偽勇者扱いされて冤罪をかぶせられた俺は、ただひたすらに復讐を続ける

大沢 雅紀

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冒険都市インディーズ

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商業都市オサカは完全に経済破綻し、多くの人間が破産して自殺したり奴隷におとされた。彼らの恨みの念で、俺はさらにレベルアップした。
これなら、強い冒険者と戦えるだろう。
冒険都市インディースに到着した俺は、「幻覚(イリュージョン』でアポロンの姿に変装して冒険者ギルトに入る。
なぜか冒険者ギルドは換算として、普段なら大勢いるはずの冒険者たちもほとんどいなかった。
「冒険者登録を頼む」
「はい。でも、ちょっと今は仕事を見つけるのは難しいかもしれませんね。あ、私は受付嬢のミナといいます」
美人の受付嬢からはそういわれてしまった。
「なぜだ?」
「勇者光司様のおかげで、魔王が倒されたのはいいんですけど、同時に奴が生み出したモンスターまでいなくなってしまいました。モンスターの素材販売や商人の護衛任務を仕事していた冒険者ギルドも、すっかり暇になってまして……」
ミナは仕事が張り出している掲示板を指し示す。そこにはポツポツとしか依頼がなかった。
「仕方ないので、ほとんどの冒険者たちは国の要請でエルフ王国討伐に参加していて、この冒険都市にいないんですよ」
ミナはそういって、肩を落とした。
「でも、ダンジョン攻略とかあるだろう」
「確かに、あの偽勇者ライトがいたころは、『照明』を使ったダンジョン攻略とかでそれなりに仕事があったんですけどね……今は照明師がいないので、ダンジョン攻略が中断されています」
ミナは残念そうにつぶやく。
「それなら俺は火魔法が使えるから、照明として役にたつぞ」
俺は指先からオレンジ色の灯を出してアピールするが、受付嬢は再び首を振った。
「残念ですが、すでにほとんどのダンジョンはベテラン冒険者たちによって攻略されてしまいました。新しいダンジョンでも見つかれば話は別ですが……」
困ったな。俺が手を出すまでもなくにすでに冒険者ギルドは落ち目になっているぞ。これからどうやって復讐すべきだろうか。
「……わかった。新しいダンジョンが見つかったら連絡してくれ」
俺は冒険者登録だけをして、冒険者ギルドを出た。
(ダンジョンとはこの世の瘴気が集まってできたものだ。魔王である俺なら、作ることができるかもしれない)
そう思った俺は、インディーズから少し離れた何の変哲もない岩山に来る。
「愚かな人間どもを餌とする、ダンジョンよ。いまここに現れよ」
魔王の闇の力を大地に染み込ませると、ゴゴゴ……という大音量とともに深い穴が開いた。
「これでいい。あとは餌だな」
俺は勇者の道具袋の中にあったアイテムや金貨などを宝箱にいれて、ダンジョン内に配置するのだった。

私の名前はレガシオン。冒険者ギルドのマスターだ。
何十年も冒険者として実績を積んだ結果、マスターに選ばれたことを誇りに思っている。
そんな私には、ある悩みがあった。
勇者一行が魔王がいるラストダンジョン『地獄の道』に入ったとき、庶民たちは希望にあふれていた。
「これで勇者光司様が魔王を倒してくれたら、モンスターがいなくなる」
「安心して暮らせる時代が来るんだ」
彼らの期待は最もだったが、私たち冒険者は不安にかられていた。
「もし魔王が倒されてモンスターがいなくなったら、俺たち失業するんじゃねえか?」
そう、冒険者の仕事は村々をモンスターから守ったり、商人たちを護衛したりの荒事だ。
勇者によって魔王が倒されてしまったら、我々の存在意義に関わる。
そう思っていた私たちは、ひそかに勇者たちの敗北を願っていたが、結果は魔王が倒されてモンスターがいなくなってしまった。
「これからどうしたらいいんだ……」
ひそかに悩む私だったが、勇者を出迎えるために王都に招かれたとき、思わぬ人物の訪問を受けた。
「これはこれは聖女様。よくぞいらっしゃいました」
私の元に清らかな笑みを浮かべてきたのは、勇者パーティの一人で聖女の異名を持つマリア様である。
彼女はコルタール公爵の長女で、冒険者ギルドとも深いつながりをもっていた。
「お久しぶりですわ。レガシオン様。冒険者の方々で困っていることはありませんか」
「いえ、おかげ様でモンスターがいなくなりましたのて、新たに怪我をする者もおりません」
「そうですか。残念ですわ。私の闇魔法がお役にたてなくて」
マリア様はふふっと笑う。美しく清らかな少女ながらどこか女を感じさせる色気を感じて、私は背中がゾクゾクした」
「でも、何かあれば遠慮なくおっしゃってくださいね」
「はい。あなたの闇魔法には感謝しております。おかげで大勢の冒険者たちが激痛に苦しむことなく天に旅立つことができましたので」
私はマリア様に感謝をささげる。彼女の闇魔法は、人の病気や怪我に苦しむ「苦痛」を取り除いてくれる。
そのおかげで、モンスターに傷つけられた大勢の冒険者たちが負った怪我を治すことができた。それに障害が残って生きていけなくなった冒険者も、安らかに死なせることができた。
まさに「死の聖女」とよばれる存在なのだった。
そして私たち冒険者ギルドは、傘下の冒険者を使ってダンジョンから集めたアイテムを勇者パーティに提供する。我々は持ちつ持たれつの関係だった。
「今日は、ギルドマスター様にお願いがありました」
マリア様が近づいて、優しく私の頬に手を触れる。
「お、お願いとは?」
「ふふ。その前に、二人だけでお話できるところに参りましょう」
私はマリア様に手をひかれ、いかがわしい歓楽街に導かれる。
数時間後、私とマリア様は同じベッドの上にいた。
「聖女様とこのような関係になるとは……なんと恐れ多い」
私はベッドの上で懊悩するが、同時に味わった天上の快楽が忘れられない。
そんな私に、彼女はやさしく語りかけてきた。
「ギルドマスター様に、お願いしたいことがあるのです」
「なんなりと。もはや私はあなた様の僕です」
こうして、私はマリア様にすべてを捧げると誓ったのだった。
「ある男を貶めてください。うまくいけば、国王陛下と勇者様のさらなる信用を得ることがでしょう」
マリア様に提案されたのは、以前冒険者ギルドで預かったこともがあるライトという照明師は、勇者の血を引くと騙った偽勇者だと証言をするということだった。
「いや、それは……」
たしかにライトは冒険者としては戦う力をもたず、役立たずだった。だが、それでも私の部下である。冤罪をかぶせて陥れるなど、私の良心が許さな……
「レガシオン様……」
マリア様の赤い唇が、私の首筋を這う。薄暗しい照明に、マリア様の清楚な白い肌と、黒い下着のコントラストに、私の脳髄は興奮のあまり焼き切れそうになった。
「協力していただければ、冒険者たちにも新しい仕事が与えられますわ」
マリア様は私の耳元で甘くささやく。ライトさえ排除すれば、冒険者はこれからの王国の海外侵略に傭兵として従軍できるらしい。
そうだ。これは冒険者のためなんだ。ライト一人を犠牲にすることで、俺たちは新しい時代に適応できるんだ。
「わかりました。協力します」
こうして、私はライトの冤罪に協力することになるのだった。
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