異世界に(として)転生しました。お前たちがいるのは俺の上なんだけど、わかってんの?

大沢 雅紀

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奴隷メイドローズ

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学園長室
シルキドから報告を受けた宮廷魔術師にして学園長のトールは、ずっと考え込んでいた。
「魔王城がオーラルダンジョンの奥にあるだと?たしかにオーラルダンジョンは、最深部に入ったら『ウェッ』という謎の音とともに奥から流れてきた濁流に押し流されて、入口まで押し返されてしまう。なので、その奥を確かめた者はいなかった。まさかノーズダンジョンから入れるとは……」
魔王城への道を聞いて、学園長は手柄を立てるチャンスだと喜ぶ
「王国に申請して、魔王退治を任せてもらおう」
こうして、シルキドが持ち帰った情報はすみやかに国へと伝えられるのだった。
その情報をもとに、国の上層部で゛議論が行われる。
「堕人族の王がいるアダムアップル城は、長年探索が行われていた敵の本拠地だ。この際全軍をもって攻撃を加え、魔王を倒そう」
女神ロースに仕える神官たちは、そう主張する。
「まあ、待ちたまえ。たかが一学生の言葉を信じて軍を動かすわけにはいかぬ。それにノーズダンジョンは装備を溶かすズルリンたちの巣だ。攻略にはかなりの消耗が予想される。戦いで軍の装備を失わせてから、実は間違いだったでは済まされないのだぞ」
それに対して、軍の将軍のほうは冷静だった。
「しかし……ダンジョンから出てくる魔物はどんどん増えています。魔物を作り出しているのは地下の堕人族たちです。このまま放置しておれば、莫大な被害を被ることにもなりかねません」
「うむむ……」
官僚たちの意見に、国王は判断がつかず唸り声をあげる。
その時、学園長トールが声をあげた。
「ノーズダンジョンに出るズルリン種は、初心者がレベルアップするのにちょうどいいと聞きます。魔法学園の生徒たちに探索を任せてみればいいのではないでしょうか」
「……どういうことだ?」
未熟な学生たちを探索にいかせると提案され、将軍が鋭く聞いてくる。
「簡単なことです。学生たちには自費で装備を整えさせて、ズルリンたちと戦わせて駆逐してもらえば、軍は戦わずに奥に進むことができます。ズルリンは最弱モンスターなので、生徒たちが傷つくことはないでしょうし、軍も無駄な戦で装備を溶かされることはなくなります」
生徒たちに露払いさせて、装備を溶かす厄介なモンスターを駆除させようというせこい作戦に、将軍は不快そうに顔をしかめた。
「たかがズルリンごときを恐れて、学生たちを戦わせるとは情けない軍だと民たちに侮られることになりはしないか?」
「大事の前の小事です。それに、ズルリンたちに装備を溶かされたら、魔王城に攻め込んだ後が困るでしょう」
その言葉に、将軍も沈黙した。
「決まりだな。魔法学園の学生たちをノーズダンジョンに向かわせよ」
こうして、ノーズダンジョンは魔物退治の訓練所としてつかわれることになるのだった。


