穢れた救世主は復讐する

大沢 雅紀

文字の大きさ
35 / 46

魔人類襲撃

しおりを挟む
「……私はあなたを、まじめなだけのガリ勉君だと思って興味なかったわ」
「苛められないように必死に優等生を演じていたなんだよ。正志様が苛められているのを目の当たりにしてな。いつ俺に矛先が向くか、心のそこでは毎日ビクビクしていた。俺はお前みたいに金持ちでもないし、権力も持ってない。容姿だって並程度だ。勉強というアドバンテージがなかったら、すぐに弱者扱いされて周囲から攻撃されるに決まっている。実際、小学中学と苛められていたしな」
明はほろ苦い笑みを浮かべていた。
「そう……あなた達は、私なんか及びもつかないほど厳しい世界を生きていたのね。私はお父様に甘えて……思い上がって……あなた方を庶民と見下して……」
いまさらのように京子は昔の自分を後悔する。
「お前が感じていることは、すぐに世間の皆も共有することになる。今から正志様の意思を継いだ俺たち『魔人類』が世界に対して反逆するんだ」
明は恍惚とした顔で、部屋のテレビをつける。
そこには緊急事件の放送が行われていた。
「明星高等学校に立てこもり事件発生!」
「暁学院にも全身黒尽くめの男が入り込み、生徒たちを人質にとっています」
「そのほか、20の中学・高校で事件が発生しています」
画面が切り替わり、それぞれの事件現場の中継が映る。井上学園で起こった正志によるテロ事件が、何倍にも規模を拡大されて行われようとしていた。
「これは……」
「さて、これから面白くなるぜ。『魔人類(デモンズ)』たちの初陣だ!」
テレビの前で明は心から笑った。
 
都内のある高校
 「ふははは、俺たちは魔王である吾平正志様の意思を受け継ぎ、お前たちに救いを与えてやる。大破滅により絶滅する人類達よ。心して我等が救いを受け取るがいい。我が名は魔人類の1人、ベルゼブブ田中」
校庭に出て、報道陣にアピールしていた男が叫ぶ。
その姿は蠅を模した黒い鎧に覆われていた。
 「……あれがあなたたちのお仲間?ちょっとお下品というか……」
テレビを見ていた京子にこき下ろされる。
「……やっぱりそう思うか?しかし、襲撃班のあいつら楽しそうだなぁ」
明は笑いながらまでテレビに向かって突っ込む。
「襲撃班ですか?」
「ああ。ああやって悪乗りして暴れて、世間にアピールする役目のやつらさ。俺もあっちにすればよかったかな?」
明はちょっと羨ましそうに、テレビの中の仲間たちを見ていた。

テレビの中ではベルゼブブ田中が高笑いをしていた。
「バカな真似はやめなさい!椎名弓さんがこちらに向かっているぞ!」
ベルゼブブが設定したフィールドの外から呼びかける警察だったが、彼は恐れ入らない。
「そうか、なら一気にしないとな。『ソウルウイルス、強制インストール』」
ベルゼブブの体から黒い霧が沸き起こり、学校を包んでいった。
 「あれは何ですか?」
「俺たちが与える『救済』さ。みてみろよ」
明の言葉にテレビに釘付けになる京子。
黒い霧に覆われた生徒たちが苦しそうに倒れる。
そうしてしばらくすると、何人かの生徒たちがゆっくりと起き上がった。
 「キャァァァァァァァ!!!!」
「こ、こないで!あっちにいって!」
それを見て、女生徒たちが逃げ惑う。
いじめをしていたり、人に暴力を振るっていたりしていた生徒たちは、化け物になっていた。
ある者は髪が蛇のようになり、うごめき威嚇する。
目が一つになり、髪の毛が抜けた一つ目小僧。
全身に鱗が生えた半漁人のような姿をした者もいた。
 「タ、タスケテ……」
「いや!あっちに行け!」
生徒に助けを求めてすがり付こうとするが、蹴り倒される。
生徒たちは、慌てて学校の中にたてこもった。

「こ、これは…最悪のテロリスト、吾平正志の行ったテロの再現です。しかも、今度は同時多発テロが行われています」
キャスターは画面の中で絶叫する。彼の目の前で起こった悲劇が、都内20箇所で同時に行なわれている。
日本中が再び起こった悪魔によるテロリズムに震撼した。
 「よっしゃ!上手く行ったな。あとは弓たちに任せればいいぞ!」
テレビの前で悦にはいる明。

