偽勇者扱いされて冤罪をかぶせられた俺は、ただひたすらに復讐を続ける

大沢 雅紀

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レイバンとの戦闘

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「ミナ、ここまで来たら大丈夫だ。ここならエルフたちもおってこれないだろう」
レイバンは、そういって慰めてくれる。私たちはインディーズから少し離れた所にある、断崖絶壁に囲まれた谷グランドキャニオンに来ていた。
レイバンに慰められて、私は少し落ち着きを取り戻す。そうなると、仲間の冒険者や街の人たちのことが気になった。
「わ。私はもう大丈夫。それより、街のみんなが!私はいいから、助けに戻ってあげて!」
しかし、レイバンは怯えた顔をして首を振った。
「だめだ。モンスターになったエルフの力は異常だ。その上、魔王と化したライトもいる。傷付いた俺が今インディーズに戻ったら、命はないだろう。ミナ、このままここで休んで、体力が回復したら王都に行こう」
このままにげようとするレイバンを、私は思わず冷たい目で見てしまった。
「あなた、ギルドマスターなのに仲間を見捨てるの?」
「し、仕方ないじゃないか。あいつらは普通のモンスターじゃない。剣も槍も通じないんだぞ。王都には勇者光司もいるし、聖女マリアもいる。勇者パーティの力を結集したら、ライトごとき恐れる必要はないんだ。これは逃げるんじゃない。戦略的撤退というやつなんだ」
そう言い訳するレイバンは、いつもの自信に満ちた様子ではなくて、昔の弱虫だったころに戻ったようだった。
なんて勝手なんだろう。エルフたちには武器を与えず一方的な試合を強いておいて、不利になったら自分だけにげだすなんて。やっぱり彼は、心の底では臆病者で、それを隠すために弱者に対して傲慢にふるまっていたんだわ。
「あなた、ライトが言っていたことは本当なの?自分なりに勇者パーティに貢献していた彼を偽勇者扱いして、冤罪に落としたの?なぜそんなことをしたの?」
もし彼が言っていたことが本当なら、怒って復讐するのも無理はない。彼がこの都市にいた時も、冒険者たちからひどい扱いを受けていた所を何度も見ている。
それを止めなかった私にも責任はあるのかもしれない。それでも、私はレイバンに問いたださずにはいられなかった。
レイバンは、下を向きながらその訳を話す。
「し、仕方ないだろう。俺は冒険者になってよくわかった。力があるものが賞賛され、無き者は食い物にされる。だから俺は勇者光司に従い、ライトを邪険に扱ったんだ。そうしなければ、俺が……」
「下らん。それがお前の正体か」
闘技場に冷たい声が響き渡る。いつのまにか、グランドキャニオンの上空に黒いローブを纏ったハゲ頭の男が浮かんでいた。
「普段の豪放無頼の振る舞いは、自らの臆病さを隠すためのもの。自分が虐められたくないから、弱者を虐げ強者にへつらっていたんだな」
ライトは私たちを冷たく見下してくる。
レイバンが何か言う前に、私は彼の前に土下座した。
「ごめんなさい!私たちが今までしたことは謝るわ!」
地面に頭をこすりつけて、レイバンや冒険者たちの行いを謝罪する。ライトはそんな私を面白そうに見下ろしていた。
「ふん、今更謝罪して何になる」
「レイバンは本当は優しい人なの。彼が冒険者を目指したのも、幼い頃、モンスターに襲われた私を守れなかったから……」
私は服を脱いで背中を見せる。そこには大きな傷跡がついていた。
「彼が力に傾倒するようになったのも、元はといえば私のせい。もう二度と彼に弱者を虐げさせたりしない。私がずっとそばにいて、道を踏み外しそうになったら叱ってあげる。だから……」
「見逃せとでもいいたいのか。下らん。邪魔だ!」
ライトの手から稲妻が発生し、私を打つ。
「きゃああああ!」
すさまじい痛みが私をおそい、立っていられなくなって地面に倒れこんだ。
「ミナ!」
慌ててレイバンが私を抱え起こそうとする。ああ、やっぱり彼は本当は優しい人だ。私が代わりに罰を受けてもいいから、なんとかもう一度更生するチャンスを……
「レイバン。ライトに謝って」
最後にそう告げると、私の意識は闇に落ちていった。