「ふう……やっと収穫物の市場への搬出が終わった」
この数日、生徒たちに頼まれて畑の収穫物を運んでいた太郎は、やっとひと段落がついたので部屋で休んでいた。
その時、部屋のドアがノックされる。
「ワルド、いる?ちょっと街まで買い物にいくから、付き合って欲しいの」
入ってきたのは、セーラー服を着たシルキドだった。
「安物って言ってたくせに、着ているんだ」
「いいじゃない。結構斬新なデザインで気に入ったのよ。ほら、いくわよ」
そういうと、無理やり部屋から引っ張り出す。
「…なんで僕がこんなことを……」
「いいじゃない。あんたは私の荷物持ちなんだから」
「荷物持ちじゃないって」
そう文句を言いながらも、シルキドに付き合って街に出るワルドだった。
あちこち観光したり、屋台で買い食いをしたりして意外と楽しい思いをするワルドだったが、ふと気づいて尋ねる。
「そういえば、メイドさんがいただろ。彼女はどうしたんだ?」
「ああ。あの子は部屋で休ませているわ。これからあんたを連れていく所を怖がっているし」
「僕を連れていく所?」
意味がわからなくて、ワルドは首をかしげる。
「いい?あんたもこれから貴族になるんだから、従者の一人くらい雇わないといけないんだけど、これまで平民だったあんたにはツテもないでしょ」
「……それはまあ、確かに」
シルキドの言っていることを認める。
「だから、奴隷商人の店につれていってあげるの。学園入学までに奴隷を買って従者にすることで、体裁を整えないと」
「奴隷かぁ……なんか嫌だな」
田舎の辺境の村出身のワルドは、奴隷という存在を知ってはいるけど見たことはなかった。
残虐な奴隷商人に家畜のように扱われている奴隷のイメージを思い浮かべて、顔をしかめる
「大丈夫よ。ひどい奴隷商人もいるけど、これから行くところは、まだ父がお金持ちだったころによく利用していた信用のおける奴隷商人だから」
「……でも、高い金がかかるんだろ。僕は金もっていないぞ」
「なにいってるのよ。チタンズルリンの素材を売ればいいじゃない。高い防御力を持つ鎧が作れるから、高く売れたわよ」
シルキドは懐から袋を取り出して中を見せる。金貨がたくさん入っていた。
「なるほど。そういえば、君の家も貧乏だって言ってたよね。それなのにメイドを雇えたということは……」
「な、なによ。別に売ったっていいじゃない。私の取り分なんだし。貴族は見栄を張る必要もあるの!」
「そういうものなのか……」
ワルドはシルキドのアドバイスに従い、チタンズルリンの素材を売る。鍛冶屋で高く買い取ってもらい、金貨1000枚になった。
「僕、こんな大金見るの初めてなんだけど……やばい。このままこれを持って村に帰りたくなった」
「だめよ。女神から力を授かったものは、民を守るために魔物と戦う義務があるんだから。行くわよ」
シルキドはワルドを引っ張って、裏通りにある奴隷商人の店にいく。イメージとは違い、きれいに清掃されて清潔な店だった。
「いらっしゃいませ。シルキドお嬢様」
「久しぶりね。貴族の従者になれるような教養のある奴隷を見せてちょうだい」
「かしこまりました」
白い髪の奴隷商人は、一礼してひきさがる。そして、奥から白い髪の美少女を連れてきた。ワルドより少し年上のその美少女は、優しい笑みを浮かべている。
うれしそうにワルドを見てにっこりと笑う美少女に、思わず鼻の下をのばしてしまう。
「きれいだ……いてっ!」
なぜか隣にいたシルキドに小突かれてしまった。
「ふーん。なかなかきれいな奴隷ね。それに、おじさんと同じ白い髪」
「実は、私の遠い親戚でして。両親の商売が傾いたので、すこしでも親の助けになりたいと身売りをした健気な子で……」
奴隷商人は、ハンカチを取り出してよよよと泣く。
「もし売れなければ、花街に行って男たちの慰み者になるしかないのです。慈悲深い貴族様。どうかこの子を買ってやってください」
哀れっぽく上目づかいで二人を見上げる。悲惨な境遇を聞いて、ワルドはすっかり同情してしまった。
「わかったよ。これからよろしく」
その場で代金を支払い、奴隷紋を刻む。その少女は奴隷の証を刻まれている間も、うれしそうにずっとニコニコしていた。
「ご主人様。私を買っていただいてありがとうございました。私はローズと申します。短い間ですが、誠心誠意お仕えさせていただきます」
その言葉を聞いて、ワルドは首をかしげた。
「短い間?」
「い、いえ。言い間違えました。末長い間、可愛がってくださいまし。ご主人様」
ローズは慌てて言い直すのだった。
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