっちじゃないんだけどな。失敗した。仕方ない。駄人族に送り届けさせるか」
ディミウスは、そう独り言をいって肩をすくめるのだった。
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