俺は倒れたミナを 抱きかかえて様子をみる。幸いなことにまだ息はあるようで、ほっとした。
「くくく。なにを安心しているんだ。その女を殺さなかったのはわざとだ。もし殺してしまえば、臆病者のお前は逃げてしまうかもしれないだろう?」
頭上からライトのあざけりの声が降ってくる。俺はミナを後ろにかばい、奴に向けて槍を構えた。
「見逃してくれ……といっても、無駄なんだろうな」
「当然だ。お前もそこの女も、苦しめながら殺してやる」
ライトは以前とは全く違った冷たい目を向けてくるが、俺は負けるわけにはいかない。
そうだ。俺には守るべき人がいる。ミナがいる限り、俺はどこまでも戦えるんだ!
俺はミナを背にかばって、魔王と化したライトと対峙した。
「『風舞(フライ』」
俺は風魔法を纏って、宙に浮く。そして槍に風をのせて、超スピードで突き出した。
「おっと、危ない」
ライトは間一髪槍を交わしたが、俺の槍に恐怖したのか後ろに下がって距離をとった。
馬鹿め。俺は風魔法の使い手だ。空中戦なら負けはしない
「まだまだ!『風刃(ウインドカッター)』」
俺は槍から風魔法を放ち、無数の空気の刃を放つ。
「くっ!」
奴はかわしきれなくなったのか、両手から出ているオレンジ色の剣を振って刃を叩き落した。
いけるぞ。風は無限だ!このまま手数で押しきれば。きっと奴の首を刈ることができる。
そう思って全力をこめて槍をふるうと、いきなり奴の姿が消えた?
「どこにいった!」
次の瞬間、背後か稲妻が走り、俺の背中を打った。
「ぐぉぉぉぉ!」
痛みをこらえながら振り向くと、体中に雷を纏ったライトが飛んでいた。
「いや、すまんな。あまりに必死だったので少しチャンバラに付き合ってやったんだが、俺はいつでもお前の攻撃なんてかわせたんだよ」
「なんだと!『風速移動(ウインドトランス)』」
俺は再び全身に風を纏ってライトに突きかかる。風を纏った時の俺スピードは音速(マッハ)を超える。ライトごときにかわせるはずが無い……。
しかし、俺の槍が奴の黒いローブを捕らえたと思った瞬間、いきなりその姿が消えた。
「『雷速移動(サンダートランス)』」
ライトの体が光に包まれた瞬間、まるで瞬間移動でもしているかのように別の場所に移動する。俺はそれを捕らえることができなかった。
「ば、ばかな。俺の動きは音速だ。勇者光司にだって追い付けないんだぞ」
「ははは。馬鹿め。雷の動きは光速に等しい。所詮風ごときが光においつけるはずがないんだよ」
ライトは瞬間移動を繰り返しながら俺に雷をうつ。俺は全身を襲う激痛に、ひたすら耐えることしかできなかった。

奴のスピードに追い付けないと知った俺は、攻撃を捨て、全身に風を纏ってひたすら奴の雷から身を守る。
「しぶといな。さすがに戦士だけはある。くくく……」
ライトの嘲りが聞こえてくるが、長い間戦いの経験を積んだ俺は奴の弱点に気が付いていた。
奴は手に入れた勇者の力に酔って好き放題振るっているようだが、そんなことはいつまでも続かない。高速移動や雷などの強大な魔法をつかっていれば、いつかは息切れするはずだ。
(いい気になっていろ。お前の光魔法はすさまじい魔力を使う。戦っていればそのうち魔力が切れて使えなくなる。そうなれば、俺の勝ちだ)
どうだ。戦いの中でも冷静に戦略を練ることができる俺は、お前みたいな素人とは違うんだ。何百何千ものモンスターと戦ったおれは、その経験を戦いに生かすことができるんだ。
そう思っているが、どれだけ耐えていても奴の魔力が衰える気配がしない。
「なぜだ!、なぜ魔力が切れない」
「そりゃ、俺は一人じゃないからだよ。それに、俺にはこんな力もある」
ライトは余裕たっぷりに手のひらをかざすと、そこから今までとはまったく違った魔法が放たれた。
「土重力(グラビティ)」
「ぐっ!」
いきなり体に高重力がかかり、俺は地面にたたきつけられる。
な、なんだこの力。ライトの魔法属性は光だったはずだ。なぜこんな力が……まさか?
「そ、その力、もしかしてデンガーナの?」
「ふふふ。察しがいいな。そうだ。奴の魂はすでに俺が吸収した」
奴は見せつけるように手のひらをむけてくる。その表面に、苦しみにゆがんだデンガーナの顔がうかんだ。
「レイバンはん……助けて。苦しいんや…ぎゃっ」
彼女は必死に俺に助けを求めている。奴が手を握り詰めると、デンガーナの顔が握りつぶされた。
「やつだけじゃないぞ。俺の体の中には今まで死んでいった何万人もの魂がいる。そのおかげで、魔力が尽きることはない」
奴の体の表面に、いくつもの顔が浮かぶ。それらは皆苦しそうに顔をゆがませていた。
「奴らの魂は俺が滅びるときまで救われることはない。お前も殺して吸収してやるよ」
そういって笑うライトに、俺は心底恐怖を感じる。こいつは……勇者の力が覚醒した上に、魔王の力まで手に入れたのか。そしてデンガーナをはじめとする多くの人間の力まで自分のものにしている。
いけない。こいつは先代魔王などよりはるかに危険な存在だ。放っておけば、全人類を滅ぼすだろう。今ここで倒さなければ。
歯を食いしばって立ち上がろうとするが、高重力に押さえつけられて身動きすらできなかった。
「さあ、復讐の時だ」
邪悪な笑みを浮かべてライトが近づいてくる。俺はどうすることもできず、ただ絶望を感じていた。

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