それに対して、動けない京子は涙を流していた。
「……私たちに対する復讐だけでは足りないんですか?あんなに多くの人が苦しんでいて……」
「まあ落ち着け。まだショーは始まったばかりだから」
明は京子を相手にせず、再びテレビに視線を向ける。その時、豪華な車が学園に入ってきた。
 「あ!ただ今、椎名弓さんが現場に到着しました!」
信者から献上されたリムジンに乗って現場にやって来る弓。
車から降りると、全国の視聴者が見守る中、静かにステッキを掲げた。
「女神イザナミよ!私に力を!」
祓串から清らかな光が発せられ、弓の姿が見えなくなる。
光が薄れると、そこに純白の巫女服を纏った聖巫女の姿があった。
 「弓様!」
「私たちの救世主!」
「悪魔達をやっつけちゃってください!」
校舎に逃げ込んだ生徒が歓声をあげて叫ぶ。
弓は美しい微笑を浮かべると、悪魔を退治するために学校に入っていった。

 「よし、来たか……。お前ら、行け!」
ベルベブブ田中は怪物と化した生徒にテレパシーで命令する。
彼らは泣きながら校庭の弓に向かっていった。
 「タスケテ……」
「こんな姿はいやです……治してください」
よたよたと弓に向かって歩く生徒達。
「ウガァァァァ……コロス……」
中には理性を失い、互いに戦いを始めている生徒達もいた。
「かわいそうに……。あの悪魔のせいでこんな目に……。祓いたまえ!清めたまえ!」
弓のステッキから光が発せられる。
その光が怪物たちに当たると、すべての者が地面に倒れる。
彼らの姿は徐々に元の人間に戻っていった。
 「よし。全部上手く行っているな」
それを見て、教室の中にいるベルゼブブ田中はニヤリと笑う。
そこには、20名ほどの男子生徒たちがいた。
いずれもこの学校の生徒たちに虐められていた陰キャたちである。
「あ、あの、俺たちどうすれば……ソウルウイルスに完全適応したのはいいけど、あいつらに攻撃されるんじゃ?」
その中の一人が聞いてくる。
 「なに、どこかで倒れたフリをしていろ。今から俺はあいつに派手にやられてくる。そうしたら救助がくるから、とりあえず保護されろ」
ベルゼブブ田中は、今から弓に対して特攻をしかけると告げる。
「その後は?」
「全員いっぺんに姿を消したら不味いから、頃合をみて一人ずつ姿を消して、山奥に潜んで肉体を魔人類に改造しろ。それぞれ苛めとか悩みを苦にして家出したみたいに、ちゃんと書置きを残しておけよ」
「わかりました」
頷く生徒達。それぞれバラバラに散っていく。
「よし。これで俺のノルマは達成したな。では、やられにいくか」
ベルゼブブ田中は、スキップしながら弓の元へと向かった。
 
「おのれ!椎名弓め!我が王である正志様を殺したにも飽き足らず、我々の邪魔をしおって!」
大げさに声を張り上げながら、弓の前に出てくるベルゼブブ田中。
「ふん! 正義は絶対に勝つのよ。あんたも私が倒してやるわ」
勝ち誇った笑みを浮かべる弓に、ベルゼブブ田中は絶望的な顔になる。
「グググ……こうなったら、お前を殺してやるわ!」
黒い鎧から羽のような物がでて、空中から弓に襲い掛かった。
「馬鹿ね! 『禊の煌き』」
弓のステッキから出る広範囲の光が黒い鎧を砕く。
その光を浴びて、ミジメに地面に墜落するベルゼブブだった。
「ば、馬鹿な……『魔鎧(マグス)』が破壊されるなんて!」
 地面をはって逃げ出そうとする田中。鎧の下は、まるで雑魚キャラのような全身黒タイツだった。
「ふうん。中身はそんなのだったんだ」
残酷な笑みを浮かべて近づく弓。
「く……。殺すなら殺すがいい。だが、俺たちは諦めない。どんな事があろうが、救済を続けてみせる。イィィー」
ベルゼブブ田中は立ち上がり、腕を斜め上に上げて奇声を発する。
 「戯言ね。それじゃ、死になさい」
祓串からの光が少年を包む。
「ハ、ハイル正志!ぐぁぁぁぁぁ」
彼の肉体は粉々に破壊され、光の中に消滅していく。そしてその体から黒い小さな光が出ると、空へと昇っていった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

処理中です...